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 トイレの渦

 履き潰したスニーカーにこびりついた虫や花の名前を白紙に幾つ並べられるだろうか。私は白くつるりとした便座に座りながら考えてみた。蟻、飛蝗、サルビア、ツツジ、その先は何一つとして思い浮かばなかった。花と虫、その言葉だけだった。
 トイレットペーパーを右手で絡めとるように巻き取っては腰をねじりながら汚れを拭き取って渦巻きの音を聞きながら立ち上がる。今日も一日が始まって終わろうとしている。それから明日が始まろうともしている。

 これは日記だから、それ以上でもない。これからがどうとか、私には友達がいないとか、将来が見えないどころか本当にそういったものが存在しないのでは、と錯覚してしまう毎日に辟易としているだとか、そんな考えていることを書く。
バイトが休みの日は都会にある映画館に行き、レコード屋を巡りブックオフに行く。それが週に最低一回ある。私のとなりにはいつも空白があって、変わりにいつも音楽や小説や映画がある。
 先日中高時代から聴いていたkid fresinoさんのライブに行った。彼がステージ上に現れた瞬間、この世の者とは思えない気持ちとこれまでの自分の道程を思い出した自然と涙が溢れた。久し振りに涙を流した。憧れの人の存在を認知できたこと、やはり人は人に生かされていることを直に感じた。
 とはいえ、この友達がいないことがあまりにも悲しい。人生最大の失敗は友達を自らの手で連絡を切ったことである。高校を卒業して頭がおかしくなってしまった。どうして全ての連絡を絶ってしまったのだろうか。私は馬鹿だ。今じゃもう誰も私を憶えていないだろう。私は明日バイトが休みだから、また映画を観に行くだろう。
この生活の末、一人で死ぬ

渦が巻く。回転して吸い込まれていく紙の束。私はいったいなにがしたいのか。本当にこの生活か続くのだろうか。しかしこの生活に身体が慣れてしまっているところもある。私は案外気に入っているのかもしれない。トイレの電気を消して、階段を登る。

毎日マックポテト食べたいです