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kintoneのUXライティング

UXライティングとは、プロダクトとユーザーの架け橋となるコピーライティングのことを指します。UI上の言葉、主には画面文言のことを指すことが多いです。今回私が書く「kintoneのUXライティング」も、製品内の文言について取り組んできたこと、教えてもらったこと、考えていることを書いてみます。

kintoneの画面文言を担当するようになったのは、kintoneのドキュメント担当になって半年ほどたってからです。2018年1月から。その前には、別製品の文言検討をほんの少し担当したことがありました。
自分自身で感じていることや、ほかのライターを見ていると、文言検討の楽しさは主に以下の理由があるかなと感じます。
製品の設計者であるプロダクトマネージャーの考えに触れる楽しさ
開発の上流から入る楽しさ
言葉そのものにフォーカスして考えられる楽しさ
自分が考えた言葉が製品にダイレクトに反映される嬉しさ

それぞれ、どんな楽しさや嬉しさがあるか、具体的に書いてみます。

製品の設計者であるプロダクトマネージャーの考えに触れる楽しさ

文言担当は文言を検討して、その機能を担当するプロダクトマネージャー(PM)に対してレビューを依頼します。
PMは複数いるので、それぞれフィードバックの仕方や考えにも違いがあり、面白いなあと思うんですよね。

文言検討をするときに、まず、PMが書いたユーザーストーリーや仕様への考慮、文言で気をつける点などを読みます。
ヘルプを書くときにもユーザーストーリーは読みますが、文言は「今まさに実装している機能について、リアルタイムで情報をインプットしている」という臨場感があるんですよね。
文言を考え、PMレビューを依頼すると、フィードバックがあります。
今はほぼすべてオンラインでのやり取りで固めていくようになりましたが、文言担当になって半年くらいは特に、主に対面でフィードバックをもらっていました。

私の場合、前任者の方が他本部へ異動されてあまり引き継ぎがなかったうえ、文言検討自体がほぼ初めてだったので、最初は検討すること自体をPMと一緒にやっていました。1日に2時間や3時間、PMと一緒に文言検討をしたこともあります。その時に教えてもらった中で忘れられない言葉があります。

「また美術館主義になってますよ」

という言葉。何度か言われて、ニュアンス的にわかったような気がしつつも一度はっきり意図を確かめたいなと思って「それどういう意味でしたっけ・・」と改めて質問しました。
「傍観する人っていう意味です。美術館で絵を眺めるみたいに腕組みしてじっと言葉を眺める人。ユーザーはそんな風に俯瞰して言葉自体を眺めないですよ」という返事でした。
言葉の統一性、正しい日本語、ということにとらわれがちだったので、もっと、その画面、その機能で、その言葉を見たユーザーがどう動くか、どうなってほしいのか。そういうことに集中したほうがいいんだな、と学びました。

その言葉を見たユーザーはどう感じると思いますか?
その言葉を見てどう動くと思いますか?
あらゆるケースに当てはめてみましたか?
この辺の問いは、今でもたびたびPMから指摘されることで、そのたびにはっとして、「正しい日本語」よりも「ユーザーの行動にフォーカスして考える」という原点を思い出します。

開発の上流から入る楽しさ

kintoneの文言担当は、エンジニアと一緒に、開発の最初の打ち合わせから参加しています。この辺の詳細は「開発チームのライターが開発の上流に入るには」という記事に書きました。

文言検討をしている段階でエンジニアから仕様の詳細を聞いたり、モブに参加して実装面の話を聞いたりすることがあります。また、エンジニアの手元の環境で文言を見せてもらい、改行の位置などの希望を伝えることもあります。

私はエンジニアのモブに参加するのが大好きで、自分がプログラミングできないがゆえに「すごい!まさに目の前で製品が作られている!」と、とても興奮します。楽しいです。
エンジニアが文言ソース内に文言をあてはめてくれて、その場で確認して調整してもらう、というのは、開発の上流に入る楽しみ、醍醐味ではないかと感じます。できたてほやほやを垣間見る面白さ。
とはいえ、まだまだそういった機会は少なめなので、もっと自らモブに突撃して、エンジニアとのやり取りを増やしたいなあと思っています。

