【絵本野山草】(12) 花いちご／松本剪／小しやが／水河骨／かきつばた／芍薬

mominaina

2024年7月29日 14:27

花はないちご

花はなの形かたち、江戸桜えどさくらの千 ● 花せん●はなに似にたり。正中まんなかほどうこん色いろ有あり。葉ははやまぶき草くさのはに似にたり。しのだち、いばらのごとし。三月にさく。

松本剪まつもとせん

剪紅花せんこうくは、剪秋蘿せんしうら。花に色数多し。紫松本は、花の色うすむらさきなり。から錦松本は紅に白のかすりしけし。銭川松本は、からにしきよりはかすりすくなし。白八重松本は、花びら六七枚より八九枚出る。花形松本は、花びらかさねさくにいろ本紅也。五月はな有。

※ 「がんぴ」は、雁皮がんぴ。

参考：『高尚堂画譜草花之部（松本剪）』『草木栽培書（剪秋蘿）』『花道古書集成第一期第三卷再版（剪秋蘿）』『和洋草花培養法（剪夏羅）』（国立国会図書館デジタルコレクション）

小しやが

花はな、つねのしやがにて小ちいさし。いろうすむらさきなり。立たつひら白しろくうすむらさき、ぜんたい白しろもあり。葉は同をなじく小ちいさく、三月はなさく也。

水かふほね

澤蓬草たくほうさう、四月花。葉あつくつや有。葉さき尖とがり、莖くきのもときれあり。くきふとく、葉見事也。花又あつく、艶つや有。銀ぎんばい草の花をあつくしたるごとし。黄き紅べに有。紅といふも、咲さき出し黄にして、花のふけるにしたがひ紅色出る也。姫ひめかうほね有。草立至極しごくちいさし。花葉ともに同じ。又、しんくれなひといふ有。花のうちあかく、外そと黄き色なり。

※ 「しんくれなひ」は、深紅しんくれない。

かきつばた

紫燕花しえんくは。六つ出、五つ出、しぼり。四月、五月、四季さき。
花数かず多をゝし。四季しき咲さきあり。ねずみ色有。白有。紫、地ぢむらさきに白の斑入ふいりあり、鷲わしの尾おといふ。地白に紫の粟紋なゝこ、一処に入を舞鶴まひつるといふ。地ぢあいきゝやうにて、花殊外ことのほか大りん有。濡ぬれきぬといふ。白六えう有。むらさき六えう有。大をゝ八ツはしといふも、いろ、葉花すぐれて大りんなり。村雲といふは、地うすねずみにむらさきのしぼり少し入。これに六えうあり一種しゆ、摂州せつしう吹田すいた辺へんに花あり。いろ、舞まひつるのごとく、はなびら一ぱいに粟紋なゝこ入、見事也。其外、色立たてしぼり、立たちちがひ有も有。悉乃こと／＼くするに暇いとまあらず。

※ 「大りん」は、大輪。
※ 「摂州せつしう」は、摂津国せっつのくに。

参考：『和洋草花培養法（燕子花）』『芸術資料第一期第三冊』

芍薬しやくやく

四月中はなさく。数かず定さだまらず多をゝし。一重、八重、千重有。色大紅あり。大白有。薄紅うすべに、白うす、紅、そこ白内紅有。大葉、中葉、うす葉、白うす葉あり。底赤そこあか有。中の香にほひに大白有。大黄、大白、銀しでといふ。大黄、金しでといふ。中ちう葉、ふち黄なるをにしき立といふ。又、牡丹ぼたんに似にたるを牡丹立たちといふ。只たゞ、にほひみじかく小ちいさきを上といふ。大なるを下といふ。又、中心まんなかに実み、牡丹のごとく三つ立たち、五つ立たち、地ぢより芽出めいで、色赤あかく長たけのびること、二三尺なるをよしとす。葉枝ともに、をも木にひきそひ天そらへ立たつ也。葉に三の枝有。九葉、七葉、五葉、三葉有。亦、末すへを五葉にして、元もとに二葉両方むかひあふたるあり。

芍薬しやくやく生しやうず　二中岳ちうがく川谷せんこく及をよび丘陵きうれうﾆ　一今いま處處しよ／＼有あり　レ之これ
准南者わいなんのもの勝まさる
春はる生しやうず　二紅芽こうがを　一作なす　レ叢くさむらを
莖上けうじやう三枝さんし五葉ごえう似にて　二牡丹ぼたんに　一而狭長けうちやう高たかさ一いち二尺にしやく
夏なつ始はじめて開ひらく　レ花はなを有あり　二紅白こうはく紫しの數種すしゆ　一
子み似にて　二牡丹ぼたんに　一而小すこし●●秋時しうじ采とる　レ根ねを　レ
根ねも亦また有あり　二赤白せきびやくの二色にしき　一崔豹さいほうが古今注ここんちうに云いはく
芍薬ﾆ有あり　二二種にしゆ　一有あり　二草さう芍薬木ぼく芍薬　一
木ぼく者は花はな大而をゝいにして色いろ深ふかく俗ぞくに呼よんで
為するは　二牡丹ぼたんと　一非也ひなり。

一名いちめいは何離かり、一名は白朮びやくじゆつ、一名は餘客よかく、一名は犂食りしよく、一名は解倉かいさう、一名は鋌せん。

筆者注　●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字･誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介／免責事項」をお読みください。📖