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建築史の学生が考えるパリのおすすめ建築18選

Bonjour! 百です。
語学留学でパリに1年もいるので、今回は私なりにおすすめ建築を考えてみました。偏愛に満ちたリストですが、名作ばかりなのでどなたでも楽しめると思います。
ガイドブックに載っているようなメジャーな建築もありますが、みなさまの旅や留学のご参考になれば幸いです。

私のパリ建築の楽しみ方

パリの楽しみ方は人それぞれですが、近代建築史を学ぶ修士学生の端くれとして、個人的な私のパリ建築の楽しみ方を語りたいと思います。

古典主義建築を中心に!

結論から言うと、パリはモダニズム建築よりも、それ以前の建築に重点を置いて巡るのがおすすめです。
パリはヨーロッパの中心都市であり、コルビュジェはもちろん、現代のモダニズム建築に繋がる多くの建築家が滞在した都市です。前川國男をはじめとする日本人建築家たちも留学や旅行で訪れています。
そんな巨匠たちが「パリの様式建築や、当時最新の建築の何を見たのか」みたいな視点を持って巡るのが楽しいです。散歩していると「なんとなくわかるような気がする~」みたいな瞬間が不思議とあります。
辰野金吾や片山東熊など、明治の建築家たちがヨーロッパでみた建築への驚きと、それを見てどんな要素を日本に持ち帰ったのか、とかも想像しながら見学すると楽しいです。

パリの現代建築って…

建築の人間にとって、パリといえばサヴォワ邸だと思いますし、教科書に書いてあることが実在するのを確認するためにも、一度は見た方がいい作品です。
しかし、旅行などの限られた日数の中で、サヴォワ邸以外のパリのコルビュジェ建築を巡るのに丸一日以上かけるくらいなら、日帰りでリヨンに飛んでラ・トゥーレット修道院に行ってください。(※ラ・トゥーレットは見学に予約が必須なので注意してください。)
これは暴論と思うかもしれませんが、一度行ったことのある人なら共感してくれる人は多いはずです!

パリの現代建築おすすめは、ポンピドゥー・センターフォンダシオン・ルイヴィトン、ジャン・ヌーベルのアラブ世界研究所フィルハーモニー(+ラ・ヴィレット公園)くらいです。その辺はこの記事を読んでいる皆さんの方が詳しいと思うので、今回省略しました。
パリはその性質故に、現代建築が幅を利かせている都市ではないので、その他の現代建築は、基本的には自分の研究テーマなどでは限り優先順位が低くて良いと思います。

ということで、私のおすすめする建築は、モダニズム以前の近代建築が中心となります。よろしくお願いいたします。

パリのおすすめ建築18選

※順番はランキングではありません。
解説は他に詳しい資料が他サイトにたくさんあるので、感想がメインです。

オペラ・ガルニエ(Palais Garnier)

設計者:Charles Garnier
竣工年:1875
住所:Pl. de l'Opéra, 75009 Paris

いきなり王道で申し訳ありません。でも本当におすすめです。
ボザール様式の暴力を空間体験できます。

オルセー美術館(Musée d'Orsay)

設計者:Victor Lalpix, Gae Aulenti
竣工年:1900/1986
住所:Esplanade Valéry Giscard d'Estaing, 75007 Paris

1900年のパリ万博に合わせて駅舎兼ホテルとして建てられました。1986年に改修されて、今はパリ三大美術館として利用されています。
基本的に2月革命のあった1848年から、第一次世界大戦がはじまる1914年までの作品を収容/展示してあります。それ以前の年代の作品はルーヴル、それ以降の現代美術はポンピドゥーが役割をになっています。

入口の階段を下って、彫刻の展示を通り過ぎた奥の右側に、オペラ・ガルニエの超豪華な模型の展示があるので、オペラ・ガルニエとセットで巡ると理解が深まるのでお勧めです。

入口を入ってすぐの中央の展示空間は駅のホームだった場所なので、広々としていて、静かすぎず、煩くなさすぎず、美しい作品を眺めながらゆっくりできる心地の良い空間が大好きです。
美術館巡りが好きなくせに、展示室の「少しでも音立てたらダメ!」な雰囲気は少し苦手なので、日本でももっとこういう雰囲気の美術館が増えたらいいのにって思っています。

プティ・パレ(Petit Palais)

設計者:Charles Louis Girault
竣工年:1900
住所:Av. Winston Churchill, 75008 Paris

こちらも1900年のパリ万博に合わせてできた建物で、現在はパリ市立美術館として機能しています。建物も展示物も本当に全てがかわいいので、かわいいものが好きな人類は全員行ってください。
プティ・パレは「小さな宮殿」という意味ですが、最初来た時は「全然小さくないじゃん…!!」とスケールの大きさに困り果てました。ですが他の宮殿を色々巡って見ると「なるほど確かに大きくはないな」と思えてくるので、感覚がバグってきてるなと自覚できるちょうどいい指標になりました。

