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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #90 Jun Side

毎回1話完結の恋愛小説。下のあらすじを読んだら、どの回からでもお楽しみいただけます。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳は社内恋愛中。さとみは琉生と同棲しているが、このまま結婚していいのか悩み中。琉生と一時期付き合っていた由衣は、上司の斎藤と不倫中。琉生の後輩、志田潤はさとみに片思いだが、酔った勢いと惰性で、由衣とセフレの関係でもある。

俺は人の気配で目が覚めた。

「由衣さん・・・」

「ん?」

薄明りの中、由衣さんが缶ビールを片手に振り替える。

「えっと・・・人の家に黙って入るのやめてもらえます?こわいじゃないですか」

俺は中途半端な時間に起こされて、頭が痛い。

「だって鍵開いてたもん。そっちだって不用心じゃない」

おお、それは確かにまずい。ん?いやいや。

逆ギレじゃん、それ。ごめんとか、起こしちゃった?とかないのか。

俺は、呆れながらのそのそとベッドから降り、スマホで時間を確認する。

1時過ぎだった。俺が寝付いてから1時間しか経っていない。渋々明かりをつけると、缶ビールのほかにコンビニのパスタを食べた跡もある。

「来るならLINEくださいよ」

「うん」

由衣さんが、袋にゴミをまとめ始める。

「なんかありました?」

しばらく会社でしか会ってなかったので、由衣さんが俺の部屋にいるのが不思議なかんじだった。

「んー・・・なんとなく、寄ってみようかなと思って」

金曜日の夜だ。恐らく斎藤部長にすっぽかされたか、空いてしまったんだろう。

「風呂とか、いつも通り勝手に使ってもらっていいですよ」

「うん」

そういうと、由衣さんは俺の元カノのカノンが置いていった灰皿を引き寄せて、タバコに火をつけた。

「私の人生、停滞している気がして、でもどうしていいかわかんないんだけど、どうしたらいいと思う?」

由衣さんがぷうっと煙を吐く。白い煙が部屋に広がったので、俺はそっと窓を開けた。

「質問の意味が全然わかんないっす」

「琉生にはフラれて別な彼女出来ちゃったし、今、好きな人とは不倫でしょ。一緒に住もうっては言われてるけど相手が離婚する気配はない。詰んでない?私の人生」

由衣さんは大げさに頭を下げて、ぐったりしたジェスチャーをする。

「えっと・・・今聞いた話の感想を素直に述べても怒らないですか?」

俺は恐る恐る尋ねた。

「場合によっては怒る、または殴る」

由衣さんが顔を上げて、キッと睨む。こえええ!でも俺も貴重な睡眠を邪魔されているのに、怯んでいられない。

「もー!なんでですか」

「慰めてほしいから来ただけだもん」

由衣さんはそう言っていつものように唇を尖らせる。

「だって、そんなの自業自得じゃないですか」

俺はため息交じりに言った。

「人生って言いますけど、そんな大げさじゃないですよ。彼氏と別れることなんてフツーにありますし、不倫は自分が選んだだけじゃないですか。不倫やめて別なオトコ見つけたらいいだけでしょーっ」

むくれながら聞いていた由衣さんは、ぼそっと呟いた。

「そんな人いたら苦労しない」

「だって、ほら、前合コンした、ヤマダ氏とかスズキ氏とかよさげだったじゃないですか」

「えー。だってどっちともヤッたことあるけど、あんまりときめかなかったもん」

そうであってほしくなかったけど、そうだったのか。俺は頭痛を覚えつつ話を続けた。由衣さんらしいというか。

「結婚したいなら結婚相談所に行くとかどうですかね」

俺は一応考えて、マトモなことを提案してみる。

「結婚したいわけじゃなくて、私を大事にしてくれる人に出会いたい」

「そんなんだったら」

俺は由衣さんの服に手を掛けて、キスをした。

「俺がいるじゃないですか」

なのに由衣さんは顔色一つ変えない。

「あんたは“さとみさん”でしょ」

「俺、由衣さんのこと、めっちゃ大事にしてるじゃないですか。俺、身近な女の子は大事にしますよ」

俺は由衣さんの服の中に手を入れて、3週間ぶりの体温を感じた。

「女性は地球の宝です」

「地球規模でくくらないで」

「じゃあ、今だけ由衣さん限定」

「バカ」

由衣さんがキスなのか抗議なのか分からないけど、俺の唇に噛みつく。

俺はそんな“いつも通り”の由衣さんに、安心しながら服を脱がせにかかった。


*** 次回は7月2日(金)15時ごろ更新です ***

雨宮よりあとがき:潤×由衣は久しぶりに書いたなーと思いました。登場人物が増えてきたので、全員出そうとすると半月かかるんだなということを知る。しかし週3更新が精いっぱいです。有料記事を6月書いてないので催促くるんだっけな?今日も月末なんでバタバタしていますが、頑張ります。


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