逆さ檸檬の夢幻回転

青いれもんは、

青空を吸い込みました。

空から降る雨も吸い込みました。

満天の星空も吸い込みました。

闇夜に現れる月光も吸い込みました。

流れる雲も吸い込みました。

爽やかな風も吸い込みました。

透き通る歌声も吸い込みました。

すすり泣く哀しみも吸い込みました。

冷酷な決断も吸い込みました。

淡々と過ぎ去る時間も吸い込みました。

青いれもんは、そろそろ逆さまの青い檸檬を卒業しようかなと思いました。

赤いれもんは、

日の出を吸い込みました。

夕焼け空も吸い込みました。

灼熱のゆらめきも吸い込みました。

夜空に流れていく火球も吸い込みました。

燃え上がる歌声も吸い込みました。

挑み続ける情熱も吸い込みました。

切なく焦がれる囁きも吸い込みました。

移ろい変わる景色も吸い込みました。

無我夢中の時のない時も吸い込みました。

赤いれもんは、そろそろ逆さまの赤い檸檬になって青い檸檬に逢いたいなと思いました。

逆さまの赤い檸檬は、静かに半回転しました。

すると青い檸檬になりました。

逢いたかったよ。赤い檸檬は言いました。

ぼくも逢いたかった。青い檸檬も言いました。

くるくるくるくる回転しながら、赤い檸檬と青い檸檬は、いつしか廻り続けていました。

とまることをやめた檸檬は、

紫色の檸檬になりました。

そして、ポキリと枝から音がして、

逆さま世界から空へと堕ちていきました。

おわり。

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