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値引き交渉のキラーワード 〜我が家のばあい〜

先日、車を購入するために夫婦で値引き交渉に挑んだので、その記録を残そうかと思う。使えそうなワードがあれば、どうぞ持っていってください。

ちなみに我が家は、夫「買いたい人」・妻「買いたくない人」の配役でいきました。善人役の夫と、悪役の私。配役がぴったりすぎて、互いにほとんど素の状態、ナチュラルに職務を全うしました。

【1日目】

まずは試乗。
娘が蹴って汚れたシートは、しっかりウエットティッシュで拭く。心象が良いに越したことはない。念入りに拭く。

続く商談。
とりあえず夫に場を温めてもらおう。なにやら、オプションの一覧表を出して話をしている。難しい。難しいことは考えたくない。瞼を閉じて、会話を聞き流していた。

「このオプションつけるなら、このランク(ハイグレード)になりますね〜」
「あーなるほど。確かにそうですね」

ん?? なるほど??
いや待て待て待て。いい感じに丸め込まれとるやないかい。

ばっちり目が覚めた。

『え、でも、○○(ライバル企業)のほうなら、このオプションは単品でつけられるんちゃうん』

ここで、夫に文句タラタラ面倒くさい妻、出動。早々にライバル車との比較を持ち出す。
「あー、まあそう、かな…」
ナチュラルに困る夫。満点。

しかし、そのオプションはどうしても欲しいものだったので、いったん話をそのまま進めていく。そういや、オプション込み込みで話をしたほうが良い、って夫も言ってたしな。再び目を閉じ…ようと思ったらオプションの確認を求められた。ぐえ。

『うーんと、全部いる…あ、これはいらんかな』

最悪無くても妥協できる、数万円のオプションを取り下げる。もちろん、金額が定まったあとにねじ込むためだ。

改めて見積もりをだしてもらう。

うーんこの金額か…、と夫婦で唸り、時が止まる。営業マンは黙っている。そりゃそうか。値引きなんて、営業側から切り出すもんじゃないわな。夫も切り出しにくそうにしてるし、ここはいっちょ私が、アホな感じで切り出そう。

『あの。こういうのって、安くなったりしないんですか?』

アホすぎる。真っ直ぐな目でなにを尋ねとんねん。でもアホになると言いやすいことって、あると思う。

できますよ! と応じる営業マン。「今、こういうキャンペーンをやっていて、〜円お値引きできます」とチラシを見せてくれる。なるほど〜! と言いながら、営業マンの名刺を盗み見る私。

『おお〜! すごい。ありがとうございます。でも…これって、言ってしまえば社員誰でもできる値引きだと思うんですよ。〇〇さんの権力で、もっと安くできたりしません?』

営業マンがね、ベテランぽい年配のおかただったんですよ。なので、「権力」というワードをチョイスしてみました。しかも、基本的にひとの名前を覚えられないつるつるの脳だけど、このときばかりはちゃんと名前を呼んだの。えらい。

ポイントは、嫌味なくサラッと言うこと。

これにもあっさり、できますよ! と応じる営業マン。とはいえ一向に具体的なことは言わない。

…なるほど? 

どうやら、ある程度の値引きをする覚悟で話をしているけれども、だからといって絶対に自分から金額は言わないし墓穴は掘らない、というスタンスらしい。

横で聞いていた夫のほうが、気まずそうに弁解する。

『その…僕は基本的に買いたいんですけどね、彼女のほうが、どっちかというとコスパ重視で』

ここで配役説明。ナチュラルに困った感じの夫。予定通り。素晴らしい。

そうなんです。夫は車を買うのにワクワクしてる、健気な子なんです。値引きで金額にうるさい妻を黙らせて、車を買わせてあげてほしいナ。

『○○万円切ったりはできないんですか?』

営業マンがいっこうに具体的な金額を言わないので、こちらから具体的な数字を切り出した。もちろん、アホの顔で。これくらい引いてほしいな〜というラインよりも、少し安い、ちょっとだけアホな金額。

直球ストレートで一気に踏み込んだ私に、夫すら動揺を隠せない。マスク越しにもわかる苦笑いをしている。

営業マンも、「いや、それは…!」と、文字通りのけぞっている。やはり無理かと思われた…、が。

うーん、と悩んだのち、「じゃあ、○○万ちょうどでどうですか!」との声があがった。

マジっすか。

いや充分じゅうぶん。「〇〇万円切ってほしい」というのは、「〇〇万円にしてほしい」とほぼ同義だ。心のなかでガッツポーズをする。

リアクションとして、「んー、△△万(そこからさらに少し引いた金額)は厳しい…?」と笑いながらぶっこんでみても良かったな、と後から思ったが、そのときは普通に嬉しくて「あー…ありですね」みたいなことを言いながらヘラヘラしてしまった。

