見出し画像

今起こっている政治のゴタゴタについて②

昨日、内務大臣のFernando Grande MarlaskaによるGuardia Civil(治安警備隊)マドリード部隊トップのDiego Pérez de los Cobos大佐の解任をきっかけに始まった政治のゴタゴタについて記事をアップしましたが、今回は、そこに関連してクローズアップされている3月8日の国際女性デーにマドリードで行われたデモ(以下8-M)をはじめとする大規模イベントと、コロナウイルス感染拡大の関連性について書いていきたいと思います。前回までの経緯はこちら↓

そもそもの問題の始まりは、3月下旬にとある個人弁護士により、8-Mをはじめとする3月5日からの一連のイベント開催を中止しなかった責任について、マドリードの政府代表José Manuel Francoが告訴されたことにあります。そこから捜査裁判所の調査が始まり、調査依頼されたGuardia Civilの報告書の存在が明らかになります。現段階では裁判所はJosé Manuel Francoの事例のみを扱っており、そこから非常時保健責任者のFernando Simónの事例も派生したものの、政府の責任追及に関してはまだ始まっていません(ただ、既に数十件の告訴はされているらしい)。ちなみに、8-Mとコロナウイルス感染拡大の関連に関しては、「(行うべきではなかったが)感染拡大の要因としては限定的なものである」ということで棄却され、Fernando Simónの責任問題に関しても証拠が十分でないことから却下されたようです。

個人的な印象として、Guardia Civilの報告書はこの個人弁護士の告訴の内容をなぞっているだけのような感じがしており、ちょいちょい誤解を招くような間違いもあったりします。また、メディアへの情報漏洩とGuardia Civilの報告書の内容や提出のタイミングにも、なんだか意図的なものが働いているような印象があるのも否めない。さらに、この個人弁護士、実は過去に顧客への詐欺行為などで刑事罰も受けているという話もあり、単なる正義感で動いているのか個人的には疑問を感じています。ちなみに彼にとっての本丸は首相のPedro Sánchezをはじめとする政府にあり、そこへの責任追及にあるとも言われています(政治的意図に関してはあるのかどうかよくわからない)。

また、情報漏洩に関しては続きがあります。Ministra de Igualdad(平等大臣)のIrene Monteroが8-Mの翌日にEiTB(バスクの放送局)の “Jake”という番組内で8-Mに関するインタビューに答える模様が放送されたのですが、このインタビュー前のオフレコ映像が6月1日にABC(右派寄りの新聞社)のニュースサイトですっぱ抜かれます。そこでの映像でインタビュアーに8-Mの参加者数の減少について聞かれたところ「それはコロナウイルスよね」と言っていることを理由に「政府は既に感染リスクに関する重要な情報を得ていたにも関わらず、政治的理由で中止を促さなかったのでは?」という追及が始まります。そして、同日Guardia Civilが捜査裁判所に提出した2回目の報告書にもこの内容が追加され、現在このオフレコ映像の審議は裁判所に委ねられている状況にまで発展してしまっています(Irene Monteroの発言は政治家の立場としてはやっちまった感もあるけれど、市民感覚の素直な感想とも言える。このオフレコ映像の内容をそのまま入れてしまうGuardia Civilの報告書の方がどうかとも思う)。

このオフレコ映像はEiTBが所有していたものであり、このテレビ局のネットワーク内での情報共有はあり得たものの、ABCがこの映像にアクセスすることは漏洩以外にあり得ないと批判が出ているのも事実。当のEiTBは「このオフレコ映像は本来は明るみに出るものではなかった」と漏洩の否定をし、声明も出しています。それにしても、この一連の流れ、なんかだかいろいろ匂うよね?とついつい思ってしまう。。。

そして、右派の政党はまんまとメディアの情報を武器に攻撃を続けています。野党の立場としては攻めるべきところは徹底的に攻めるのも理解できますが、とはいえ、あなたたちは実際のところその時に何らかのアクションを起こしていたのですか?と思ったりもします。

というのも、この3月8日にはその他の大規模イベントも行われていたわけで、例えば6万人を動員するサッカーのリーグ戦、バスケットのリーグ戦、その他のイベントも普通に行われていたし、それこそ8-Mに対抗する形で極右政党のVOXの大規模集会も行われていたわけです(9千人ほどの支持者が集まったそうで、こちらは屋内なので3密です)。しかも、首脳陣の1人は2月にイタリアのロンバルディアに行っており、この日に既に症状が出ていたにも関わらず集会に出席し、その2日後に陽性判定がされたという始末(おかげでVOXの党首やその他の議員も感染し、VOXの全ての議員が議会の出席を停止することに)。自分たちのことは棚上げして全て政府のせいにするのかい?とツッコミを入れたい感じ。。。(彼らの棚上げ行動やトンデモ発言に関しては目に余るところがあるので、また別の記事で書いてみたいと思っています)

その他、3月5日にはカトリック教徒によるマドリードのMedinaceli大聖堂への巡礼もありました。besapieと呼ばれるキリスト像の足元にキスをする行為はコロナウイルスの感染予防のために中止され、巡礼者数も例年より少なかったものの、とはいえかなりの数の人々で溢れていました。しかもこちらは高齢者の数がハンパなかったので、今思えば超危険。。。

8-Mの話題に集中しているからか、各メディアの映像や写真は8-Mのものばかりが出てきているのですが、その他の映像や写真を見る限り全てのイベントは中止すべきだった、と考えるのが妥当な気がする。ただ、これって今思えばの話であるとも思う。。。

で、肝心の保健省の対応に関しては、3月8日の時点で感染者数や感染経路のコントロールなどもできるレベルであり、8-Mをはじめとする大規模イベントを中止するに至るデータや情報はなかったとしています。欧州疾病予防管理センターの注意勧告も考慮に入れた上での判断とし、実際に毎日発表される報告を遡るとスペインの状況は(0〜4の5段階で)レベル1となっていました(ただし、3月8日の夜に自治体から上がってきた情報から深刻な兆候が見え始め、3月9日〜10日にかけてマドリードやバスク地方における休校やテレワークの推進などの措置が始まったので、本当に微妙な時期だったともいえます)。
そして、当初から政府や保健責任者の判断の正当性を訴えていた政府の弁護団に加え、ここにきて今まで黙っていた検察も裁判の棄却を要求し始めました。

そこに法医学者の報告書も出てきました。内容は非常にクリティカルで「誰が感染の伝播をもたらしたのかを知ることは難しい」としながらも、「2月の末の段階で感染の兆候は出ていた」とし、「WHOや欧州疾病予防管理センターの勧告に注意を払わなかった」と指摘し、マドリードの政府代表José Manuel Francoだけではなく、保健大臣のSalvador Illa、非常時保健責任者のFernando Simón、マドリードの保健担当のEnrique Ruizなど、保健担当責任者の責任について問う内容になっていました。要は、判断の見通しが甘かったということで、ある意味これが一番中立な意見かも、と個人的には思いました。 

ちなみに、弁護団や検察による棄却の要求は裁判所によりあっさり却下されてしまうのですが、José Manuel Francoの公判を前に、現段階では政治というよりも司法のせめぎ合いの様相を示している状況となっています。

実は、José Manuel Francoの公判は明日6月10日に行われます。その前にここまでの説明を書いてしまわないと、という謎の使命感でここまで長々と書いてしまった次第。明日になったら何かがはっきりするでしょう。そして、ここに来てこの問題以外にも、政治と司法のワチャワチャが勃発している状況。
また続きは後日。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?