神、人、「私」~『MIU404』が面白かった、そして考えた~

もう終わっちゃったけど、
今季のTBSドラマ『MIU404』が面白かったのです。

最初はちょっと斜めに構えて観ていました。
「あー、スターたちのキャスティングに、
大ヒットしたドラマ『アンナチュラル』の制作チーム。
刑事のバディもの、軽快に、楽しく、うんうん」
しかし回を重ねるごとに夢中で観るようになった。
録画を2回3回観た。そして、観終わりひとりでギャーギャー言うようになりました。
「うわー」「なんでこんなん作れるんや」
「なんなんこの人ら」「なんなん、このチーム」
「うらやましい」「くやしーーーー」「うわー、はよ来週金曜日きてー!」
そう、実は私は『アンナチュラル』のDVDを購入して何度も観ているのだ。
ハマらない訳がなかったのだ。
『アンナチュラル』から2年経って同チームが再結集し、
このコロナ禍という逆境の中、自分たちに出来ることを……
いや、このコロナ禍だからこそ「伝えたいこと」を熱く熱く盛り込み、
皆で作った本作、面白くない訳がなかったのだ。

回を重ねるごとにわかってきました。
私が引き込まれていった理由は、
我々皆が「みてみぬふりをしている」現代の社会問題の数々が
押しつけがましくなく、決してきれいごとや勧善懲悪で終わらせるのではなく、
散りばめられていることでした。
女性差別、外国人労働者問題、貧困問題、SNS、人の孤独……
みんながね、知ってはいても、見て見ぬふりをしがちな問題たち、
もしかしたら「自分には関係ない」「自分には何とも出来ないし」と思っているような
テーマたちをぽーんと持ってきて、
主人公たる愉快なバディたちに直面させ、悩ませ、でも、突っ走らせ、もがかせ、でも、走らせる。
(愉快な2人も実は心の奥にいろんなものを抱えている設定も、ええですね)
軽快華麗にテンポよく、でも人間臭く。
毎回ストーリーの伏線も貼りながら、疾走し、そして、ぽーん、米津玄師!!……巧いなあ。軽快な1時間のあとの余韻として、我々皆がそれらの問題を、
「自分事」として引き寄せて考えるきっかけをくれていた。
少なくとも、私は、「きっかけ」をもらった。「じーん」と「うーん」を、いくつも。

主軸とされていることは2つ、のように私は感じました。

ひとつは、時間。
〝あの時〟と今。
あの時に戻れたら?
戻れないけど戻りたい。
でも戻ってもなにが出来た?なにか出来た?
こころに澱のように残っていて、
でも、それでも「今」と「これから」を生きていかなければならないということについて。

もうひとつは、許す、許さないということ。
うん、どうしようもないゲンジツに対して……。
そして、人が人を許す、許さない、許せない、そもそも許すって、なんだ、ということ。

ラスボスとなるのは、謎の大物犯罪者。
ここ数年、私も大好きな(笑)菅田将暉が超好演怪演していた。
すごかった。どこまでが演出で、どこまでが彼の演技プランだったんだろう。
と、まだ、ずっと気になっているくらい。
絵にかいたような凶悪犯ではなく、そのへんのにーちゃんなんだ。
それは実はある意味とても現代的な現代の「悪」のかたまりの擬人化のような。
ドラッグを作って売ったり、SNSを巧みに利用して人々を混乱に陥れて、楽しんだり。
彼がなぜそのような悪となり、悪を楽しむかのごとく、ちゃらちゃらへらへら……
なのに、ふ、と、しばしば、人の本質を突くようなことを「あの目で」言う。
でもその理由や過去は最後まであかされなかった。
それどころか、主人公たちと最後の本気の追いかけっこからの意外なことで負傷し捕まってしまった彼は病院のベッドで顔を覆いながら言う。最後の言葉として。
「俺はお前たちの物語にはならない」
……「うわー!!」(観ていたわしの心の声)

コイツは、なんやったんやろう。
さっき、≪「悪」のかたまりの擬人化のような≫と私は書いたのだけれど、
そうなんだよな、なんか、「神」みたいだったんだよな、と思った。
「神」になりたかった人、みたいな。
セリフでも、「自分は悪いことをしているつもりはない」
「(ドラッグを)作って売って、欲しい人が買うだけ」
「ぜーんぶ上からみてるだけ」
「神様はもっと残酷。指先ひとつで全部消せる」
的なことを言っていた。チャラチャラした大阪弁で。
(てか、こういうときの大阪弁は無敵ですね)

許す、許さないということ。
これは、勿論、人間の視点だけれど、同時に、〝神〟の視点でもある。
居るか居ないかわかんねえけど、でもそんな〝神〟の。

最終的にラスボスであるこのにーちゃんは、
逃げて、逃げて、でも、(ちょっとネタバレ申し訳ないねんけど)
自分が仲間だと思っていた? 自分が作り出したパリピな世界のパリピな皆(パリピになった皆)から〝裏切られ〟、絶望と共に、「上」から堕ちる。
そうして、最後に言うセリフが主人公たちに向けて、
いや、同時にテレビの前の私たちに向けて「俺はお前たちの物語にはならない」だった。