天国みたいな中庭
鋳鉄の手摺りが美しい螺旋階段
絵画・彫刻の展示だけでなく、天井画や床のタイルも全部が見所。これぞ美術と建築のマリアージュ。

パンテオン(Panthéon)

設計者:Jacques-Germain Soufflot
竣工年:1755-90年
住所:Pl. du Panthéon, 75005 Paris

まさに教科書通りの美しい完璧な新古典主義を堪能することができます。「これが新古典主義というものなのか」を直感で勉強できるので是非。
個人的にはパリで一番美しいリュクサンブール公園が近くにあるので、周辺の散歩もおすすめです。

フランス国立図書館 リシュリュー館(Bibliothèque Nationale de France - Richelieu)

設計者:Henri Labrouste
竣工年:1875
住所:5 Rue Vivienne, 75002 Paris

世界の美しい図書館の筆頭。写真で見たことある方も多いのではないでしょうか。美術館も併設されているので、めちゃくちゃ楽しめます。
この近くにいくつかあるパサージュと、パレ・ロワイヤルへのお散歩もおすすめです。

こっちの閲覧室は研究者向けの図書カードを持っていないと入れません
こちらの閲覧室は一般開放されています。誰でもここで勉強できます。

国立自然史博物館(Muséum national d'histoire naturelle)

設計者:Jules André/Ferdinand Dutert
竣工年:1889/1898
住所:57 Rue Cuvier, 75005 Paris

Grande galerie de l'Évolution
メイン展示室

上野の科博が好きなあなたは、ここも絶対好きだと思います。展示の手法も多彩で、博物館好きな方には一見の価値があります

敷地内にいくつか建物があり、Grande galerie de l'Évolutionの方がJules André、Galerie de Paléontologie et d’Anatomie comparéeの方がFerdinand Dutertの設計になります。

Galerie de Paléontologie et d’Anatomie comparée
各所にあるアール・ヌーヴォー調の鉄のフレームがかわいい。

サマリテーヌ百貨店(Magasins de la Samaritaine)

設計者:Frantz Jourdain/ Henri Sauvage/SANNA
竣工年:1910/1927/2021
住所:9 R. de la Monnaie, 75001 Paris

セーヌ川から見えるアール・デコ調のファサードがソヴァージュのデザイン、真ん中の百貨店の部分はアール・ヌーヴォー調のフランツのデザイン、そして最近改修されたリヴォリ通り沿いのファサードがSANNAのデザインです。
古き良きベル・エポックな装飾に、現代的な操作が施されていて面白いですよ。セーヌ川を散歩する際はぜひ立ち寄ってみてください。

ギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)

設計者:Ferdinand Chanut, Georges Chedanne
竣工年:1912
住所:40 Bd Haussmann, 75009 Paris

クリスマスになると巨大クリスマスツリーが出現します。

アール・ヌーヴォー装飾のドームが本当に可愛いです!!!!絶対おすすめ!!!ドームを眺めながらカフェで一休みするのが至福の時間です。屋上に上ると、近くのオペラ座とパリの眺めを楽しむこともできます。
服やお土産がよく揃っているので、お買い物も楽しんでください。お土産に迷ったらここに行けば間違いないです。

ボン・マルシェ(Bon Marché)

設計者:Louis-Hippolyte Boileau
竣工年:1926
住所:24 Rue de Sèvres, 75007 Paris

三連続百貨店をおすすめしたのは、近代パリの歴史感じる百貨店巡りがおすすめだからです。建築の特徴は三者三様!!ボン・マルシェはアール・デコな装飾を楽しめます。
近くにある「不思議のメダイの聖母」の教会(ブルーのモザイク画が美しい)で買えるメダイユもお土産にもおすすめです。

なんと、ただの靴売場

パリ・リヨン駅(Gare de Lyon)

設計者:Denis Marius Toudoire
竣工年:1902
住所:Pl. Louis Armand, 75012 Paris2

パリ市内には国鉄が発着する大きな駅が6つあるんですが、一番おすすめなのがリヨン駅です。なんとなく一番かわいいと思う。
同じ設計者の内装が残ってるレストラン/カフェ「Le Train Bleu」が本当に夢みたいな世界観なので、ベル・エポックのブルジョワジーな世界観に浸りたい方は是非。
モンパルナス駅以外の他の駅も可愛いのでお勧めです。北駅と東駅の周辺は治安があまり良くないので夜に利用する際は気をつけてください。

Le Train Bleu

ギュスターヴ・モロー美術館(Musée Gustave Moreau)

設計者:Albert Lafonによる改修
竣工年:1985
住所:14 Rue Catherine de la Rochefoucauld, 75009 Paris

邸宅を改修した、小さいけど螺旋階段のかわいい美術館です。ギュスターヴ・モローの作品を一度にこんなにたくさん見れるなんて感動です✨
カタログの写真だけじゃ気付けない、細かい文様とかも確認できて面白いです。

