学校で習ったアレで、物語の出だしを改善する|創作・研究・考察
自分の頭の中にある創作技術を記録して、ちょっとずつレベルアップしていくためのメモ。自分のための備忘録ですが、気になる人は読んでって。
【書いてる人】
ゲームのシナリオライター。
このメモの内容もその立場から。
マズローの自己実現論を参考に物語の出だしを考えてみる
マズローの自己実現論。あるいは欲求段階説、欲求五段階説、とも。
多分中学校か、高校で習ったんじゃないかなと思います。
雑にまとめれば
・人間は「自己実現」(なんか自分の能力を発揮していい感じな状態)に向かって絶えず成長していく
・「自己実現」を含めて、人間が求めるものは五つの段階がある。
みたいな感じです。五段階は
・生理の欲求…人間の生命を維持する本能的な欲求。食事、睡眠、排せつなど
・安全の欲求…健康、経済などの安全。病気にかかんないとか
・社会的欲求と愛の欲求…社会とつながりたい! 愛し愛されたい! 的な欲求
・承認の欲求…社会の中でより認められたい! 尊重されたい的な
・自己実現の欲求
物語の創作においてこの「自己実現論」を参考にする……というアイディアはさほど珍しいことではありません。
人間にとって大切な欲求は(マズローの言うところによれば)この5段階なので、それをくすぐる感じで物語作ればいいんじゃない? みたいなやり方ですね。
恋愛小説では「愛の欲求」が疑似的に満たされますし、サスペンスなんかでは人の生き死に――「安全の欲求」が描かれてたりします。
いま流行のなろう系小説なんかでは、周囲の人物から認められる「承認の欲求」が割とストレートに描かれている……気がします(ちゃんと語れるほど読んでない)
で、今日の本題です。物語の出だしにおいて、「人間の欲求」をどう描けば効果的かなーというのをまとめていきます。
出だしで求められるもの――欠如
人間が持っている「欲求」をくすぐったり、疑似体験させたりする。面白い作品と言うのは、これが上手くできています。
エンターテイメント作品に限らず、たとえば芸術作品・文学作品でも人間の「欲求」を描いている(と解釈できる)ことがほとんどです。
じゃあ、人間が喜ぶこと・求めることをとにかくたくさん書けばいいんだろう、というと、まあそんなわけもありません。
出だし1ページ目から主人公がモテモテのハーレム。出だし1ページ目から、スリリングもサスペンスもない、平和な日々。
そう言った作品もなくはないんですが、基本的には欲求が満たされていない状態から物語は始まったほうがドラマチックになりやすいと言われています。
恋愛モノであれば、片思いしている状態から始まって、物語の終盤で想いが伝わったほうが盛り上がる……みたいなイメージですね。
まあ、これも脚本術の本を見ていればよく出てくる手法なんですが、主人公にはこういった「欠如」が求められます。で、その欠如をいかに埋めていくのかがドラマになるということですね。
出だしで求められるもの――期待
物語が「欠如」の状態で始まった場合、あるいは序盤で何かが「欠如」した場合(オープニングで恋人と死に別れた、とか)。
読者・視聴者は、その欠如が埋められることを「期待」します。
恋人と死に別れて落ち込んでいるのであれば、その辛い過去を乗り越えることが「期待」されます。
高校野球部で毎日がんばって練習している状態から始まるのであれば、甲子園出場などでその頑張りが報われることが「期待」されます。
人間の欲求が満たされていない状態から、満たされた状態への期待。
いい物語の出だしが書けるかは、「欠如」と「期待」が上手くコントロールできているかにかかっていると言ってもいいでしょう。
作者の見積もりの甘さ
ここまで書いてあることは(かなり端折っていたり、独特の用語を使っていたりするのでそのツッコミはあれど)、まあ特に奇抜なことは言っていないはず。
というかある程度ノウハウがまとまっている手法なので、目新しさはありません。
しかし、「欠如」と「期待の」コントロールは基本でありながら、とても難しい作業です。
改めて私が、私自身に確認しておかなければならないこと(ついでにこれを読んでいる人にも伝えておくことは)
・上手く書かなければ「欠如」はただの不快な表現になる
・「欠如」を不快な表現にしないためには、欠如からの回復を「期待」させなければならないが、読者は作者が想定しているほど期待してくれない。
作者は、次の展開を知っているのです。だから書きながら次の展開への「期待」することができる。
しかし先の内容を知らない読者・視聴者は、いつもある種の不安を抱えながら物語を見ていきます。
このさき本当に期待通りの展開になるか――あるいは、いい意味で期待を裏切る展開が待っているか。
なので、自分の書いているシナリオが、(シナリオライター以外のクリエーターであればその創作物が)人間のどのような欲求が「欠如」した状態ではじまり、そこからの回復をどのように「期待」させようとしているのか、しつこいくらいに確認しておく癖をつけるのが良いと思います。
全体のまとめ
例の如く、まとまってないけど。
・物語を作る際には、マズローの自己実現論なんかを参考にしながら、人間の欲求を描けているかどうか意識する
・人間の欲求は満たされていない状態(「欠如」)から。満たされている状態へ変化していくことが「期待」される。
・とくに出だしは、「期待」度が高くないと先を読み進めさせるパワーがよわくなっちゃうよ
まとめまで書いて思ったんだけど。マズローさんの自己実現論よりも、人間の欲求の「欠如」と回復への「期待」の方が大事。
じゃあなんでマズローさんを引用したのかと言えば……明日あたりに書きそうな内容と関わってくるからです。
本当に明日書くかわからないけど「人間の欲求さえ描いてればいいのかよ!」という話に関して、まとめようと思っています。
それでは皆さん。よいスイカを。
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