事故が起きた時、なぜすぐに責任追及をしてはいけないのか

それは、失敗から学ばなければならないからです。

人間は誰しも失敗します。失敗をしない人間など存在しません。そして、航空機業界や医療業界の失敗は、多くの命に関わります。

これまで、多くの命が航空機事故や医療事故によって奪われてきました。しかし、その航空機事故や医療事故の原因を調査し、その原因を二度と起こさないようにするための対策が懸命に行われてきたからこそ、事故による死者は減少してきているのです。

ここでもし原因追求の目的が、責任追及である場合、事故を起こした当事者(人、部署、会社)は、どのようなムーブをするでしょうか。

誰しもが攻められた時、意識であるにせよ、無意識であるにせよ、防衛本能が働きます。

その防衛本能により、事故の状況、事故時の思考、関係者との人間関係、会話の状況など、当事者にしか知り得ない貴重な原因の種を隠すことになりかねません。

しかも、それは今回の事故だけではありません。

社会が責任追及を強める風潮になることにより、責任追及を逃れようとして、これから将来起きる事故や事故につながるミス・ニアミスをも隠す結果になります。

失敗や失敗の真因を隠すことにより、失敗の原因追及ができず、防ぎえたより重大な事故が引き起こされる可能性が高くなります。

もちろん、日本は放置国家であるので、過失に対しての刑罰もあります。それは被害者の感情に寄り添ったものです。

しかし、報道関係者が世に放つ記事は、社会がその失敗を二度と起こさないための目的であるべきです。

航空機事故調査を担う、運輸安全委員会による報告書の2ページ目には、このような一文が添えられています。

本報告書の調査は、(中略)運輸安全委員会により、航空事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

我々被害者ではない人間の意識は、対岸の火事として不正や事故を追求するのではなく、「なぜそれが起こってしまったのか」「どうしたら自分たちも同じような事故を起こさずに、防ぐことができるか」に焦点を当てる方向でありたいと思います。

今回の羽田空港での接触事故に関して、マスコミによる責任追及を優先させる報道は、今後の日本の失敗に対する姿勢を歪ませることになりかねないと、強い懸念があります。

この記事に賛同された方は、ぜひそのような想いをどこかでシェアしてもらえればと思います。

2024/01/05 14:30追記

航空安全会議から下記声明が発出されました。

すべての人が、心して読むべき内容かと思います。

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