絵画の解説にフランス語、英語、日本語の3つがあって「日本人のお客さん多いんだな〜」としみじみ感じました。
そういえば、コルビジェ建築にはだいたい日本語の解説があるので、何も予備知識が無くても気軽に楽しめます。

ニシム・ド・カモンド美術館(Musée Nissim de Camondo)

設計者:René Sergent
竣工年:1914
住所:63 Rue de Monceau, 75008 Paris

ルーヴル美術館の隣にあるパリ装飾美術館(←こっちもおすすめ)の姉妹館で、16世紀の邸宅を復元したものです。家具や装飾芸術の展示が楽しめます。
私はこの邸宅のプランが好きで、特に書斎が中央にあるのがポイントです。集中できそうな閉じた空間ではなく、開けた配置と構成になっています。
他にもエントランスから客間の動線や、給仕の食事の配膳の動線など、当時の屋敷の人たちが、どんな風に生活していたのかが想像しやすくてドキドキしちゃいました。お気に入りです。

ポルト・ドレ宮(Palais de la Porte-Dorée)

設計者:Léon Jaussely, Albert Laprade
竣工年:1931
住所:293 Av. Daumesnil, 75012 Paris

アール・デコ建築です。個人的にはバレ・ド・トーキョーより好きなアール・デコです。外観のレリーフとかがかっこいい。歴史博物館と小さな水族館があります。
パリの端っこの方にありますが、近くに公園もあって気持ちよくお散歩できます。


シャンゼリゼ劇場(Théâtre des Champs-Élysées)

設計者:Auguste et Gustave Perret
竣工年:1913
住所:15 Av. Montaigne, 75008 Paris

ペレ兄弟の装飾がちょうかっこいい〜!!(もうこれ以上私から言えることは無いです。)
時間とお値段的にいい感じの公演があれば是非足を運んでみて下さい。

ノートルダム・デュ・ランシ―(L'église du Raincy )

設計者:Auguste Perret
竣工年:1923
住所:83 Av. de la Résistance, 93340 Le Raincy

建築の教科書でみんなが1度は見たことがある建築。流石の一言。
ステンドグラスがとても綺麗で、私の写真じゃ全然伝わってないのが悔しいです。
パリ市内の教会を様々巡った後にここに来ると「神様と向き合うのに装飾って本来そんなに重要じゃなくて、もっとシンプルでいいんだよな??」という、祈りの本質を気付かせてくれるような宗教建築。
私が行った時は、小さなお葬式が始まって「こんな綺麗な所で人生の最期を迎えられるなんてなんて幸せなんだろう…」と一瞬キリスト教入信を考えたくらいでした。


ピカソ・アリーナ(Arènes de Picasso)とアブラクサス集合住宅(Espaces d'Abraxas)

設計者:Manolo Nunez Yanowsky/Ricardo Bofill
竣工年:1984/1983
住所:6 Pl. Pablo Picasso, 93160 Noisy-le-Grand
/R. du Clos des Aulnes, 93160 Noisy-le-Grand

治安がすごく悪いエリアなので、できれば行かないでください。
昔よりは良くなっているみたいなんですが、明らかに薬売っているんだろうな~って感じのお兄さんがいたり、「ここは写真とらないで!」とスラムみたいになってるスペースに住んでるお兄さんに警告されたりします。昼間の明るい時間にスッと行って、あまり長居しない方がいいです。

日本には無い規模感のポストモダニズム建築で超かっこいいです。
バラ窓やフライング・バットレス、オーダーの列柱などがモダニズムなデザインに落とし込まれていて面白いです。気を付けて行ってきてください。

サン・ドニ教会(Basilique Cathédrale de Saint-Denis)

設計者:19世紀Viollet-le-Ducによる改修
竣工年:1130-1284/1847(?)
住所:1 Rue de la Légion d'Honneur, 93200 Saint-Denis

パリはヴィオレ・ル・デュクの存在が近い都市ですよね。ヴィオレ・ル・デュクといえばノートルダム大聖堂だと思いますが、火災の復興工事中で私は見れたことがないので、代わりにこちらを推薦します。
こちらも周辺の治安が良くないので、周辺の街歩きもほどほどにした方が良いです。

最後に

雑な建築紹介をここまで読んで下さりありがとうございます。竣工年とか間違えてるかもしれませんがご容赦ください。ご指摘いただけたら修正していきたいのです。
18選って多かったですか??
私のグーグル・マップのパリに400カ所以上刺さっているピンの中から厳選し、内部公開していて訪れやすい場所をピックアップしました✌
凱旋門行って、エッフェル塔を見て、ルーヴル美術館とかを巡ってパリ観光を一通り楽しんだけど、時間が余っている時などに参考になったら嬉しいです。

パリは地下鉄の治安が悪いので、散歩しながら移動したり、バスの利用がおすすめです。

次回は旅行したどこかの都市について書けたらいいなと思っています。
あびあんと~~!!


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