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25 やせっぽちの子犬

ミルクを飲ませてもらう

 次の日ジュン君はちょっとウキウキしていました。子犬の入った箱が又教室に戻されると箱をのぞき込み小さな声で子犬に話しかけました。
『今日はぼくんちだからね。問題はお父さんなんだけど、何とかなるよ きっと。それじゃ又後でね。』
 学校が終わると子犬の入った箱を抱えて家に大急ぎで帰りました。
『お母さん ただいま 連れてきたよ。』
『お帰り どれどれ どんな子なのかな。おやおや本当に真っ黒クロスケみたいね。ジュン君のおうちにようこそ。確かにこれはかなりのやせっぽち。ミルクをいっぱい飲んで大きくならないとね。』
 ジュン君はお母さんのそばに来て様子を見ています。アキ子さんは人間の赤ちゃんを抱っこするみたいに子犬を左脇に抱えて 先生が用意してくれたスポイトを使って手際よく人肌に温めたミルクを飲ませました。それから両ひざを立てた状態で座椅子に座ると 子犬の背を太ももに押し当ててしっかり正面を向かせました。そしてこれまた人間の赤ちゃんにするように優しく子犬の小さな前足や後ろ足の体操をさせたりお腹を撫でたりしました。そしてしっかりと子犬の目を見つめながらこんな事を言って聞かせたのです。
『もうすぐお父さんが帰ってくるの。そうしたらね 一生懸命しっぽを振ってお父さんお帰りなさいって言うのよ。それからどうか私を家族の仲間に入れて下さいって言うの。わかった?』
『そんな事言えないよ子犬なんだから。』
『それはわからないわよ。本当にこうなりたいとか そうあってほしいって心から願ったら 叶うかもしれないでしょ。』
『そうかな。そうだといいけど。この子学校にいる時より少し元気になったみたい。このままここで暮らせるといいね。』

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