おい気を抜くな。

『あの、できたら、その中にこのオプション2つをつけられたりしません?』

すかさず夫が、先程引っ込めたオプションをねじ込んできた。ちょっと早い。が、時間も押しているので仕方ない。私も、「あ〜、だったら嬉しいですね!」と囃し立てる。

「いやそれはちょっとキツイ…!」

悲鳴をあげる営業マン。どこまで本心なのかわからないが、この様子だと、今日のところはこの交渉で手を打つのが良さそうだ。

う~~~んと唸って、営業マンがカタログとにらめっこする。そして、しばらく考えてから、「2つのうちの、1つだけでいいですか」と差し戻してきた。こちらはあったら便利だけど、こちらはなくても良いんじゃないかと思う、ということらしい。

あれ…?
わざわざ根拠を示してくれて、しかもこちらの都合も真剣に考えてくれて…。もしかして、けっこう良い人なのでは…?

残念な顔をしつつ、でもありがたいですと言ってその条件で手を打った。

すると、「じゃあ」といって営業マンは、「この金額で上席と相談してみます。ただ、『今日決めて貰える』ということならOKもらいやすいんですよね」と、定石:「即決のプレッシャー」をかけてきた。

当然、我々に応じるつもりはない。

「ちょっとそれは、他社でもアポを取ってるので…」と渋る夫の横から、怖い妻から怖い一言が飛ぶ。

『まあ、(即決したら)夫婦関係は悪くなりますね!』

そういうのは一旦持ち帰って一旦揉むことに決めてるので、と、腕を組みつつ笑いつつ、怖い宣言をする妻。心なしか声がでかい。

正直、これがもし若い営業マン相手だったら言わなかったと思う。ベテラン営業マンだったからこそ、「そいつは確かにまずい」と思ってくれそう、という期待があった。

加え、「今後の(購入後の)お付き合いのことまで考えてくれているかどうか」もこれで図ることができる。「夫婦関係なんか知ったこっちゃねえ、はよ即決しろ」という態度に出るのか、否か。

果たして。

その一言に、ベテラン営業マンはひるんだ。そしてすぐさま、「わかりました、じゃあ今日は無理だけどってことで、掛け合ってきます」と席を立つ。

…あれ、なんか、良い人じゃない?
この人から買いたくなってきたぞ。
安くで。


【2日目】

日を改め、「今日決めるつもりだが、そんなことはおくびにも出さない態度」で交渉に挑む。車のグレードを変更しつつ、前回提示された割引額よりもさらに高い割引を目指す。それが今日のミッションだ。

序盤。
本日も、場を温めるのは夫の役割。そして本日も、私は文鳥のように目を閉じる。値引き交渉以外の難しい話は、つるつるの脳が受け付けない。

しばらくしてようやく本題に入り、「やっぱり車のグレードをこれに変えたい」という話をし、再度、見積りを出してもらう。

材料が出揃いました。私の番。

『○○さんには引かれると思うんですけど。いったんそちらの事情抜きで、こちらの事情だけで考えたら、〜円なら即決なんですよね』

目標額に持っていくためには、それより下の金額を言わなくちゃならないため、今日も引き続きアホな金額を提示する。アホすぎて、営業マンに「その金額なら私も買いますね!」と笑われる始末。

そして、「この金額ですけど、ローンにしたらそんなに負担には感じないと思う」とまで言われてしまう。

むむむ…固い。
今日は固いのか? 
もう負けてやらないぞ、と心に決めて来たのか?

雲行きが怪しいので、早々に仕掛けることにした。

『こういうのは、ご縁とタイミングだと思うので』

本稿において、個人的にこれが一番のおすすめワード。

ご縁があれば買うし、ご縁がなければ買わない。この姿勢を貫き、かつしっかり印象づけるのが大切だと思う。

満足いく値引き額を提示されたらそりゃあ、「あら、もしかして、これがご縁ってやつなのかしら? 今が買いどきなのかしら?」と思うし、ご縁があるように動いて欲しいナ…ってなところ。

『まあ、大きな買い物なので、夫に後悔はしてほしくないなと思っていて』

まだまだ畳み掛ける。

言うてね、こんな鬼みたいな妻ですけれども、夫に満足の行く買い物をしてもらいたい気持ちはあるんですよ。夫の願いを叶えないこともないんですよ。値段しだいでは。

「そうそう、私もね、悔いの残らない買い物をしていただきたいと思っていて」

営業マンが乗っかってくる。おっと風向きがそちらに。

「そうなのよ、やっぱりグレードをこれにして、オプションこれにしたいのよ」

夫もこれに乗じて、調子の良いことを言う。いいぞいいぞ。打ち合わせ通り、無邪気な振る舞い。ほぼ素の夫だ。

そして私が夫に言い放つ。

『ただ、いちばん後悔せえへんのは、なんも買わへんことやけどな!!!!』

なーーーにいってんですか。
なにいってんですか?????
白紙の可能性もありますよ???

