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我慢はこうして決壊する

昨日の議会で、さらに2週間の非常事態の延長(6月7日まで)がギリギリの票数で可決しました。政府は当初1ヶ月の延長を希望していましたが、なんとか他の政党からの票数を得て可決をすべく2週間での妥協案を飲む形となりました。とはいえ、政府は相変わらず厳しい姿勢を崩さないので、右派の反対もますます強硬になっていき、さらに政府への賛成派も減っていくという、なんとも不安定な様子になっています。ただ、ここまでくると、一体いつまで非常事態が続くんだ?という気になってくるのも正直なところ。。。

さらに、今日5月21日から、公的な場所においてソーシャルディスタンスの確保が難しい場合、屋内屋外問わずマスクの着用が義務化されます。呼吸器に問題がある人や例外を除き、基本的に6歳以上の人はマスクを着用しなければなりません。外出制限緩和のフェーズが進む中で人出が多くなるからだと思われますが、マスクの着用に関してはパンデミック発生当初から今に至るまで基準となる考え方がコロコロ変わっていっているので、世間ではプチパニック状態。しかも上記の条件下でマスクの着用をしていない場合には罰金が取られるらしい。。。だったらマスクもっと安くしないとダメじゃん、とも思うし、それだけではなく、マスクの長時間の着用は健康な人でも呼吸器等の負担になると思われます。それこそ夏場の熱中症問題もあるし、もちろん感染を広げないためにマスクの着用は大事だけど、感染以外の健康への影響のことも考慮した提案のようなものもして欲しいなあ、と思ったりします。

なんだか緩和が始まったにも関わらず、その分厳しい規定が追加されるという悩ましい状態。そして、マドリードで始まったデモは各地に広がり、その様相はどんどんおかしなものになっている。。。(これまでの経緯はこちら↓)

マドリードのサラマンカ地区で始まったデモは、当初、超保守派の住民がフェーズ1への移行を認めない政府に抗議をしている体で報道されていましたが、実際は超カトリック主義の極右組織がデモの中心となって煽動しているようです。そこに右派の政党も乗っかっているような感じなのですが、極右政党のVOXは完全にデモを煽ってしまっているので、単なる政府への抗議というよりもプロパガンダの色が濃いものになっているように感じます。さらに、El Paisの記事によると、「抗議活動者の中に(首相のPedro Sánchezが送り込んだ)政府警察が私服で紛れ込んでいるから気をつけろ」的な内容の匿名による謎のマニュアルが出回っているらしい。El Paisはそのマニュアルを入手した上で報道しているようですが、実際どうだかわからないけれど、こうなってくるともう完全に異次元の問題。。。

そしてこのデモのムーブメントは、マドリードの他の地区、さらには他の州にも飛び火している状況となっており、バレンシアへももれなく飛び火しているようです(とはいえ、自宅近辺をはじめ、私の行動範囲内では今のところ特に変わったこともなく、至って平和だったりする)。

ちなみに、マドリードの別のエリアでは、極右とアンチファシズム派の衝突があった模様で、若干の暴力沙汰と至近距離での口論が勃発。どっちもどっちという様相ではあるけれど、主に若者の多いアンチファシズム派の人たちはマスクも付けず、ソーシャルディスタンスも無視状態でお行儀が悪く(極右側も強者はいたけれど)、これはさすがにまずいでしょ、と思いました。

これまでこんなに厳しいロックダウンがされてきたのによく暴動も起きず、みんな我慢していたなあ、と思っていたのですが、実はほんの少し緩んだ今こそが一番危うい状態なのかもしれません。さらに言えば、スペインの外出制限緩和は地域ごとでフェーズ移行のスピードが違うので、ここで生まれた格差が我慢の爆発の火種にもなっていると思われます。つまり、今まではみんなで一緒に同じように我慢をしてきたけれど、今の段階はフェーズ0のところもあれば、フェーズ2のところもあるわけで、ニュースを見ればその差は明らかなわけです。

そういう意味では、マドリードの置いてけぼり感は理解できなくはないし、そこに富裕層のサラマンカ地区の住民がその格差に敏感に反応したのもある意味納得ができるかも(この手の人たちは自分たちが後回しにされるのは耐えられないはず)。もしくは、そういう住民の性質に目をつけて極右組織が焚きつけたと言った方が当たっているのかも。いずれにしても、このデモのムーブメントは確実におかしな方向に向かっているし、本当に大事なことや解決すべき問題が置き去りにされているのも問題(これは政府も野党も同様)。

それにしても、こうして各地にデモが広がったことでクラスターが発生したらどうするんだろう?2週間後に感染者数がポーンと跳ね上がって逆戻り状態になったら自業自得状態というシュールな結果になってしまうよね。。。

果たして、スペインはこれからどうなってしまうのでしょう。。。

* 冒頭の写真は、昨日の街の中心エリアの様子(17時頃)。フェーズ1に入ってから確実に人通りは増えています。今までこの時間帯はほとんど人がいなかったのですが、テラス席もオープンし、今まで閉まっていたお店も少しずつ開くようになり(ただし、店内の様子は明らかに通常とはかけ離れているけれど)、少しずつ活気が戻ってきている感じです。今のところ街を歩いていてもソーシャルディスタンスは確保できるレベルなので、ある意味これぐらいがちょうどいいかも、と思ったりもしています。また、街の至る所で子供たちが遊んでいる様子もキャッチしたので、個人の体感としては至って平和だったりします。


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