人を好きになったら自己肯定感が失われた話 13
◾️12月 イベント尽くしのはずだった
12月後半、世紀のリア充イベントであるクリスマス。
の、直前、私達はまたしょうもないことで喧嘩をしていた。
私は毎年クリスマスイブやクリスマスにバイトをしているのが嫌で、
例え何も予定が入っていなくても両日休みにしていた。
初めは「もしかしたら彼と一緒に過ごせるかも」みたいな気持ちもあったけど、
その時の彼は後輩の女の子とも遊びに行き始めて、
その癖平気でなんともないように振る舞っていて大分クズっぷりを発揮していた。
初恋の女の子はどうしたんだよ、オイ。
お互いしょうもないことでキレては、
やれ許すとか許さないとか言って向こうにブロックされて、
しばらくすると連絡が来て、
それに必死で答えて、
捨てられるのが怖いからってうざいこと全部押し込めて100%好きな振りをして、というのがそろそろ疲れてくる頃だった。
その頃の私はその疲れを癒すべく、
別の男子と関わるようになっていった。
それが合宿隊の隊長である。
隊長は彼と比べてめちゃくちゃ大らかで、
冗談の通じる人だった。
同じ校舎だったから空きコマに呼んで他愛もない話をしたり、
夏合宿の時にお世話になった彼の家に遊びに行ったりもしていた。
隊長の家はすごく居心地が良かったし、
「旅館の女将なの??」ってくらい人をもてなすのが上手かった。
どんどん親しくなっていくうちに、私はこの人を好きになった方が良いんじゃないかと思うようになっていったし、
機嫌を伺いまくってなお怒られる彼との関係を疑問に思うことが増えた。
クリスマスの当日、彼から「今日空いた、今から来る?」とLINEが来たけど、
「ごめん、今からは無理」と返した。
初めて彼からの誘いを断ったかもしれない。
それだけ疲れていたし、
どうせなじられて奉仕させられるだけに違いないのだ。
それなら予定などなくても家にいた方がマシだった。
ずっとそうして疎遠なまま日が経っていって、
また私は彼がいない日々を寂しく感じるようになっていった。
そしてそう思った時にいつも彼から連絡が来るのだ。
連絡が来た日は年末、サークルの人達と宅飲みをしている日だった。
私は即座に家を飛び出して彼の電話に出て、
しばらくずっと話をしていた。
「そろそろ話したくなった」というデレに始まり、
「お前がいないとやっぱり寂しい」と畳み掛けられて、
私はやっぱり彼に囚われていった。
彼がゼミで悩んでいるみたいな世間話もして、
半泣きの顔のまま部屋に戻ったら宅飲みをしていた人達に「どしたの?」「また○○?」と言われてすっかりお見通しだった。
私は「なんでもないです」と無意味なガードを張った。
仲直りをしてから年末年始の話をするようになって、
年末は予定が合わないけど、代わりに年始会おうという話になった。
が、大晦日にとあることが判明した。
後輩の女の子とは年末の予定が調整できたら遊んで、
なおかつ年始も予定が合うから遊ぶというのだ。
当時の私は、私と彼女を同じ立場、もしくは歴が長い分、
また彼も彼女とはノリが合わない、好きじゃない、と話をしていたから、
彼女に誘われてどうしても仕方ない時だけ遊びに行くと思っていたし、
その頻度は私と同じかそれ以下じゃないとおかしいと思っていた。
それなのにどちらも、と。
年末も遊んで年始も遊んで、という2段構えなのも腹が立ったし、
年始は私と遊んでくれると決めたわけじゃなくて、あくまでどっちも好きなだけ手を出そうとしている様が本当に意味が分からなかった。
結局本当に自分のことが好きな人だったら誰でも良いんだ。
付き合うつもりもない癖に、好き勝手振り回すのが彼のやり方なのだ。
女の子達に競わせて、どれだけ自分が優れているか、価値があるか実感したいだけのクズ男だ。
この件で私は完全に冷めて、ブチ切れて「今年もありがとう」も「あけましておめでとう」も言うことなく全く話さなくなった。
今までは彼に捨てられては拾われる、というのを繰り返されてその度に自分の居場所を必死に守ってきたけど、
初めて私は私の居場所を自ら捨てたのだ。
一生幸せにならない呪いと、
永遠に認められない苦しさから解放された瞬間だった。
◾️1月 何もない日々
今までどんなに長くても1〜2週間程度しか連絡を取らない期間が生まれなかった私達は、
結果として過去最高記録の連絡取らない期間を樹立した。
その代わりに私はある程度穏やかな日々を送っていた。
隊長の家には相変わらず行っていて、
年始は実家に帰るからと会わなかったものの、
その後はかなりの頻度で会っていた。
年始には今までお世話になっているから、と私の好きなものや一人暮らしの人が使いやすそうな食料をまとめてお歳暮として渡したりもした。
彼の家は大学に近くて、
私はその頃大学の近くの歯医者さんに通っていたので、
行き帰りにちらちらと寄りやすかったのだ。
彼の家でTVを見ながら雑談をして、
彼が適当に作った料理を食べて、
なんてことない日が私にとっては何よりも落ち着く時間だった。
冗談で小馬鹿にされることはあっても、本気で馬鹿にされることもない。
よく分からないポイントでキレたりしないし、
私の冗談にも笑って乗ってくれる。
優しくて、いつも嫌な顔せず迎えてくれる。
煙草を吸っているのも見たことがなかった。
少しずつ曖昧なスキンシップをするようになっていって、私の中では隊長の存在が少しずつ大きくなっていった。
私は彼以外の人間と関わることで、彼の思考が改めて異常なことを知った。
隊長と話していて無意識に「しまった、怒られるかもしれない」と思ったことはことごとく怒られなかった。
自分の思考がいかに彼に染まっているかを思い知らされた。
彼と連絡は取っていなかったけど、
私は彼の裏垢を盗み見ては、ある程度の状態を把握しようとしていた。
彼はもちろん盗み見られていることなど気付いていなかったし、
私は彼に呆れたとは言え、彼がどうしてるかが気になって仕方なかった。
彼は「関わった人とか、大事になりそうになった人も、ごたごたがあったらすぐに関わるのをやめるから人は嫌いだ」みたいに病んだり、
私のツイートを見て「それくらいか」と自分への思いに不満そうにしたり、
かと思えば1月末には「セフレできちゃうぞ」と言ったりしていて、大分めちゃくちゃだった。
セフレの話は後日後輩の女の子に確認したら彼女との内容で間違いないようだったが、
結局未遂で終わったらしい。
が、そんなの問題じゃない。
一途に女の子を待ってる話はどうなった?
私とキスした日から何も変わってない。
結局その場の欲には抗えないゴミクズ野郎だった。
私は見るたび呆れて、イラついて、それでも見るのをやめられなかった。
全員不幸になれば良いのに、そう思っていた。
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