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縄文杉は

朝の薄明かりと、雨の雫の中。
神々しいまでの姿にもう一度、最後の別れを告げて。
振り向かず歩き出します。

無事に帰らないと。
笑顔とハグで送り出してくれた仲間のところへ。
自宅で帰りを待っていてくれる家族のところへ。
やっぱり、私は人なんだな。
これほどまでに圧倒的な森よりも、やはり、人が恋しい。

それにしても…。
完全防水のゴアテックス。雨は通さないが、汗も逃がさない。
YouTubeを見て研究し、速乾性の素材のものを選んで着ているはずなのに、いつの間にか汗でぐっしょり。
止まると汗冷えしてくるので、絶えず休まず歩き続けます。

途中のあずまやで昼食。
ガイドさんが作ってくださっている間に、コソコソと着替え。
首に巻いていたタオルを絞ったら、ザ~ッと水が滴り落ちました。
でも、手作りの温かいおうどんを頂いたら、力が湧いてきました。
最後の力を振り絞って、出発。

もうあと数キロで、登山口。
トレッキングステッキの使い方も、すっかり板についた。
これがあって、本当に良かった。
というか、無かったらどこかで躓いていたに違いない。
という位、もう膝がカクカク笑っています。

あと、1キロくらいかな。
長かったな。ここまで。
行きたいと思って、絶対に行くと決めて、あれこれ探し、揃えながら、準備してきた。
ここを逃したら、もう一生ない!と思いつめて、必死に進めてきたっけ。
沢山の人達が応援してくれて、ここまで来れた。
感謝してもし尽くせない。
でも、私もなかなか良くやったな…。

ふと見ると、前を歩いていたガイドさんの姿が無い。
あれ?と思っているとゲートが見えてきた。
え?…わぁ、着いた!
いないと思ったら、ガイドさんがビデオを回そうと、先に小走りで行っていたのでした。
最後まで、サービス精神旺盛でお茶目なガイドさん。
深く頭を下げてお礼を言って、無事の帰還をじんわりと喜びました。

あとは、ガイドさんにバスの手続きをしていただき、バックパックをバス待ちの列に置いてから、またまた更衣室で着替え。今日一日で、どれだけ汗をかいたやら。

バスに乗ると、終点まで40分くらい。
窓の外を眺めていたら、途中、白いものが目に入り…。
え…?
雪が積もっている…?
間違いない。雪です。
下界は泳げる位温かいのに。
屋久島は島全体が山なのだなと、改めて感じた風景でした。

終点に着き、停めてあったガイドさんの車で宿に送って頂きます。
宿に着くと、オーナーさんの優しい笑顔と、温かいお風呂が待っていてくれました。

夕方、仲間からの祝福をいただき、電波の良好な場所から家族に報告のLINEをして、私の、多分最初で最後の縄文杉への旅は、終わりました。

https://momococoronomadochiisaname.wordpress.com/blog/

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