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【京都歳時記】十二月遊ひ 五月

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上


さつきの  はじめの  五日は、民の家々の  あやめふく日にて、なつ疫気えきき をはらふ事は、今日はことさら、賀茂のくらべ馬  深草の神事にて、人みな袖をつらね、ぞよめき立て行て、みる事すでに  はてて●るさのほとこそ  けうとけれ。

わらはべどもの  かりそめに、ゐんち  といふ事し●しく、たがひにたたかひとみて、手がらにもあらぬき●をか●ふり、命をすつるも、をろかならずや。

此日、雨のふるものこりおほし。もろこし黄帝の時に、蚩尤しゆう といへる  てうてきを  ほろぼせしためしより、今につたはりて、家ごとに  のぼりをたて  かぶとをかけて、天下泰平のありさまをしめすを  のぼりなんとも、しとどにぬれて、人も  かさうちさして  ゆくゆくみるも、又をかし。

楚  の  屈平原くつへいげん  がことよりはじまりて、けふは  茅巻ちまき  を  いはふとかや。


 まきの戸をたたく くひなの明ぼのに
    人やあやめの のきのうつりが


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上



花菖蒲
Photo by mominaina



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