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意識が高い若者に「おすすめの本ありますか?」と聞かれて死にかけた話。


「わたらいさん、最近読んだ本の中でお勧めの本があったら教えてください。」



え?



唐突に向けられたこの質問は僕の思考をコンマ数秒停止させた。


まるでコンマ数秒の思考の停止が命取りになるかのように書いたが、日常的に10分以上ぼけーっとすることがある僕からしてみればコンマ数秒などとるに足らない数字ではある。



話を戻そう。


これを聞いてきたのは、同じフォトグラファー仲間の「Kくん」

Kくんはいかにも意識が高そうな顔をしている。

さらには筋肉もりもりでさわやかフェイスまで兼ね備えたいかにも意識が高い存在なのだ。

Kくんは言った。何気なく言ったのだ。多分悪気はない。


K君「わたらいさん」

僕「ん?」

K君「普段どんな本読まれるんですか?」



いかにも意識が高そうな彼は明らかに「自己啓発本」の類を紹介してくれと言わんばかりの顔でこちらを見てくる。

いや「本読んでますか?」じゃないだろ。
お前が聞きたいのは「自己啓発本読んでますか?」だろ。

意識高すぎるんだよ。こちとら漫画しか読んでねえよ。お前も漫画読めよ。コロコロコミックからやり直せよ。


偏見だが、姿勢がいいさわやかマッチョは大体意識が高く暇さえあれば自己啓発本と筋トレに勤しむような奴らだと思っている。

Kくんも間違いなくその一人。絶対そう。そうに違いない。完全に偏見だ。




僕は言葉が詰まった。


「あーーーあーーーうーーーん」



絵に描いたように詰まった。嘔吐しそうだ。なんてもの詰めさすんだこいつは。

しかしKくんはそんなことも知らずにキラキラした目で僕を見てくる。


K君「(わたらいさんはどんな自己啓発本読んでいるんだろう・・・!)」


そんなキラキラした目で僕を見てくるのだ。

やめろ。やめてくれ。

そんな目で僕を見ないでくれ。

さわやかマッチョがそんな目で男を見るな。そっちか。そっちなのか。

目覚めてるのか。お前、そっちの気もあるのか。

いやだ。僕はそっち側には行きたくない。

やめてくれ。やめてください。お願いします。




僕は苦し紛れに質問返しを繰り出した。


僕「逆にKくんは普段どんな本読むの?」



必殺おうむ返し。必殺技中の必殺技。カウンター系。強い。これは強いだろ。中ボスくらいの強さはある。

というかむしろ、Kくんも自己啓発本なんて読んでないのかもしれない。

僕の勝手な妄想でいかにも意識高そうだと決めつけたが、Kくんはジャンプの話がしたいのかもしれない。

あーなんかそんな気がしてきた。なんだ。何が自己啓発本だよ。読むわけないよな?K君もジャンプすきなんでしょ?ジャンプの話したいんでしょ?ハイキュー?ハイキューの話しちゃう?






K君「あ~最近読んだのは「○○○○(自己啓発本)」ですね」

※タイトル忘れた





(意識)たっっっっっっっっっっかい!!!!!



意識の高さ何メートルだよ。

案の定かよ。案の定の意識の高さかよ。やめろよ。やめてくれよ。


筋トレに勤しみ、勉学に励み、フォトグラフまで嗜みながら、それだけでは飽き足らずに自己啓発本まであさりだすとは・・・。

どれだけハングリーボーイなんだよ。

そのうち「先日ロサンゼルスで」とか言いそうだな。軽いノリでそういうこと言いそうだな。


Kくんはおうむ返しをものともせずキラキラした瞳で僕に先ほどと同じ質問を投げかけた。



K君「んで、わたらいさんのおすすめの本は!?(キラキラ)」


やめろ!やめてくれ!!!!まぶしい!まぶしすぎるんだよ。

キラキラすな!おすすめの本は?とか聞いてくるんじゃねえ!

自己啓発本なんて読むな。

toらぶる読めよ!お前に足りないのはちょっぴりえっちな学園生活だよ。





僕「あ~~う~~あ~~~うん」

K君「(ドキドキわくわく)」


僕「(うわあああああああああああああおすすめの本!おすすめの本?僕が読んでおもしらおdhふぁじょあ」

僕「寄生獣」

K君「え?」

僕「寄生獣」

K君「え?それ漫画じゃないでっ」

僕「素晴らしい本なんだあれ。人間とはなにか。何のために生まれて来たか。何のために生きているのか?」

K君「・・・」

僕「人間の本質とはなにか?それを今一度考えさせてくれる名作中の名作だね」

K君「あ~えっと、寄生獣もいいんですけど、例えば自己啓発本とかでおすすっ?」

僕「黙れ小僧!」




K君「・・・」




僕「黙れ小僧!!!!!!」







おわり。




どこからともなく突然現れる意識高いモンスターに対抗するために一冊くらい自己啓発本を読むことをお勧めする。

PS.
その後、K君から「自己啓発本を読むための本」なるものをおすすめされた。

意識の高さが次元を超えている。何それ。自己啓発本を読むための本。なんだよそれ。そんなのあるのか?
最近の自己啓発本はおしゃれな横文字多すぎて並みの人間では読むことすらままならないのかよ。
だからまずは「自己啓発本の読み方」を読んで学べと。そういうことか。

マジ卍。

以上わたらいももすけでした。


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