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97円の本

年末のこと。
よく利用するスーパーで福引大会があった。
運良く500円のお買物券を2枚引き当てた私は、この券の使い道に悩んでいた。
100円ショップで非常食を買うのも良い。
服屋で3枚1000円の靴下にするのも良い。
薬局で美容液を買う足しにするのも良いし、手芸屋で子どもの名札を買うのも良いし…。
色々悩んで、いや、ちゃんと悩みましたよ~と自分に言い聞かせて、結局本屋に足が向いた。

このスーパーが出来てもうすぐ30年。
悲しいかなその全ての歴史を知ってしまっている。
昔はここに行けば何でも揃ったけれど、おもちゃ売り場もCD屋も、メガネ屋も靴屋も写真屋もいつの間にかなくなってしまった。
近年はその穴を埋めるように名ばかりのキッズコーナー(柔らかいマットを長椅子が囲んでいる空間)と休憩所が設けられた。
そんな中で唯一生き残ったのは本屋と婦人服のお店だけ。

スカスカの本棚で雑誌がへにゃりと曲がっていると言えば、それだけでどんな本屋かわかるかもしれない。
高齢化と少子化とネット通販時代の荒波を折り紙の小舟で進んでいるような場所だが、幼い頃から通い慣れた場所にはそれなりの愛情を持って出向いている。

500円券が2枚で1000円、併用可、おつりなし。
文庫を2冊買うか、単行本を買うか。
もっとたくさん買って1000円引き券にすることもできる。
しかしここは無難に文庫本2冊だ。
なんか、やっぱり、貧乏性だから。

駅の向こうの大きな本屋にはなかった本があった。
福引で当てたという正当な理由があっても、お買い物券を使う時はすごく縮こまってしまう。
すみません、あの、これって使っても…あ、2枚でも大丈夫ですか?あ、はい、すみません…。
そうしてやっとこ買った益田ミリ2冊、1097円。
良い本だといいな。

益田ミリなら大丈夫


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