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サイゲームスの定番ソシャゲ「グラブル」の炎上が、人の心理の面白さを教えてくれている

おいらの記事をご覧いただいている方で、ソシャゲをキーワードにして閲覧してくださっている方はほとんどいないと思われる。まぁ、ゲームネタで言えば、去年の夏に神クソゲーとして一躍有名になった「ファイナルソード」について書いたことはあるのだが、あのゲームは出てくるネタがどれもこれもあまりにぶっ壊れていた為、その面白さに特化する形で書いたものだった。正直、あれをスルーなんかしてたら記事を配信することなど今すぐやめちまえ!な状況だったのだ。

そんなおいらが、またゲームをネタにすることにしたのだが、理由はもちろん面白い、というか非常に興味深い展開で炎上したからだ。
まず、yahooに掲載されたねとらぼの記事になる。


「グラブル」のイベント「サマーフォーチュン」なぜ炎上? “超太っ腹”イベントが一転、地獄絵図になったわけ
8/18(水) 12:30配信
 スマートフォン用ゲーム「グランブルーファンタジー」で先日行われたイベント「サマーフォーチュン」が炎上しています。運営側は最終的に、全ユーザーに“3等”の賞品を配布し、「この度頂いたご意見を真摯に受け止め、今後は皆様に楽しんで頂ける施策をお送りできるよう、運営一同邁進してまいります」と、当初のイベント内容の不備を認めました。
【まとめ:一時「グラブル引退」がトレンドに入るほどの大炎上に】
 8月1日から14日まで行われていたイベント「サマーフォーチュン」は、期間中のログイン日数に応じて「フォーチュンカード」(宝くじのようなもの)がもらえ、その番号によってさまざまな賞品が当たるという内容。特に1等~3等には「どんなレアなキャラでも何でももらえる権利」や「約10万円相当の課金石」など魅力的な賞品が多くラインアップされており、また3等以上の当選確率もかなり高かったことから、パッと見るかぎりではかなりお得なイベントとなっていました。
 しかし、16日に抽選番号が発表されると、外れたユーザーから「がっかりした」「モチベーションが下がった」など多くの不満の声があがることに。公式Twitterには不満を訴えるリプライが1万件以上寄せられ、ユーザーの間では、4等しか当たらなかった人を指す「4等民」という言葉も生まれたほど。Twitterのトレンドにも一時「グラブル引退」が入るなど、大荒れの様相となりました。
 スマートフォン用ゲームでは、強力なキャラクターはときに“人権”と呼ばれ、持っていれば勝ち組、持っていなければ負け組――のような扱いをされることがしばしばあります。そんな中“純粋に運のみで結果が決まるイベント”で、当たった人と当たらなかった人の格差をつけすぎてしまったのが今回のイベントの問題点だったと言えそうです。
 こうした不満の声を受けて、運営側は17日、全ユーザーに「3等確定」のフォーチュンカードを配布すると発表。しかし、ユーザーからは「対応の速さすごい」「最高」と喜ぶ声も多くみられた一方で、「ゴネ得」「(当たった人との格差は変わらないため)何の解決にもなってない」など引続きさらなる不満を訴える声もあがっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/70392d5c68747ead92bb3274aadbe5e330ef6d97


この炎上、実は損をした人間が一人もいない。しかし、このイベントで引退(=そのゲームから足を洗うことをそう称する)を宣言するプレイヤーが多数現れて、ねとらぼが記事にする騒ぎになった。このあまりにわけのわからない特異さに惹かれ、おいらも記事にしようと思ったというわけなのだ。
特にソシャゲで起きる炎上と言えば、ガチャの確率が公表値と実績値で開きがあり過ぎて、その確率でなら欲しいアイテムが当たるまでやろう、で予定以上に課金をすることになって、というようなケースがほとんどだ。そして、こういう「目に見える損」を被ったから激怒する人が多数現れ、場合によっては消費者庁に通報する所まで行って現実世界でも大騒ぎになる、が王道だ。

だが、この記事で取り上げる炎上はこういう類ではない。
うちのサイトは、ゲーム専門を謳っているわけではないので、詳細は端折り、炎上の本質だけを説明したいと思う。
まず、舞台となったのはグランブルー・ファンタジーというソシャゲだ。


グランブルーファンタジー - wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%BC


このゲームの中で、8月に「サマー・フォーチュン」というイベントが展開された。これがすごい内容で、指定された期間に毎日ログインするだけで参加できるというものだった。その為に課金する必要がない、つまり参加費は無料だった。誰も損をしていないと書いた理由はここにある。要するにこのイベント、夏休みに毎朝ラジオ体操へ行けば、カードにハンコがもらえる、に近い。そして最終日に、そのカードで抽選を受けることができる、というものだった(実際とはちょっと違うが、グラブルを全く知らない人を対象に説明をしているので、多少誇張している。悪しからず)。

さて、問題はこのカードで何が当たるのか?ということなのだが、ざっくり言えば、一等から四等に振り分けられ、四等だけがハズレということになる。だが問題は、このハズレの確率なのだ。なんと50%、つまり当たりである一等から三等へ振り分けられるのもやっぱり50%で、参加した人は皆「それなら当たりやすい、ってか俺だって当たるでしょ」と期待を膨らませていたに違いがなかったのだ。
更にこのイベントの当たりは(当然ゲーム内での価値になるのだが)現実世界で言えば三等で約9万円相当の価値がある、というものだった。もちろん一等、二等は更に高いお宝で、そんないい物が無料で当たるわけ?という空気にもなっていた、というわけだ。

