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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #6 ryusei side

さとみ32歳、琉生25歳。社内恋愛中。週末はどちらかの家で過ごすことが多いが、今週は水族館でデート。※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます。

水族館は基本暗いところが多いから、気兼ねなく手をつないだり、腕を組んだりできるのがいい。

普段は恥ずかしがっているさとみも、今日は手を放さないでいてくれるし。

いいな・・・水族館・・・また来よう。いや、全国の水族館回るのでもいいな・・・。

「・・せい?」

さとみの呼ぶ声で我に返る。

「あ、ごめん、何?」

「クラゲそんなに好きなの?」

全国の水族館をさとみと回ることに思いを馳せていただけなのだが、どうやらさとみからはクラゲの水槽をガン見しているように見えたらしい。

「いや、まあ。いいよね、キレイで。うちにも居たらいいなあって」

「あー、琉生の家に似合いそう」

「こういうライトで照らしてたら癒やされるわー。いくらでも見てられる」

「うんうん」

一定の時間で、青、緑・・・と変わっていく照明を見ながら、ゆらゆらと呼吸するように動くクラゲ。

と、それを見ているさとみ。ライトに照らされる横顔を見ていたら思わず声が漏れた」

「綺麗・・・」

「うん、キレイだね」

「いや、さとみが」

くるっとさとみがこっちを向いて睨む。暗闇だけど赤くなってるのはわかる。

「だーかーらー。そういうの外では言わないでって!こんな近い距離に色んな人いるのに、恥ずかしいでしょ」

「誰も聞いてないって、そんなの」

「そういう問題じゃないの」

くるっと俺に背を向けると、さとみは歩き出した。

怒ってる。かわいい。

「どうせまた、“怒ってる、かわいい”とか言うんでしょ」

バレてる・・・。思わず吹き出してしまう、俺。やば。

「もおおお!そうやって笑う!もう可愛いとかいう歳じゃないんだからね」

「歳、歳っていうけど、そんな歳じゃないじゃん」

「そういうのを他人聞かれてたら“そんなキレイなのかな?”って思ってみるでしょ?で、顔見られたら“大したことないわ”って思われるほうが恥ずかしい」

そうかな・・・普通にさとみはキレイだと思うんだけど。ただいつものようにあんまりしつこいと余計に怒るからやめておく。

ぷん、と踵を返すとずんずん歩いていくさとみ。の、後ろをついていく俺。

遠くでさとみが立ち止まる。なにかの看板の前?

「ねー!琉生、イルカのショー、もうすぐだって!あと10分で始まる!行こう!」

奥にある階段を指差すさとみ。・・・怒ってたんじゃないのかーい。

ま、さとみらしいけど。

「うん、行く―」

俺も小走りにさとみのほうに駆け寄った。

*** #7へ続く  ***


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