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駆け巡る…私。㉖

※注)これは、2020年から私の身の上に起こったことを
思い出しながら、それを乗り越えるまでの経緯を
書き綴っているお話です。
先の事はわかりませんが、今現在はたくさんの出来事を超えて
新たな課題と共に元気に生きています。



(2022年5月)
前回からの続き…
自分の人生に起こるとは思わなかった、いわゆる余命宣告された私。

欲しかった答えは、いつも自分が思うようには用意されてはない。

そんな現実を突きつけられるとも知らず、必死で新たな治療法ができる病院、他の医師の見解、もし治療するならどこでやる?そんな僅かな希望を見出すべく、毎日せっせと動き回っていた。

ますはPET検査を受けるべく、セカンドオピニオンも兼ねて、放射線治療で有名な病院をある先生に紹介してもらったので行ってみた。

私の場合の放射線の副作用として、腹部全体にあてるので、それが1番引っかかっていた。悪い部分が何とかなっても、何ともない別の場所に障害がでたり、そこにまた新たな腫瘍ができてしまう恐れがあるからだ。そして、何より免疫力が下がってしまう。
手術ですでに免疫力は下がっているところなので、更に下がると別の要因で危険に晒される気がしたから避けたかった。

そんな中、放射線をピンポイントであてることができると聞いた。知識のない私の心には希望が湧いていた。
うまくいけば全身治療は避けれるかも。

早速予約を取って、行った先はかなりの最新医療が揃っていて、放射線技術も高い。

まずはPET検査をして、数日後結果と担当の先生の見解を聞く。

結果はかなり厳しく、私の主治医とは違い男の先生だったのもあり、女性の厳しさとはまた違う、上から圧がかかるような厳しい口調だった。

以下が回答だ…。
①ピンポイント治療はあなたの場合はできない。
②私の見解もあなたの主治医と同じ、2択の治療法だ。
③放射線、抗がん剤治療はうちでもできるけど、身体辛いから通うのが大変ではないか?
④『どうしたらいいか?』あなたの状況はそんな事言ってる場合じゃない。温熱療法とかは全く意味なし、心の支え程度にはなってるだろうが、迷ってる場合じゃない。早く決めなさい。
⑤現実的にここに通うのは無理がある。早めに主治医のいる病院に戻って、死にたくなければ治療しなさい。

との事だった。死にたくなければ治療しろ?じゃ治療したら生きれるのかな?
だったらいいけど…。

病院に行く前よりズタボロになった自分の心と身体を引きずりながら、なんとか家に帰った。 途中、友人と話して自分を取り戻せたので、なんとか家までの長い道のり持ち堪えたが、とにかく全てが灰色で自分だけスローモーションになっていて周りが全て消えたかのようだった。
時々、ドラマを見ていて、時が止まった瞬間の映像を見ると、すごいリアルに表現してるな、なんて思いながら未だこの時の事を思い出す。

帰り道の駅で、友人に治療して治った人の本を教えてもらい、後日読んでみたりした。気持ち深海にいるかの如く沈んだ私には微かな光にはなった。

でも、その光も長くは続かない。

保険が効かない治療が圧倒的に多いのと、保険が効いても費用が高すぎて普通に考えて無理な治療だったけど、そんな話をちらっと話したら、娘の為ならなんとかすると言ってくれた母がいた。
親不孝だな全く…。そうは言ってもそこまでして生き延びたいのか?

なにより決断できない自分がとても辛かった。

その日は現実を突きつけられて、落ち込んだだけで、何も得られなかった。

立て続けに受けたMRIとPETで身体に浴びた放射線だけでもかなり身体がだるかった。

それでも帰宅して家族の顔を見たら、やっぱりまた諦めずに、そういうのできるいい病院を再度探してみようと考えた。

東京まで行けばなんとかなるかもしれん!専門の大学病院たくさんあるし、数打てばあたるかもしれん。

気を取り直して片っ端から東京にあるガンセンターや最先端医療が揃っている大学病院の相談センターに電話で問い合わせしてみた。

何がなんでも、生きなきゃダメなんだ。子供を置いてなんか逝けない。
そんな気持ちだった。

相談センターの人達はみんなプロっぽくて、親切丁寧だった。話しをゆっくり聞いてくれて、答えもかなり専門的だった。

セカンドオピニオンは、2021年に値上がりして、一回30分程度で33000円〜病院によってはもっと高いところや、延長料金まで取るところもある。
すごいビジネスだ。命かかってると普段出さない三万円なんて、普通に出してしまうよね。

そんな理由で、そうそうあそこもここもというわけにはいかない。病院の方針やや出会う先生にもよるし、次に行く病院は信頼のおけるところがよかったし、慎重に選びたかった。

なので、ある程度の事はこの電話相談センターが無料で話しを聞いてくれるし、それぞれの病院にどんな治療があるのか、病院の特色など、高額料金が発生するセカンドオピニオンに行く前に、もし色々迷う時や相談したいことがあれば、かなり使えるセンターだと思った。

とはいえ、私の場合どこも結果は同じ。
他に治療法は恐らくないとの回答。
他の部位だったら、もう少し色々な治療や薬があるのですが…。と、どこも同じ回答だった。でも、実際に先生に聞いたらわからないから、『もう一度セカンドオピニオンに行って見るのも良いですね』とのことで問い合わせも終わった。

そんなこんなしてるうちに、知り合いが某有名大学病院の部長先生を紹介してくれた。以前にも聞いた事があったし、いいかもしれない!
もう一度だけ行ってみよう。

予約を取っていざ出陣。
どこかで期待していた。もしや!と希望も湧いていた。

この時に私が考えていた希望の治療は、放射線を当てるなら、ピンポイントで狙い、できる限り癌以外のほかの部分に影響がないようにして欲しい。
抗がん剤は使用しない。の二点だった。でも、放射線を受けるには抗がん剤がセットでついてくるのがほとんどで、抗がん剤なしでピンポイントできるクリニックは保険が効かずかなり高額になる。

約1時間半電車に揺られて、早朝から行ってみたが、呼ばれて今日までの結果を見せて…30分もかからないうちに、あっと言う間に話しはあっさり終了。

こちらの先生もPETを受けた先生という事は同じだった。「そんな事してたら死んでしまうよ。お子様いるなら尚更、治療を早く受けなさい。 うちでもできるけど、東京まで通えるの?入院もできるけど、2か月とか家を空けれますか?
あちこち行くと体力も気力も使うから、何かあった時のためにも、家から1番近い主治医の先生のところでやるのが1番いいですよ。」との事だった…。

子供いるから、治療して動けなくなるのが困るのに…。 死ぬ死ぬってなんだよ…。結局どの先生もこの病は治せないんじゃないか。

『先生、素直に治療したら生きれますか?2年、いや、いわゆる5年生存率で言うと、私みたいな人で治療して5年以上元気に生きてる人はどの程度いますか?』 最後に聞いてみた。『稀にいます』との事だった。
稀…稀に…。稀に…。稀に…?
ぐるぐる頭に回転するこの言葉。
絶望しかなかった。

大都会で号泣しそうだったけど、なんとか堪えた。頑張った自分にグリーン車の券を買い。持ってきてたお茶飲みながら術後から控えていたおやつを買った。
甘いもの必要だった。発車した静かな電車の中で、食べながら号泣した。平日だしグリーン車の中は空いててよかった。

こうして、怒涛の病院探し、セカンドオピニオンの旅は終わった。

お疲れ様……私。
疲れたし…もう素直に…治療…するか…。

…次回に続く


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