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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #14 Ryusei side

アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。琉生の上司・斎藤と、後輩の志田潤が出てきて波乱の予感。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます

年末の挨拶回りから戻ると、ロビーにさとみと志田がいる。

「あれ、二人、何でいるの?」

「あ、琉生さん。サーセン!ちょっと年賀状切らしちゃって、そこで印刷してもらってきます」

「年賀状?!今頃やってんの?」

若干キレ気味の俺にさとみが割って入る。

「まあまあ。そういうこともあるじゃない。志田くん1年目だし。他にもそういう人いるかも知れないから、向かいの印刷屋さんで頼んでくる」

「さと・・・佐倉さん、そんな甘やかさないでいいから」

さとみは目で俺をたしなめると、拝むポーズの志田と一緒を連れて、出ていった。

一連の流れを見ていた上司の斎藤さんがニヤニヤしながら声をかけてきた。

「何お前、佐倉さんと付き合ってんの」

「ち!違いますよ。何いってんすか」

「モロバレだから。いや、周りは気づいてないだろうけど」

「違います!」

うっわー。カマ掛けられてるのかわかんないけど、こういう事言ってくる上司ってほんとうざい。っていうか本当にバレてたらどうしよう。

さとみは絶対嫌がると思うし。

いや、からかってるか、カマ掛けてきてるだけだよな。

「だってそのネクタイ、クリスマス前に佐倉さん、百貨店で買ってたの見たし」

「は?」

どういうこと?!

「俺んち、佐倉さんちと同じ沿線。知らなかった?お前ら時々見てるよ。週末とか」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

悶絶する俺を面白そうに眺めている斎藤さんが、マジでムカつく。

「いやあ、一回くらい声掛けてみようかなって思ってたんだけど、嫁がやめろっていうから」

・・・バレてる。本当にバレてる。

「さとみが嫌がるんで、マジで誰にも言わないでください」

俺はがっくりうなだれながら、斎藤さんに懇願する。

「そんな野暮な奴じゃないって、俺も。まー、社内恋愛はバレたら面倒くさいから、そんなに言いふらさないほうがいいよ。経験者として言っとく」

斎藤さんはエレベーターのボタンを押しながら、言った。

「あー、それさとみも言ってました。面倒くさいんですか?」

「まあね。まず女子立ちの噂話の餌食にはなるだろ。別れたら詮索されるし。当人同士はもう気にしてないのに、周りが異常に気を使ったり。飲み会の時に鉢合わせしないように段取りされるとか、うっとおしいよ」

「うわあ、それマジで経験者しか言えない話」

「はは。昔、俺が餌食になってるとこ、佐倉さんは見てるからなあ。多分、あっちは気遣ってくれてた方」

斎藤さんは笑っているが、それ以上聞いていいのかわからなかったので、とりあえず俺は黙って聞いていた。

「あ、ちなみにそれ、今の嫁だから。要らん気は回さないように」

「え、そうなんすか」

てっきり今も社内に斎藤さんが別れた女がいるのかと思って、詮索してしまった。

「ま、お前もうまくやれよ。じゃ、俺、最後に社長のとこ行ってくるから。お前はもう帰っていいよ」

斎藤さんはひらひらと手を振って、社長室へ向かっていった。

***

「あー、斎藤さんの話、聞いたんだ」

夕飯の後、食器を洗ってくれているさとみに、一連の話をした。なんとなく隠していてもよくない気がしたので。

さとみは斎藤さんに社内恋愛がバレてることはそんなに気にしてないようで、割とあっさりした反応だった。

「まあ、私達のことも・・・斎藤部長なら、いいかな」

「え、何、その特別扱い」

「だってもう見られてるんだったら、今更、変に取り繕っても仕方ないじゃない」

「まあねえ」

結局、見られてた話をされつつも、今日も俺はさとみの家にいるわけだが。

「斎藤さんの奥さんって誰?俺知ってる人?社内、なんだよね?」

「知ってると思うけど・・・去年から産休に入ってる光先輩。私も時々話してると思う」

「あー・・・顔はわかんないけど、さとみの先輩という認識はある。あー、その人なのか」

総務の・・・たまにさとみの会話に出てくる人。

「それより、今回のこと、いいキッカケだから、琉生に相談したいことがあるんだけど」

さとみが手を拭きながら、深刻な顔をして椅子に腰掛けた。

「え、何」

あんまり見たことがないさとみの表情に、俺は戸惑う。

「こうやって毎週毎週来てくれるのは・・・嫌ではないんだけど・・・」

「あ、うん。えっと、ごめん」

嫌ではない、と言われてるのに、嫌なのかなと思って思わず謝ってしまった。

「なんか中途半端だし、どうせならちゃんと一緒に住まない?それでお互いわかることとかもっとあると思うし・・・」

え?何?さとみが言ってる意味がよくわからない。

「それって、同棲しようってこと?結婚?」

「いや!結婚はまだ早いから!その前のお試しというか・・・」

もじもじするさとみに俺は言い切った。

「いや、する。絶対する、今すぐする。今日から!いや明日から?っていうか今日も泊まる気満々だったし、全然いつからでもオッケー。ちょ、俺明日、不動産屋に言って、部屋解約してくるわ」

「え?いや、そんな急がなくても・・・・だって、琉生の部屋の更新、3月でしょ?そのくらいでも・・・」

「ダメ。さとみがそんなふうに言ってくれることなんて、きっとこの先ないし。気が変わらないうちに、する。二人で新しい部屋借りる?それともここに来ていいの?」

「あ、うん。ここは来年更新だから・・・ここで住めればなと思って」

「よし。じゃあ、年が明けたらいろいろ段取りするわ。ありがと、さとみ」

俺はさとみの手をぎゅっと握った。

「うん」

さとみは困ったような顔で笑ったが、俺は最高の笑顔で返した。

*** 次回は6日(水)15時更新予定です ***



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