診療報酬のためのチームは作らない。あくまで目的は患者さんのため
2024年度の診療報酬改定で身体拘束を最小化するような取り組みをしていないと、入院基本料が減額されることになっていました。
そこでの取り組みとして、下記のように身体的拘束最小化チームの設立することが要件として記載されています。
さて、ここでチームを作るうえで、絶対にしてはいけないことがあります。それは、診療報酬を取るという目的でチームを作ることです。診療報酬があると、どうしても病院は診療報酬をとりたくてそこに書いてあることをやりにいくんですが「診療報酬改定で国が身体拘束のチーム作らないと入院基本料が減っちゃうからさ…」という名目でチームを作ると絶対にうまくいきません。
なぜなら、診療報酬をとれればそれで良くなってしまうので、本来行わなければならないことが遂行されない可能性が非常に高くなるからです。
ここで、厚生労働省の採用特設サイトから、厚生労働省のミッションをみてみましょう。
いいミッションですね。もっと前面に押し出してほしいものです。それはそれとして、ここで一番大きく、強調されているのは、「ひと、くらし、みらいのために」です。日本に住む「ひと」のために、厚生労働省は診療に関する報酬を定めています。つまり、診療報酬という仕組みの目的は、質の良い医療に対して報酬をあげて、医療機関がそこを目指すことにより、日本に住む「ひと」が質の高い医療の恩恵を享受できるようになることです。
そんなミッションを掲げている厚生労働省が今回の診療報酬改定で身体的拘束最小化チームを作る(各医療機関に作らせる)目的とは何でしょうか。身体拘束を最小化しなければならない目的は何でしょうか。
それは、「ひと」、つまり患者さんのため、患者さんの権利や尊厳を守るためです。診療報酬を(みかけ上でも)とれたとしても、患者さんの権利や尊厳を守れていなければ意味がありません。どうしても私たちは目先の利益を求めがちです。もちろん、利益は得なければなりませんが、あくまでチームは手段であり、目的を達成してはじめて利益を得ることができます。
本当の目的を達成していないのに、利益だけ得ることになると現場が歪みはじめます。ありがちななのは、「チームは作って、身体的拘束の実施率を確認しはじめる。ちょっと高い状況があるから、ある程度のルールを作ってそれを周知するような勉強会はしたが、全体的な運用はあまり変わりなし。身体的拘束は減少しないから、経営層からチーム、チームから現場へ身体的拘束を減らすように圧力がかかるが、高齢患者が多くて忙しいという現場の論理があるので、チームと現場の乖離が大きくなっていく…」というパターンです。こういうシナリオだと診療報酬の要件は満たしているので問題は表面化しませんが、現場で医療を受けている患者さんが一番損を食うことになり、患者さん自身や、患者さんの権利や尊厳を守ることなんてできません。
そのうち、みかけ上の身体的拘束実施率を下げなければならないので、身体的拘束を実施するが記録はしないなんていうおかしなことにつながっていきかねません。これでは本末転倒です。
あくまで、重要なのは目的です。利益を得る組織で行われること、作られるもののすべての帰着する目的は、第一に顧客、患者さんのためであるべきです。患者さんのために行われているものに価値があるから、報酬がついて利益があるんだという当たり前だけど忘れがちな大切な論理をしっかり押さえておきたいものです。
というわけで、明日も自分の持ち場で、患者さんのためにやるべきことを粛々と淡々とやっていきましょう。
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