そら、50%の確率で当たりなら、誰もが当たりを引く自分をイメージするに決まっている。でしょ?w

だが、8月16日に抽選結果が明らかになって、事態が急変することになった。
確率50%でも当たりを引けなかった人たちが、グラブルを引退すると騒ぎ出したのだ。理由は、おおよそ「こんな高確率でも当たらない俺って・・・」、というものだった上に、当たりを引いた人の喜びツィートや速報動画を見て、喪失感や敗北感、妬みにひねみ、を一気にこじらせただけでなく、よせばいいのに当たった人が外れた人を煽り始めたという。なんと、あっという間に「ハズレの人=四等民」などという蔑称までが流行り出したのだそうだ。こうした荒波に晒されて、ハズレた人たちが「やってられるか!」となっていったらしいのだ。

こういう流れになってしまった背景に、グラブルというゲームの特性もあったという。
2010年にリリースされた古いゲームでありながら、今でもDL数が衰えない(8月22日現在で2800万DLを超えている)「グラブル」は、手間暇をかけながらレベルを上げ、アイテムなどを集めて、という形で進めていくゲームになっている。だから長く愛されている、というわけだ。
なので、先ほど例えに出したラジオ体操は実際で言えばもっとシビアで、河川敷のランニングコースを雨の日も風の日も毎日休まず10kmジョギングし、それで押してもらうハンコを1つずつ溜めていく、という世界に近い、と考えればよりわかりやすいはずだ。
そんな毎日を過ごしてきたプレイヤーが、50%の当たりが引けない現実に膝から崩れ落ちたとしても、それを鼻で笑うことなどおいらにはできない。
しかも、ぶっちゃけイベントに参加したプレイヤーが半分は当たりに、もう半分はハズレに、とばっさり切り分けられてしまったのだ。それまでに何千kmジョギングをしてきたかに関係なく、なのだからもう・・・。これは、初恋の相手に告白してフラれるなんてレベルではないショックだろうと思う。おいらなど、グラブルに手を出していなくてよかった、と本気で思ったほどだ。これはマジで救いがない話だもの。

グラブルの開発・販売は、今年「ウマ娘」の大ヒットでこの世の春を謳歌しているであろうCygames(サイゲームス)だ。そういう状況であるがゆえに、無料で高額賞品が確率50%で当たるという大盤振る舞いができたと言える。だが、やはりバランスが悪過ぎたきらいは否めない。というか、逆に半分当たるじゃなく、参加者全員にプレゼント!までハードルを下げてしまってもよかったのではないかと思うのだ。半分当たりでも出した金額は億を下らなかったはずなので、だったら三等9万円を4万円位にすれば全員でも賄えたように思えてならないのだがな・・・。
と、思っていたら、こういう決定がされたそうだ。


【悲報】グラブルさん、炎上に屈して全員に宝くじ3等の景品を配布 なお格差は埋まらない模様(なんj)
https://fgo-babylonia-cafe.jp/%e3%80%90%e6%82%b2%e5%a0%b1%e3%80%91%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%96%e3%83%ab%e3%81%95%e3%82%93%e3%80%81%e7%82%8e%e4%b8%8a%e3%81%ab%e5%b1%88%e3%81%97%e3%81%a6%e5%85%a8%e5%93%a1%e3%81%ab%e5%ae%9d%e3%81%8f/


あー、実は、ここまで書いていなかったのだが、この形では「四等民」はまだ救われないのだよ。
というのも、問題の「サマー・フォーチュン」の抽選は、カード1枚で必ず2回抽選を受けられる形式になっていたのだ。つまり、四等民とは「2回ともハズレを引いた結果」で、逆にその2回で二等と三等を引いている強運な人もいる、ということでね・・・。紹介したページで言われている格差とは、まさにこのポイントを指している、ということなのだ。ってか、最初からそうやってろよサイゲ、だよなぁ、やっぱさぁ・・・。

それにしても、人間という生き物の不思議さを思い知らされる話だ。長くやってきたゲームをこれからも続けるかどうかの選択に、損得以外の要素が幅を利かせるのだから。
だが、逆にこういう経緯で離れようとする特性があるという点は、人事管理や営業活動に利用できるかもしれない。退職させたい社員に辞めろと言わずに退職届を書かせたい、などという時に、グラブルで起きたこの炎上の心理を応用する、なんてことが可能かもしれない、のではないかと思ったりする。

そう考えるとCyganesは、単純に顧客満足度を上げる為だけにこのイベントを仕掛けたのではない、のかもしれない。偏りまくったクジで体よくプレイヤーの淘汰を図った、あ、いや、それを裏付けるネタがあるわけではないので、あくまでもおいらの推測だが、そういう裏のテーマを抱えてのサマー・フォーチュンだったのだと言われても、おいらは信じてしまいそうだ。それほど、この展開は何かの計算があった上だと感じるのだが・・・・。


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