【読書感想】2022年に読んで面白かった本3選【おすすめ】

【はじめに】

SF小説ばかり読んでいます。

【おすすめ本①】

〈NSA(上・下)〉


著:アンドレアス・エシュバッハ
出版:早川書房


○あらすじ
インターネットの発展したナチスドイツを舞台にした歴史改変SF。超管理社会で国家保安局NSAは全てを監視していた。プログラマーとして管理社会と一端を担う主人公は、脱走兵の恋人をかくまうために秘密裏にデータの改竄を行うが……?


○好きポイント
プログラミングと圧倒的監視制度。現金が廃止され、配給で得た食べ物の総カロリー量と一家の消費カロリー量を計算・比較して、その家にいるはずのない人間を炙り出していく。このプロローグで「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクも捉えられてしまう。この描写を冒頭にもってくることで、あまりに非道で非情な舞台の理解度がぐっと高まる。
今まで読んだ歴史改変SFの中でもトップクラスに面白かった。

○お気に入りのフレーズ
「平和のためには二者が必要だが、戦争をするには片方だけでいい」


【おすすめ本②】

〈プロジェクト・ヘイル・メアリー(上・下)〉


著:アンディ・ウィアー
出版:早川書房

○あらすじ
あらすじを書きたいところだが、騙されたと思って何も情報を入れずに読んで欲しい一冊。

○好きポイント
勧めるにあたり詳細は書けないが、本当に、文句なしに、非の打ち所がなく、ぶっ飛ぶくらい面白かった!
SNSで軒並み「あらすじも何も触れずに読め」と絶賛されていたので手に取った一冊。あえていうならファーストコンタクトSF。
SNSで絶賛されただけならばまだ躊躇っていたと思うが、著者が「火星の人」でおなじみアンディ・ウィアーだと知って慌てて読み始めた。(映画版のオデッセイがかなり面白くて好きなので)
オタク向けに勧めるなら、「Dr.STONE」において主人公・石神千空が大木大樹を叩き起こすまでのプロローグが好きなタイプのオタク向け。または「暗殺教室」で潮田渚が教壇に立って物語を締める幕引きが好きなタイプのオタクにおすすめ。

○お気に入りのフレーズ
「人類は何千年ものあいだ夜空の空を見上げて、あそこにはなにがあるのだろうと考えてきた。きみたちは星を見ることはなかったのに、それでも宇宙旅行に乗り出した。本当に驚くべき存在だな、きみたちは。科学の天才だ」

シンプルなアイディアだが、ばかげたアイディアともいえる。大事なのは、ばかげたアイディアも成功すれば天才的なアイディアになるということだ。どちらになるかは、そのうちわかる。


【おすすめ本③】

〈老神介護〉


著:劉慈欣
出版:KADOKAWA

○あらすじ
ある日、突然地球に降り立った老人たちはこの惑星を創造した神だと名乗った。神たちは余生をこの地球で過ごしたいという。創造主を扶養するのは人類の責任であるといい、全世界の家庭に受け入れられることになるが……
「三体」シリーズの劉慈欣によるSF短編集(全6編)

○好きポイント
表題作はもちろんだが、全6編ある短編の中で「白亜紀往事」が特に面白かった。地上を牛耳る恐竜社会と、地下で勢力を伸張する蟻の全面戦争の話だ。
単なる時代改変SFかと思いきや、紆余曲折ありながらも、最後には我々人類の知っている恐竜の絶滅と、蟻の生態に収束する物語構成があまりにも上手すぎる。

同時発売の「流浪地球」もあわせて、劉慈欣ならではのスケールのデカさは短編集といえど健在。読めば読むほどのめり込んでしまう。
「老神介護」と「流浪地球」の2冊を読めば、自分の好きなSFの傾向がきっと見つけられるだろう。地下に潜るものと、地球を飛び立つもの。侵略から時代改変、ファーストコンタクトもまさかのコメディまで。SFにおける自分の引き出しを増やしたくて読むも良し。劉慈欣の世界を全身で潜りに行くもの良し。あまりにもたくさんの楽しみ方ができてしまう至極の一冊である。

今まで友人たちに「三体シリーズが面白いから読んでくれ!」とむやみやたらに勧めていたが、SFに触れた経験が少ない人には「三体」は面白いが重すぎる。そもそもハードカバー5冊読んでくれ!というのはお勧めするのに荷が重い。が、そうは言ってもこの世界観とスケールのデカさに触れてはほしい。
そんな時に出会ったこの「老神介護」
SF初心者から玄人まで万人におすすめできる一冊である。

単純に「三体」ロスに陥っている人にもおすすめである。

○お気に入りのフレーズ
銃口をだれに向けるか、銃は気にかけない。

「万里の長城もピラミッドも、完全に失敗した巨大プロジェクトだ。長城は北方騎馬民族の侵入を防ぎきれず、ピラミッドはファラオのミイラを復活させられなかった。しかし、時間とともにそんなことはどうでもよくなった。そこに凝縮された人類精神が、人々を永遠に照らしつづける!」


【おわりに】

今年読んだ本は12/21時点で33冊。話題作の「同志少女よ、敵を撃て」も良かったし、直木賞の「テスカトリポカ」も面白かった。
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」について言いたいことは山ほどあるが、万が一このnoteを読んで手に取った人がいたら、作品を100%楽しんで欲しいのであまり書かなかった。
劉慈欣のファンになりそうだ。今年、ミーハーな気持ちで読み始めた「三体」に胸打たれ、気づけば「三体X」も読んでいた。年末発売の「三体0」も楽しみである。とりあえず年末年始は短編集「円」と絵本「火守」を読む予定だ。

世の中に読んだ方がいい本はあれど、読まなきゃいけない本はないと思っている。好きなものを好きなだけ摂取して、自分だけの城を作ればそれでいい。

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