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なぜわたしたちは忙しい中でも、改善を続けなければならないのか

医療の質を改善することを支援していると、時折タイトルのような疑問を呈されることがあります。

「日々の業務でいっぱいいっぱいなんです。だから医療の質を改善し続けていくことは難しいです」

また、これを読んでいる方もそう感じている方もいると思います。日々の業務に加えて、その改善まで現場にやらせるなんて!と憤りを感じている方もおられると思います。

まあ、これに対して様々な視点から考えていくと、自分も含め、医療業界に属している人たちは視野を広くしていかなければならない、そして未来を見通す力を付けなければならないということを、ひしひしと感じています。これまでの医療業界のダメなところである「今日、自分だけが、儲かっていればヨシ!」的な考えの借金を利子と共に返済をはじめているのだと思っています。

現場で働いておられる方は、それでも良いと思います。その日の病院としての稼ぎを、患者さんの治療によって得ているからです。でも組織をマネージする役割を担っているマネージャー層、そしてその上の経営層はそうはいかないと思います。

組織の視点で考えてみると、企業をはじめ、病院などの組織は、そもそも存在し続けるという前提で運営を行っています。これをゴーイング・コンサーンと言います。

企業や病院においては、それらの組織からモノやサービスを購入することで益を受けている顧客・患者がいます。さらに、株式会社である場合は、そこから利益を受けている株主がいます。そして従業員がいます。

ゴーイングコンサーンという前提が崩れて、ある日突然その企業や病院が無くなることで、一番の不利益になるのは顧客・患者・株主です。また、その中で働いている従業員にも不利益が及びます。

つまり、企業をはじめ、病院などの組織は、関連する人たちが不幸にならないように、永遠に存続することを前提とした運営が求められています。

となると、企業や病院が運営を継続していく上で、今よりも向上していくこと、今目の前にある課題を解決していくということが重要です。

先のツイートでも述べましたが、Appleが初代iPhoneを2007年からずっと今まで発売しているとしたら、存続しているでしょうか。

競合企業は対抗するためのデバイスを出してくるはずですし、顧客はもっと新しく、処理能力が高く、いろいろなことができる、洗練されたデザインのデバイスを欲しがります。おそらく2024年現在までAppleが存続していくことは、無理だと思います。

病院においても、社会保障費はこれから絞められていくであろうし、初代iPhoneをiPhone15にするほどのイノベーションを我々凡人が起こすことはほぼ不可能です。日々すこしずつ僅かであっても工夫や改善をして、より少ない人員で、患者さんや地域住民のニーズを満たした医療をやっていかないことには、「病院ってつぶれるわけないよね?」という前提を守り続けることは難しいのではないでしょうか。

今ある食い扶持だけを維持するだけで、周囲の環境変化に耐えることはまず無理であろうと思います。だからこそ、改善し続けることが必要です。

ここまでは、病院運営側の視点ですが、個人の視点についてもいろいろ考えてみましょう…と言いたいところなのですが、あまりに働く動機の多様性が広くなりすぎました。お金だけのために医療職になった方もいれば、使命感で働いている方もいます。その両方の方もいると思いますし、そもそも働くことにそこまで意義を見出していない方も大勢います。自分も何のために働いているか、明確な答えが出ているわけではありません。

ということで、最終的に「なぜ改善を続けなければならないのか」という答えは、「知らんがな。お前はお前の道を行けよ。行けばわかるさ」という結論になりました。

矢沢栄吉さんのお言葉を借りるなら、「(改善)やる奴はやるし、(改善)やらない奴はやらない」となります。やる方々は改善による機会により自らの能力やスキルを伸ばして、その組織で成り上がるもヨシ! 他の組織に移るもヨシ!なのです。やらない方々は、やらないことで得る不利益に文句を言うことなく、最低限患者さんに不利益にならないように仕事をしていただくしかないのではないかと思います。

私自身は、それぞれの部署の改善をしっかりと支援させていただき、患者さんにも自分自身にも利益を出すことができるように、粛々と自分の持ち場で頑張っていく所存です。

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