ドラマをはじめとしたいろいろな創作物や表現されたものには
さまざまな解釈があっていいし、それぞれの見方があります。
このドラマに関しても、ネットをはじめとした、たくさんの熱い感想が散見されるし、
カチッとしたものや、理路整然としたものもたくさんある。
あと。制作サイドもいろんな気持ちを発表しています。

そんな中、こんな風に、漠然な思いを書くのはかっこわりぃのだけど、
私には、なんだか、やはり、このにーちゃんが、「神」というか、
「どうしようもないゲンジツ」(最近こればっかりやな私。笑)の象徴のような、
そんなものに見えたような気がしてなりませんでした。
でも彼は、人間のかたちをしていて。つまり、「人間」で。
なんていうのかな、そこが、より、面白いというか、怖いというか、考えらせられた。

この世にはびこる「悪」みたいなものたち、それらはすべて人が起こすこと……
差別を含めたすべての問題や戦争なども、
すべては人間が引き起こし、人間を苦しめるものなんだ。
己と思想や主観が似たものが「己(たち)が正解・正義」となってしまうことで
それらとは違う他者を排除・糾弾・ランク付けしたり、体・心を傷つけたり、死に至らしめたり……。
でも人は普段それらを意識することもなかったり、「自分事ではないこと」と思っていたり、
みてみぬふりをしていたりする。
だからどれだけ走っても、捕らえた(と思っても)、それらはなくならない。
きっと完全になくなることはないのかもしれない。でも、なんとかしなければならない、
政治、表現、すべてのひとがそれぞれ自らの出来ることを考えながら。
もっと言うと、コロナというウイルス。
これらは人が作り出したものではないけれど、
でもコロナ禍の中にはたくさんの人災も含まれる。
この人災もまた、「自分事」、自分のまわりじゃなく、
大きな目線で、考え、出来ることをやっていかねばならない。
「俺はお前たちの物語にはならない」
敵は、でっかい。神。ううん、人間。
いや、人間は人間でも、もしかしたら、「私」、自分自身なのかもしれない。
人や物事をどこか他人事のように(無意識だとしても)上から見ていて、
社会問題にもSNSというものに対してもどこか麻痺したりもしている、という意識もない私たち、自分自身……。

なんかなー、直接的な感想ではないのかもだけど、
私は、そんなことをめっちゃ思いました。

最終回のタイトルは「ゼロ」。
そう、ゼロはすべてを失ったゼロという意味もあるかもだけれど、
スタート地点という意味もあると思うねん。または、リスタートという意味も。
そう、ここから、ひとりひとりが、皆で、進んでゆくんだ。

そう伝えたかったわけではないかもですが
私は、ちょっと色々なことが重なった時期でもあり、
最終回を観て、そんなことを考えたりしました。

やっぱり、最近2~3回似たようなテーマ(?!)のnoteになってる(笑)
でもきっと、私的にもそういうきっかけをたくさんいただいている時期というか、
考えな、考えよ、考えたい、って時なのかもしれませんね。おもしろい。ありがたい。

とりあえず、このドラマも、DVD-BOX出たらたぶん買うな。
ほんとに、よくできていたというか、唸った。
こういう表現や作品を作れるようにならなあかん。なりたい。
(いつも好きな表現者や表現物を観るたび触れるたびこんなばっかり思ってる。書けよー。書くよー。笑)

◆◆◆
omake①
私的には、橋本じゅんさんがすごいぴったり似合う役で出演していたのが嬉しかった。
当時の劇団☆新感線ファンとして。
すげぇぴったりやった。轟天じゃないけど轟天やった。やっぱり、人柄って演技に滲む。
てか、今季、新感線や新感線絡みの役者さんが結構ドラマに出てて、個人的に「ふふふ」でした。

omake②
おじさん好きと昔から言われ続けていますが、菅田将暉くんはずっと好きです。歌も好きです。

omake③
テレビドラマ、昔は全然観なかったのにここ数年よぉ観てる。なんかしながらとか仕事しながらやけど。
やはり日本のテレビドラマは「この今人気の役者を使って」ってとこから企画が始まるからやからか、
私が重視する内容とかテーマとかよりも「この役者✨」みたいになりがちやねんけど、
そんな中、このドラマをはじめとした、テーマがありそのテーマと役者=役と、
っていうすべてが一緒になって『作品』みたいなものに出会えると嬉しいし、刺激をいただきます。
(旅芝居観てる時もずっとこんなこと言うてたな私。笑)

◆◆◆
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大阪の物書きでございます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
下町・大衆文化も好きです。
女2人の立ち呑み旅、連載中。現在第7回まで更新中。
http://tabistory.jp/cat_story/cat_sakabawoman/

普段はラジオ番組やらCMやらの構成作家やライターです。まっしぐらな曲者です(笑)
AM懐メロリクエスト番組やCM書きやら、
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