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初めから君に恋してるエピローグ

「高校三年杉浦陽葵、国際ピアノコンクールで優秀な成績を収めたことをここに表彰する」
高校の全校朝会で名前が響き渡る。
「はい」
私は速足で舞台へ上った。
蓮先輩と出会い、オケ部と一緒に演奏して、音楽を共有する楽しさがわかるようになった。
音楽を楽しみ、音楽に心を開くができるようになって、ピアノとの向き合い方が変わった。
もう楽譜通りに弾くことだけに集中することはない。気持ちを押し殺して弾くこともなくなった。
蓮に出会う前は、自分の気持ちが見つからず、どんなふうに自分らしく弾けばいいのかわからなかった。でも、蓮と一緒に過ごし、私の音を見つけた。私は音楽を観客と楽しむと決めた。
蓮、ありがとう。愛している。見てる?
講堂の天井を見る。
蓮がすぐそばに来ているような気がした。
蓮ならぜったい来ているよね。きっと褒めてくれる。
私は小さく微笑んだ。
「やったね、陽葵ちゃん。すごいね」
若菜ちゃんが私と腕を組む。
「さっすが! がんばったね。おめでとう」
真希ちゃんがほめてくれた。
蓮とオケ部がきっかけで、親友もできた。真希ちゃんと若菜ちゃんは一生の友達だ。
川中先輩も、近藤先輩も卒業して、オケ部は代替わりしていた。私は相変わらず今もピアノ担当で、自分の練習の他、みんなの音出しを手伝ったりしている。
そろそろ一年生を勧誘しないといけない。ピアノグループの存続にみんなが危機感を持っているところ。
タイラッチからもピアノの音が丸くなって、色を帯びるようになったと褒められた。
本当にすべて蓮のおかげだ。
あなたに会ったあの日。私はあなたに恋しました。
いつかまた、蓮と会える。そんな気がしてならない。
桜の木の下で、また会いましょう。
きっとあなたはその時も走っている。

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