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【読感】夢を叶えて都築さん


常日頃から、他人の家の中を見たいと思っています。

ご招待されて案内してもらうというよりは、たまたま通りがかりに網戸越しのリビングが見たいという感じです。あとは、干してある洗濯物が見たいとか。

そんな、ちょっと歪んだ願望を持つ方におすすめなのが都築響一さんの作品です。

独居老人スタイル (ちくま文庫)


そんな見方も出来るよというだけで、決してそんな変態本じゃないですよ。


独居老人と聞いてどんな姿を想像するでしょう。

私は、家族もなく趣味もなく、たまに外に出ては適当なご飯を買って、なかなか片付けも行き届かない部屋の中で背中を丸めてワイドショーを眺める様子を思い浮かべました。

きっと間違ってはいないはずです。そういう人もいるでしょう。

ですが、この本に登場する皆さんの暮らしぶりは私の想像とはかなり違いました。

寂しい・悲壮感・孤独そんな言葉は当てはまらず、やりたいことをやっていたら時間が経ってしまっていた人たちの生活を垣間見ることが出来ます。

勿論家族があった人もいました。職務を全うした人もいるし、好きで働き続けている人もいるし、傍から見れば諦められなかった夢に囚われているように見える人もいました。

都築さんの丁寧で距離が近く、誰でも心を開いてしまうインタビューで、あれもこれも話してくれるおじいちゃんおばあちゃんの話はとても面白かったです。

話を聞いた人がまあ普通じゃないというのもありますが(巻頭グラビアで早速首をくくってるおじいさんがいるし、裸で逆立ちしているおじいさんもいます)

戦争も大怪我も借金も、どんなに辛いことがあってもどっこい生きてきた人の言葉には重みがあります。

一人一人に物語がありすぎるし、こんな人が実は世の中にはごまんといると思うと頭がくらくらしてきます。


まえがきに

いったいいつごろから、歳とってのひとり暮らし=情けない晩年、と決めつけられるようになったのだろう。(中略)世にはびこる独居老人への誤解と偏見をぶち壊したくて、僕はこの取材を始めた。

とありますが、本当にありがとう、おかげで年をとるのが楽しみになりましたとお礼を言いたいぐらい、私にとってこの本は希望そのものになりました。

このインタビュー自体は10年以上前に発表されたもので、2019年に書き足された『文庫本あとがき』の時点でも残念ながらお亡くなりになっていた方もいらっしゃいましたが、ふとした瞬間に、ああ、あの方今頃どうしているかしらと思ってしまうぐらい没頭できる本でした。


ただ他人の部屋が見たいという方にはこちらもおすすめ

TOKYO STYLE (ちくま文庫) 都築 響一 


出来ればかわいい女の子の部屋がいいですという方にはこちら

堕落部屋 川本史織


#エッセイ  #読書 #読書感想文 #ママ読書  


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