814円のジャケット

最近寒さが厳しく、またさらに太ったので、上着を探しに出かけた。

最初、近場のショッピングモールに車で連れて行ってもらった。

びっくりしたのは、春物の服しかどの店舗も置いてなかったことである。
今は一月下旬。

寒いときに寒さを凌ぐ服が、どこにも売られていないことに、驚愕した。

さらに、すれ違う男性のほとんどが、何故かパタゴニアのブランドのジャケットを着ていた。

パタゴニアがいけない、と言っているわけではない。

高額と私には思えるブランドを、ものすごい確率で目にするそのショッピングモールに、何か違和感を感じた。

もちろん身分相応にユニクロとGUも行った。
春物一色だった。

私は疲れによる悲しみを通り越して怒りを感じ始めた。

うなだれて駐車場に戻る通路で、これまた高額なノースフェイスの白いダウンジャケットを着た幼児を見た。

私はブチ切れ始めた。

おかしい。

何故、冬なのに冬服が無い?

もちろん太った私がいけない。

しかし、何かが間違っている、という思いが頭を離れない。

私は、オフハウスに連れて行ってくれと母に頼んだ。


そこはまた驚愕であった。

まだ着られる服が、フロアのほとんどを埋め尽くしていた。それもぎゅうぎゅうに。

私は、呆然としていた。

要らない、とされたものがフロアを埋め尽くしていた。


私は言葉を失うほどの悲しみで胸がいっぱいになった。


男物で可愛くて着られる服を探したら、すぐに見つかった。

値段は1300円くらいだった。

レジで精算する時に、814円ですと言われて、「は?」と聞いた。

「今、衣料品半額なんです。」
と言われた。

私の頭はパニック寸前だった。


なんなんだこの国は。

と思った。


そのオフハウスで見つけた茶色のジャケットは非常に気に入ったので、タグをはずしてもらい、すぐに着た。

合皮で、軽く、首と袖と内側がボアなので、ユニクロのヒートテック一枚の上でも、外の冬の外気も通さなかった。

温かかった。

胸が震えていた。

間違っていない。

きっと間違っていない。

と頭の中で何度も言った。


ちなみに家に帰り、ジャケットを脱ぐと、外より家の中の方が寒かった。


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