北へ...... 12

県を跨いで少しした頃。
俺達の腹もだが、車も腹が減る。
近場に見えた赤い看板のガソリンスタンドに入った。

「レギュラー満タンで」

70歳くらいの男性が出迎えてきた。腰は曲がっているが、元気の良い声と笑顔は高齢者と呼ぶに相応しくない。

「こっからどう行こうか」
「あのさぁ」
「うん?どうした?」

優奈は少し、申し訳なさそうに声をかけてきた。

「私。ここに行きたいの」

そう言って、ハンドサイズの日本地図を指差した。
日本の背中、少し飛び出した部分。確か、石川県だったような。

「そこに何かあるのか?」
「......」

優奈は答えてくれない。
だけど、話をしてくれた時の目には何かを感じた。
だから俺は決めた。

「わかった。行こう」
「良いの?」
「良いもなにも、俺に選択肢はないからな。それに、旅行だと思えば苦じゃないさ」

そう言って笑いかけた。
暗い顔をしている優奈を励ますための笑顔だ。

笑ってなきゃダメなんだ。笑わなきゃダメなんだ。
アイツが言ったじゃないか。

何があっても笑顔を絶やすなって
そうすれば未来も見えてくるからって

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