上流から文言検討をする良さとして、文言の観点から実装を変えてもらうこともできる、という点もあります。
「このエラーが変わるなら、ここのエラーも合わせて変えたい」
「エラー出し分けてもらえますか?工数かかります?」
「ここも一緒に文言整えていいですか?」
そんなやり取りを、PMやエンジニアとはたびたびします。下流で待ち受けてると、「もう実装しちゃったので共通のエラーです。汎用的な文言にしてください」など注文に応えること中心になってしまい、融通が利かないことが多いんですよね。

「エラーメッセージを変更する」という文言に特化した要件を私が書いて、実装してもらったことがありました。文言分野のPMになったみたいですごく楽しかったですし、自分の検討によってエラーメッセージが変わったことは大きな喜びでした(本家PMに大きなフォローはしてもらいましたが)。
アップデート情報にも掲載されました。
変更前:不正なPOSTアクセスです。画面をリロードしてください。

変更後:ページの有効期限が切れています。ページを再読み込みしてください。

「不正な」というユーザーに責任があるような表現をやめて、「システムの影響でアクセスできないんだよ」というニュアンスの表現に変更しました。

開発の上流から入るようになったのは、文言担当になって少し経ってからです。それによって起こった変化として、検討する文言の幅が広がった、というのも嬉しいことでした。というのも、私が文言担当になったばかりの頃は、「この言葉はマーケティング担当のほうがよい言葉を考えられる」「ここはUXリサーチャーと言葉を検討したい」など、PMが機能を考える時点でほかの部署に文言検討を依頼してしまい、文言担当が関われない文言が意外と多くあったのです。
文言をやり始めたばかりで、私のアウトプットの質がたいしてよくないにもかかわらず「なるべく文言担当にまかせてほしい」という要望はPMに訴え続けていました。そのために努力をするから、と。私は、熱意だけはあるかもしれません。

言葉そのものにフォーカスして考えられる楽しさ

私はヘルプも担当していますが、ヘルプって考える範囲がすごく多いんですよね。
目次構成などのページ設計、キャプチャーの配置、キャプチャー採取するための環境作成、キャプチャーの採取、ヘルプのツール(Github、マークダウン)のお作法に従うことetc...
書くこと以外にも気を使わなければならず、意外と書いている時間が少なかったりします。

文言は楽ではありませんが、シンプルに言葉に集中できるのが非常に楽しいです。
設計はPMやエンジニアが考えるし、デザインと文言が両方あるとき、デザインはデザイナーが調整してくれます。文言を提出したあとは反映確認をしっかりしたら、次のタスクに安心して取り掛かれます。
たぶん、サイボウズのヘルプ担当の場合、1人が受け持つ責任範囲が多いのかな。。

ライターは書くことが好きな人が多いですし、私も「考えて、書く」ことが好きなので、ものづくりの「言葉」にフォーカスして考えられることが集中力を高められてとても嬉しいです。

文言担当になってからは、コピーライティング、広告、インターフェイスデザインの本をよく読みました。上で書いたように、プロモーション的な要素があるとマーケティングメンバーに文言依頼が流れてしまうことが多かったので、少しでも自分もその方面の知識を身に着けたい、という理由が大きかったです。

自分が考えた言葉が製品にダイレクトに反映される嬉しさ

わかりづらいエラーがわかりやすく修正されたり、新機能であればそこの説明書きが表示されたり。文言はぱっと目につきやすく、変化もわかりやすいです。スプリントレビュー(開発の成果をお披露目する会)で自分の検討した文言がお披露目されたとき、そして定期アップデートにより公開環境の画面で文言が反映されたのを見たとき、「自分も製品を作っているんだ」と実感できて、とっても嬉しいものです。

以上がkintoneのUXライティング、その考え方になります。
なお、私はプロダクトライターと名乗っているので、あえてUXライターという言葉を本記事内では書きませんでした。UXもテクニカルもコピーも含めた幅広い文章を考えられるライターとして、がんばっていきたいと思います。

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