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ランダムドットステレオグラムからのストループ課題

大学学部生時代、私の所属していた心理学研究室には、強い感じの先生が二人いた。

一人目は、もう卒業した先輩に皆の前で「あなたのIQは低いと思うんですよねえ」と言い放ったというダンディな逸話を持つA先生。どこか上の方の空間を見て話す癖があって、それがまたこわい。

その先生の初めての授業。皆がピリッとしていた。
その日、各人に言い渡された課題は、ウソだろ…って分量の英語の専門書の一部をそれぞれ読んできて、パワポで皆に発表するというもの。私も多分に漏れず、ウソだろ…って顔をしながら英語を読んだ。
(今参照してみたら、「ユレスの意味わからん論文」っていう名前でデータが保存されていた。正直でよろしい)

数週間後。満を持して、自分の番。軽く震えながらも、精一杯の発表をした。

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このテンションのパワポが42枚。多いな。初々しい。
(そして当時はギリギリ理解していたはずだが今やもう意味不明。2年の専攻入りたてのヒヨコたちに、これはふっかけてるでしょA先生)

渾身の発表が終わり、A先生が発した第一声は信じられないことに「私、これ内容知らないんですよね」だった。

…え?「だってこれ貰ってないから。発表する範囲の、英文のコピー」

え?え?「一週間前にポストに入れといて貰わないと」

え?知らないけど?そんな暗黙のルールあったの?ていうか暗黙じゃないの?もしかして最初にそう説明されてた?うそ?ていうかみんなそんなことしてるだなんて一言も言ってくれなかったじゃん教えてよ意地悪〜!

「いやさすがに貰わないと私だって分かりません」えーマジかよ全力投球したのに。ていうか課題出したんだから全部読んでると思うじゃん…先生本持ってるじゃん…なんで…

「で、聞きたいんですけど、ここのレース状っていうのはどういうことですか」
「あ、えっとそれは、こう、上下に奥行きが出て見えるということで…」
「そのとおりです」
「え」
「そういうことなんですねえ(いつもの遠い目)」

オイオイオイオイ!?!?分かってるじゃん先生分かってて聞いてるじゃん!?!?なんなのこえええええよ!?!?!

「…」

え、ていうか私、質問で串刺しにされる覚悟で来たのに、先生、「前もってココやりますので読んでおいてくださいましのお手紙渡されなかった上に私が内容理解してることが分かったからもう良いや」みたいな顔しちゃってんじゃん…。

え、これで終わっていいんですか?いいんですね?なんか拍子抜けしちゃったな…全力でやったから、むしろお手紙渡さなかったのが悔やまれる…くう…

みたいな感じで終わった。変な汗だけが残った。
以上がA先生との初試合。



二人目はB先生。こちらも、某先輩の発表に対し、「みんなこの発表の意味分かるのー?僕わかんなーい!」って堂々と言いのけたナイスガイ。
その先生との初試合。
ではなく、その某先輩とタッグを組んだときの話。

その先輩とタッグを組んだのは、コース全員が参加する授業。つまり、コースの先生4人全員が参加する。そこでは、毎回生徒が英語論文の内容をパワポで発表し、先生たちの質問攻めにあう。そして時々炎上する。

当時、コースに所属してすぐだった私達ひよっこ2年生は、まずは3年生とタッグを組んで発表の練習をすることに。
その、一人目の私の相棒が、件の某先輩だったのだ。正直、ちょっと不安だった。そもそも私自身、こういうものはソロプレイがいい。スポーツだって集団ものは苦手だ。長年続けていたテニスも、ダブルスよりシングルスの方が好きなくらい。

某先輩は柔らかい感じで人当たりが良く、コミュニケーションに問題はなかったのだが、なかなかギリギリを攻めるタイプだった。前半と後半に分けて各々資料を作成し、最後は先輩が仕上げるという役割分担だったのだが、結局、前日の夜になっても資料は完成しなかった。

心配しながら「大丈夫ですか」とメールを送ると、「無理だったら心中ね♡」とのメールが返ってきた。ちなみに某先輩は男性である。ちょっとかわいい系の人なのだ。かわいさで私は乗り切れたとしても、4人の教授陣には通用しないよ先輩…と頭を抱えながら、浅い眠りについたのを覚えている。

翌日も、直前まで修正を入れた。後輩の私が言うのも何だが、たしかに先輩の文章は少し分かりにくい。分かっていないのに書いているのが滲んでしまっている。私は、知らない・分からないワードは使いたくない、分からないことは言いたくないタイプの人間なのでかなり気を揉んだ。

発表後の質疑応答では、先輩が後輩より前に立たねばと某先輩が全面的に答えてくださったのだが、緊張しながらも真正面からぶつかっていきたいタイプの私からすると、とにかく何かそれらしく答えようとする先輩の汗だくの後ろ姿に、「先輩もう休んで…」と言いたい気持ちだった。なんて生意気。

しかしながら、心中ね♡と言いながらも矢面に立たんとする先輩の努力のお陰で、その発表は炎上することなく無事乗り切ることができた。



というわけで、以上が私の心理学研究室の初めての発表でした。

ここまで書いて伝わっているかと思いますが、幸い私の発表スタンスは研究室の先生方と相性が良く、その後も、炎上を「見る」ことはあっても自身が灰になるということはありませんでした。自慢か。いや自慢ではない。私の自慢ではなくて、先生の自慢。だってうちの研究室の先生たち、かっこよくない?すごくいい先生だったんですよ。キレキレで。いやほんとキレてたな。

もちろん、卒論のゼミ担当の先生は、A先生でもB先生でもない、C先生に師事しました。だって怖いし。

C先生はね、優しいんです。なんせいい人。いやまあA先生もB先生もいい人なんですけど。C先生はずば抜けてる。
女性だからって、先生の部屋で話し合いするときはドアにカップ麺挟んでドアを締め切らないようにしてくれるし、他大の他分野の院に行って路頭に迷っていた私を救い修論まで面倒をみてくださったあげく、結婚式の主賓スピーチまで引き受けてくださったくらい、優しい。あと東京へ行くとき、神戸牛をご馳走してくれた。掛け値なしの優しさ。

またいつか、C先生の話もしたい。
とにもかくにも良い先生揃いで、恵まれた学部生生活でした。



素敵な波羅さん(波羅さんって打つとき、いつも六波羅探題と打つのは私だけでしょうか)のこちらの企画に参加します。

「初めて」って案外難しいお題でした。

ありがとうございました!


いつもありがとうのかたも、はじめましてのかたも、お読みいただきありがとうございます。 数多の情報の中で、大切な時間を割いて読んでくださったこと、とてもとても嬉しいです。 あなたの今日が良い日でありますように!!