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【京都歳時記】十二月遊ひ 正月

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上


去年こぞ今年ことし と 一夜 をへだてて、きのふに  けふは  かはらずとおもへど、春たつ空は、心からのどやかなり。四方の山には、かすみのあし  青山のかしらをふまへて  立あがり、鶯のこゑも  うれしげに  のきばちかく聞ゆ。日影も  うらゝかに、垣ねの草も  もえ出るほど也。梅の匂いも、いにしへをおもひ出る  よすがとなれる。

大路のさま、松たてわたし、家々のしめかざりも、いみじく  うちみえて、内には、はうらいの  山をかざり、つるかめに  ことぶきをなぞらへて、千代よろず世を  いはふとかや。

さだまれる事とて、おとこ  女、われもわれもと  出たち、家のかどに  物申て、礼儀ただしきも、又をかし。あかつきより、こゑうちたてて、めでたき  わかえびすを  いはひ出さむ。千町万町の、とりおひ  さゝらを  すりて、福徳をいはふ。

都かたには  きか●、あづまのかたには  えびすかきといへるものの、一ちやうの弓をもつて、あまつしたの  おさまる御代をことぶき●  とし玉とかや。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上

命をのべて  すゑもさかふる  あふぎをうるも  いかめしう、よは  はるこゑ  きこゆ。子どものむれ出て、玉をとばしあそぶも  さらなり。

七草のいはひごとにては、十五日より  うちつづきて、大内より賀茂か●  かのとうとおほんの  まつりもあり。廿日は、ぐそくのかがみびらき、武家のいはひは、ひたすら  けふに  あるものをや。


  春きてはいくかも  すぎぬあさ  ごとに
       うぐひすきぬる  里のむらたけ


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上



福寿草
Photo by mominaina



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