バランスの取り方

世の中、ほとんどのことで バランスが重要だ。
何事もやり過ぎ・行き過ぎは良くない。
でも、バランスってものは、人によってどのくらいがちょうどいいのか 全然違うから難しい。
その時の状況によっても 良い案配が変わるから、尚更難しい。

毒親育ちの私は、ずっと 0か100かの思考(白黒つけたがるとか、極端な思考だとか)をしていた。
毒親育ちはそうなりやすいらしい。
完璧主義だったり 潔癖症だったりも、毒親育ちに多い特徴だ。
幸い、私は極度の面倒くさがりと反骨精神のおかげで、完璧主義にも潔癖症にもならなかったが……。
毒親は、自身の気分で子供を振り回す。
前に良いと言っていたことが、突然ダメになったり、ある時は可愛い可愛いと褒めそやしておきながら 突然醜いと貶したり……とにかく その時の気分で子供を振り回す。
子供はどちらが良いのかわからなくなり、完璧を求めるようになるわけだ。

なかには、テストで満点を取らなければ、あとは全部ダメ なんて家庭もあるだろう。
98点でもダメなのだ。
「なんでひとつだけ間違えるのかね?」なんて 子供は責められる。
私は意地でも親にテストを見せなかったので、そんな風に言われることはなかったけれど、おそらくうちの親もそう言うタイプだ。
「テストいつ?」と聞かれても「まだ発表されてないみたい!」なんて、平気で嘘をつき のらりくらりとかわしていた。
共働きだったのもあって、そこまでしつこく聞かれなかったのはラッキーだった。

大人になってから、0か100かの思考をやめる訓練を始めた。
完全オリジナルの方法だが、かなり効果はあると思う。
まず、手本にすべき相手を探す。
親が良い手本じゃなかったから、ここから始めなければならない。
手本を見つけたら 一旦それは放置して、一度両方に振り切ってみる。
たとえば、ネガティブを0とするなら、ポジティブは100。
私は0にいることが圧倒的に多かったから、無理やり100の状態でい続けてみる。
最初から手本を目指すのではなく、0と100 両方を知ることで 中間を知る方法だ。
一度両方に振り切る方が、0か100かの思考を持つ人間にとってやりやすいだろう。
これは実体験に基づいた結論だ。
何度も手本を目指しては 挫折してきた私が編み出した唯一の方法と言っても過言ではない。

無理やりポジティブでい続けてみると、次第にネガティブに戻ろうとする力が加わって、自然と中間地点にいる。
力が加わりすぎて、ネガティブに限りなく近づく時もあるが、一度ポジティブに振り切ったことで、ポジティブに戻ろうとする力も働き始める。
そこから、手本の状態に近づけようと努力することで、限りなく正しい位置に持っていくことができる。
ネガティブな状態から、ポジティブを知らないのに バランスを取ろうとすると、どうしてもネガティブの力が強くて 戻されてしまう。
だから失敗するのだ。

私は、そうやって自分の性格をいろいろ矯正している。
昔よりかなり良くなったとは思っているが、「自分のせいにする」か「人のせいにする」かのバランスは未だに難しい。
人のせい、と言うと印象が悪いかもしれないが、実際 自分自身に落ち度がほとんどないことも 世の中には多く存在する。
それすらも自己責任にしてしまえば、この世は自殺志願者で溢れることだろう。

たとえば交通事故がわかりやすい。
自分は停車していただけなのに、後ろから車が追突してきたら、避けようがない。
なのに「こんなところに私が車を止めてしまっていたから……」と、自己責任にしては 話がややこしくなるだろう。
もちろん、停車してはいけないところで停車したり 急停車したなら 自分に責任があるだろう。
しかし、そうではないなら、圧倒的に後続車が悪い。
実際 法律でも、後ろからの追突は 追突した車が悪いとされている。

法律で決められていれば、話は簡単なのかもしれない。
だけど、日常の些細な出来事は 法律では裁けない。

昔の私は、なんでも自分のせいにした。
親が怒鳴り散らすのも、殴ったり蹴ったりするのも、暴言を吐かれるのも、全部自分のせいだと思ってた。
何か嫌なことが起きるたびに、全部自分のせいにした。
自分が馬鹿だから、クズだから、何もできない人間だから……そうやって、自分を責めた。
それはバランスが悪いと思い、人のせいにすることを覚えた。
たとえ私が何か悪かったとしても、暴力や暴言は親の問題で 親がその手段をあえて選んだわけで、それは親のせいだと。
一度人のせいにし始めると、心が暴走して 何もかも人のせいに感じた。
それもまたバランスが悪いと感じて、少しずつ戻すようにした。

今では、かなり判別がつくようになった。
それでも、やっぱり難しい。
ワーっと いろんなことを人のせいにしたくなる時がある。
でも、自分がもっとしっかりしていれば なんの問題もないんだということもわかってる。
何か、うまくいかない時……人のせいにするのは楽で 自分のせいにするのは苦しい。
こんな時、自己肯定感を上げるような何かがあればいいんだろうけど、人生そううまくはできてない。

またこれも成長する機会だ、なんて思ったりもするけど、やっぱり苦しいものは苦しい。
さらに追い打ちをかけるように、人から「失敗ばっかりだね」なんて言われたら、どうすればいいのかわからなくなる。
なんとか音楽をかけて元気をほんの少し取り戻したのに、私はもう どうすればいいかわからない。
がんばっているはずだ。
それも、適切に がんばれてるはずだ。
それでもうまくいかない時はあるはずだ。
タイミングだったり メンタルが整っていなかったり、そういう ちょっとした原因でも、簡単にうまくいかなくなることはある。
とくに私の場合、そうだ。

そう。
でも、失敗ばかりなのだ。
私の人生、失敗ばかりなのだ。
それは否定できない事実なのだ。
そしてそれは、誰のせいでもなく 私のせいなのだ。
それでも、エジソンみたいに 一万通りの上手くいかない方法を見つけたのだと、胸を張って言える。
言えるのに、やっぱり 苦しい時は苦しい。
気丈に「勉強になった」と言ってみても、やっぱり ガッカリする。

そして「こんな時、親が『あなたなら大丈夫だよ』と言ってくれる親だったなら良かったのに」と、いつも思ってしまう。
きっとその言葉があるだけで、人は強くあれるのだ。
自分で自分に言ってあげるのも大切だけど、人から言われた言葉は 一生の支えになるから。

そんなふうに、人のせいにしてても仕方がない。
過去は変わらないのだから。
だから私は私に言ってあげる。
「あなたなら大丈夫だよ。だって、今までだって ずっと たくさんの壁を乗り越えてきたじゃない」って。

サポートに興味をもっていただき、ありがとうございます。いつか 私の文書が、あなたの手元に残る形になって あなたをそっと支えられればと思います。