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2 アヒルのガーコ危機一髪

夜の襲撃者

それはある蒸し暑い月の無い夜の出来事でした。
川辺近くのニシキギの繁みをお気に入りの棲み処にして暮らしているアヒルのガーコが 突然何物かに襲われたのです。両肩にのしかかられ首筋をかまれそうになりました。必死で首を大きく左右に揺らし、思いきり羽を広げようとしましたが、繁みの中にはそれ程十分なスペースがありません。逃げるようにしてその繁みから外に転げ出ると身体全体を前後左右に動かし何とかその何物かを振り落とそうともがきました。
 ガーコは羽をばたつかせ、けたたましく鳴きながら 番犬のイクラのいる犬小屋の方へと移動するのが精一杯でした。
 イクラが唸り声をあげながらガーコの背中にのしかかっている何物かをめがけて体当たりしました。そのはずみで その生き物はガーコの背中から はじき飛ばされたものの 暗闇の中から二つの光る眼をこちらに向けたまま唸り声を発しています。そしてそれは なおもじりじりと近づきつつ ガーコに襲いかかるタイミングを計っています。ガーコは急いでイクラの後ろに隠れました。イクラは鎖につながれている為思うように戦う事ができません。それでもガーコをかばいながらその敵に向かって牙をむき 唸り声を張り上げ 全身の毛を逆立てて敵を威嚇し続けました。

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