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『カメラを止めるな!』の元ネタについてちょっと語っていいですか!

映画『カメラを止めるな!』、やー楽しかった!隣のおじさんが開始5分で「つまんね…」ってつぶやいたのに(つぶやくなよ)、終わった直後は拍手喝采してた!!良かったね!!

内容やその楽しさについては各所で語られまくっているので割愛して、わたしが気になったのはその元ネタ。厳密には「影響を受けた作品」。

途中から「あれ、この映画ってあれだよね?あの作品みたいだよね!?」と頭に浮かんだある舞台。見終わってから調べたら、『カメラを止めるな!』の上田監督ご本人が「○○という舞台に一番影響を受けました」と言ってる!ほえー!!

というわけで、ここから『カメラを止めるな!』も影響を受けた舞台も思いきりネタバレですので、見てない方はお気をつけください!(細かいやりとりやシーンや結末には触れていませんが、仕掛けなどには触れています。自己責任!)

では!!


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「元ネタ(発想の元)」といえる舞台はふたつあるようです。

直接の原案は、劇団PEACEの舞台『GHOST IN THE BOX!』。映画の上田監督はこの舞台を観て着想を得て企画し、プロットを執筆し、ワークショップで設定を当て書きに変えクランクインしたそうです。映画の2段構えの構成/構造やホラーコメディという設定は、ここからのようです。(追記:その後、著作権問題で話題になっています)

で、7月18日に映画館で観ながら私が思い浮かべたのは、もうひとつの方。上田監督が「一番影響を受けた作品」として挙げた舞台です。それは、三谷幸喜さんの劇団サンシャインボーイズの『ショウ・マスト・ゴー・オン 〜幕を降ろすな』。初演は1991年。三谷さんの最高傑作と言いたくなる衝撃と笑撃のステージコメディです。

『ショウ・マスト・ゴー・オン』の物語の舞台は、演劇公演『マクベス』の舞台袖。「さあ、今日も幕が開けるぞー」という時に、次々にトラブルが発生する。演出家は道に迷って遅刻。裏方スタッフが急に休み、代わりにお父さん(注:ド素人です)が手伝いに来たが失敗ばかり。小道具が壊れ、急きょ修理できる職人(梶原善)が妹の結婚式中に呼び出される。マクベス役の座長(佐藤B作)は今にも天国に召されそうなご老体で、注射を打ちながら舞台に立つ。しかも台詞を間違えてシーンをかっ飛ばす。作家(相島一之)は「僕の書いた台本と違う!」と怒り、なぜか「シェイクスピアが見たいんじゃぁ」というチンピラ風の男(甲本雅弘)が舞台袖で見学。音響トラブルで音が出ない。しかも、舞台監督と修羅場中の奥さんまで乗り込んでくる。各地で怒鳴り合いのケンカが起こり、人間関係はこじれる。トラブルがトラブルを生み、作品はどんどん意図しない方向へと変わっていく。しかし、それでも舞台は進む。

そうこうしているうちに、舞台上では座長がフラフラ……。ダメだ!死んだら舞台が終わる!!!

どうしよう……という雰囲気の中、ついにプロデューサー(近藤芳正)が「止めよう。責任は俺が取る」と言い切る。それでも舞台上では、客席に向かってマクベスの台詞を高らかに叫ぶ座長。舞台監督の進藤(西村雅彦/現:西村まさ彦)は呟く。「ジジイはやる気だ……」。そして、叫ぶ。

「一度開いた幕は、何があっても絶対に降ろすな!!!」

なんとか舞台上で座長に薬を打たなければいけない!そんなことができるのか!?どうする!?


三谷幸喜初映画監督作品『ラヂオの時間』の原型とも言える舞台。

奮闘する登場人物たちの支離滅裂な言動と、それによってトンチンカンながらなんとか進んでいく舞台は、めちゃくちゃ笑える。でもそれだけじゃない。彼らはプロのクリエイターなのだ。厳しい舞台監督は、途中で降ろされた役者に強く言い放つ。「お前は下手だから降ろされたんだ。芝居続けていくだけじゃダメなんだ。良いもの作らないとダメなんだ」。舞台を放棄しそうになるスタッフに叱咤する。「プロの仕事しろよ!」。そして、目の前の舞台を成功させるために家族の亀裂を後回しにし続けてもいる。そんなにまでして臨んだ舞台も、うまくいかなければ「失敗」だ。

プロとは何か。家族とは何か。わたしたちは爆笑しながら、舞台を作るプロの仕事についての舞台を目の当たりする。


『ショウ・マスト・ゴー・オン』は演劇だ。演劇はナマモノなので、リアルタイムにそこで起きている。脚本や演出があるとはいえ、どこでどんなトラブルが起こるやらわからない。観客は腹を抱えて爆笑しながらも、なんとか舞台の成功を願って手に汗握る。この舞台はうまくいくのか!? トラブルを乗り越えた時には、観客はホッと胸をなでおろし、大きな拍手が起こる。しかし次のトラブルにまた慌てる。ひとつの作品をつくるたった2時間を共有し、劇場に漂う一体感。一寸先は闇の中、今の瞬間も、舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』の舞台裏では陰ながら奮闘しているスタッフさんたちがいるのかもしれない、という入れ子構造。舞台を愛する人たちが舞台の上で一生懸命舞台のために奮闘する作品に、多くの舞台を愛する人たちが喜んだ。

『カメラを止めるな!』も同じ。映画を愛する人たちが映画の撮影で一生懸命映画のために奮闘する姿を映画館で見つめ、映画好きたちが喜んだ。それがあの日の映画館のわたし。

しかも『カメラを止めるな!』は、舞台では可能な「リアルタイムでそこで起きている」というドキドキを、前半でリアル上映を体験させ(しかも「ん?」と思えるギリギリの出来)、後半で回収を体験させるという手法で、映像ならではの面白さをぶちかました。ジャンル違いの元ネタをもとに、自分のジャンルならではの作り方にしたのは、もう、ちゃんと映画好きなんだなあ〜って思ってただただ嬉しくなる!(舞台だと「シベリア少女鉄道」という劇団もよくこの手法を使って後半回収→爆笑超カタルシスを産むんだけど、そこは生身の人間がやるからこそあえてリアルな再現じゃなくフィクションを混ぜたりするので、やっぱり『カメ止め』は100%リアルに再現できる映像の良さをめちゃいかしてて映画愛!)

これから全国・海外上映されるにあたって、できればミニシアターで上映してほしい。だって『カメラを止めるな!』は、視聴者は"テレビ"を見ている設定なんだ。画面から漂う手作り感や、それがあんまりちゃんと見えないところがリアルでいいんだ。TOHOさん。わたしの地元のTOHOさんで上映されるらしいけど、ぜひ担当者さん事前に見て、できるだけ最適なサイズのスクリーンでの上映をお願いしたいです!!そして、ぜひ、リアルに、マジで、テレビで放送してください!!!まあテレビだと「ながら見」だから前半の「ん?」部分でチャンネルを変えちゃう人が出てきちゃうかもだけど……でも、それでも見たいよテレビ局さん!!!放送権!!!!あともちろん三谷幸喜さんも!!!また舞台で上演してください!!!!よろしくお願いします!!!!!


(わーっと書いちゃったんであとで情報加筆修正するかも。とりあえず、『カメ止め』、最高!)

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