平熱考
先日、有用至急の件につき、犬を抱えてタクシーに乗った。
そこで、運転手さんに聞いた話。
曰く。
いま都内のタクシーは4分の3が稼働していない。
間が悪いと昼間の都内でも空車が一時間は捕まらない。
大手タクシー会社でコロナの感染者が出て、稼働台数が更に減った。
ウチは乗務前に額で検温して36度あると乗務できない。
そこまで聞いて、36度?と不審に思い、聞き直したところ、
「はい。36度あったら乗務できません」とのことだった。
* * *
日本人の平熱が、下がり続けているとは聞いていたが、そこまでとは思わなかった。少し前までは37度が、微熱があると言われるボーダーだったように思う。
私は手が非常に温かいらしく、スポーツ教室の子供達やマッサージの対象者に驚かれるが、そんな私にしたところで、ようやく36.0度くらいなのだから、確かに平均体温は下がってきているのだろう。
ちなみに、犬や猫の平均体温は38.5度らしい。
人でいったら、だいぶ高熱である。
一説によると、人類は他の動物より平熱が低いから長命で、人のなかでも低体温の人ほど長生きする、というデータもあるそうだ。
しかし、冷えは万病のもととも言う。
健康系の情報ほど定かならないものはないが、日本人の平均体温が下がってきているのは事実のようだ。
* * *
古来、物の怪や怪物に出くわした者は、その場から逃げおおせたとしても、その後、高熱を出して狂い死にする、という顛末を迎える描写が多い。
魔の物に取り殺される、という時には、洋の東西を問わず、人は高熱を発するように描かれる。
高熱を以て、ウイルスを退治しようとするように、怪異にも、体は熱で抗おうとするのだ。
現在、発熱に苦しんでいる方にはお見舞いを申し上げるが、一方で、熱を発せるという仕組みは、とても頼もしい仕組みとも言えるのではないだろうかと、今回考えた次第であった。
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