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卵焼き

岩チョコみたいな台所の角で卵を一つ割る。卵はだいたい二回か三回で小さなひびが入る。でも時々、一回でひびが入ることがある。そんな時、私はいつも気付かずにもう一度同じ場所に同じ角度で同じ強さで打ち付ける。木目調の床に満月よりも鮮やか卵黄がアメーバ上になって飛び散る。殻の破片が卵白と卵黄に混ざって、
少しだけ私の足の上に乗っかる。

私はいつも朝御飯を作る。
ほんとうは作りたくない。どうして目覚まし時計を押してから、その次のアクションが冷蔵庫の食材をチェックすることなのだろうか。それから卵焼きを作る。ボウルに2つ卵黄を菜箸でかき混ぜで致死量レベルの砂糖をいれる。私の好みとは逆だなと思う。換気扇を押す。
フライパンを取り出して油を引く。IHクッキングヒーターの電源を入れて熱が全体に伝わるまで、リビングに行きテレビのスイッチをつける。

あ、今日はバイトだ。

 フライパンから立ち上る熱気を手の平で感じる。ボウルを手にとって菜箸からフライパンへとかき混ぜた卵を這わせるようにして注ぎ入れる。学生の頃、確か理科の実験でこの動作したよなと思う。そういえば理科得意だったな、もう何年前なのだろうか。両手が塞がっていて、いつもわからない。でも過去の自分を思い出すと、その地点から波及して様々な嫌なこと思い出すから、わからない方がいいのかもしれない。こういった思い出し方をする過去のことは大抵下らないから。

 ぷくぷくと表面が膨らんで消える。
菜箸で逐一確認してきつね色になった頃、奥の方へと丸めていく。そしてまた黄色い液体をそそぎ込む。また同じようにして丸める。丸まった卵をコロコロ転がしながら焼き目がついたら、台所のスイッチを消して、換気扇を強にする。







毎日マックポテト食べたいです