北へ...... 13

「雨だね」
「あぁ、雨だな」

バケツをひっくり返した。とはこの事を言うのだろう。
数メートル先も見えなくなるほどの雨に、仕方なく路肩に車を止めて外を眺めていた。
ボロい箱バンの屋根を叩く音が響く。

「壊れたりしない?」
「多分な」

歯切れの悪い会話をしながら外を眺めた。
一体どれくらいここにいるのだろう。
山の天気は変わりやすい。とは言うが、ここまで劇的に変えられてはどうしようもない。

「寒いね」
「あぁ、寒いな」

この何もできない時間が鬱陶しかった。
何かをしなきゃいけないのに。
差し迫ったわけじゃないが、鬱陶しかった。

明日や明後日。きっと、いつかは見える虹を夢見て、今はただただ、ここにいるだけだ。

今だけは......

「お腹空いたねー」
「だな。飯にするか」

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