我々はね、焦らなくて良いんです。ご縁がなければ、買わないんです。このうるさい妻を黙らせられなければ、夫は買えないんです。そういや今、決算期でしたっけ? でも、我々のほうは焦らなくて良いんです。

一連の会話で敏感に何かを察した営業マンは、「ちょっと確認してきますので」と裏方に引っ込んだ。

さすがベテラン。話が早いワ。

帰ってきた営業マンの手には、電卓があった。やったぜ、本気だ。「電卓出てきてからが本番」とは、関西人が小学校に入って一番目に教えられる言葉である。

「いくらがご希望でしたっけ」
「〇〇円…は無理そうなんで、△△円かな」
「✗✗円でどうですか」
「うーーーん。じゃあ、このオプション込みで、✗✗円ってのは」
「いやそれもタダでつけるわけには」
「でも、△△円にしたいんですよねえ…」

とにかく目標額に近づけたいんです、オプション込みなら納得しますの姿勢で頑張ったような気がするけど、正直、ここからの会話はほとんど覚えていない。

だって、お腹が痛くなっちゃって。

それでも、「ここが正念場…離席してはならん」との思いで交渉を頑張っていたら、気づけば✗✗円に大物オプションをねじ込むことに成功し、その他のオプションも1つつけてもらえることになっていた(当初の目標達成)。

たしか、大物オプションをねじ込んでもらえることになり、さらに普通オプションを追加できないか打診する際には、

『いくら私でも、相当ご尽力いただいてるんだなということは、分かってはいるんです』

だからまあ厳しいとは思うんですが、これ(オプション)をつけられないかなと思いまして…みたいな話し方をしたような気がする。

値引かれて当然という態度はしてはいけない。頑張りが伝わらない相手に、頑張ってあげようと思う人間はいないもの。

それを聞いた営業マンは、別のカードを切ってきた。いわゆる、

「うちで、この自動車関連サービスに入会してくれないか」

というやつだ。件数を稼げたら嬉しい、とのことらしい。率直で好感が持てる。しかし、これまたつるつるの脳には難しい話なので、ここはクレカのポイント還元率を比較するのが趣味な夫に全てを任せ、私はまた、半分目を閉じた。

夫はきっと、ここでサービスに入会するのが損か得か、あるいはどちらでもないか、を慎重に検討するだろう。そしてきっと、世話になったぶん営業マンの件数稼ぎに貢献して差し上げたいとも思っていて、その落とし所を探すのだろう。

そういった部分、うちの夫は私なんかの百倍、いや千倍秀でている。

そんなわけだから、夫が「これとこれについてはとりあえず入会するかな」と言うのにただウンウンと頷いていた。


それと交換条件だったのか何なのか、営業マンは先程お願いしたオプションをねじ込むことを許諾してくれ、私は「やった〜〜」「嬉しい!」と手を叩いて喜んだ。

すかさず、夫が仕事をする。

「僕はもう、○○さんに申し訳なくなってきました…。今後の関係に響いたらどうしよう。なんかすみません」

困ったようにはにかんでフォロー。グッジョブ。

「まあこれも、いい思い出として思い出すんじゃないですか」

と笑う営業マン。
うん、間違いない。良い人だわ。


最後のさいご、契約書を作成する直前に「数千円のオプションをつけ忘れていたので、有料でつけておいてください」とお願いした。

しかし、出てきた契約書に数千円の端数は存在しなかった。いわゆる、「プレゼントで端数をきれいにしておきました」というやつだ。

できる。最後のさいごまで、できる営業マン。おかげさまでとても気持ちよく商談を終えさせてもらった。


唯一、悔いがあるとすれば、話がまとまる際に

『できれば○○さんから買いたいと、夫とも話していたので』

『ご縁があったということで』

みたいな気の利いたフレーズを言いそびれてしまったことだろうか。最終判断のときどう振る舞えば良いのか、考えるのを忘れていた。


そうして、ぶじ値切りオバサンとしての仕事を終えた私は、夫が営業マンと事務処理をしているあいだ、娘とディーラー内を探索して遊んだ。あとトイレにも行った。



以上が、我が家の値引き交渉の一部始終でした。

ちなみに、別のディーラーに行ったときに逆の配役で挑んでみたけれど、あんまりうまくいきませんでした。やはり人には向き不向きがありますね。

それに、今回うまくいった・気持ちよく買うことができたのは、なにより営業マンとの相性が良かったからだろうなと思っています。「ご縁があれば」と言ったのは作戦でもあり、本心でもあり。

ご縁があってよかった。
納車が楽しみです。


いつもありがとうのかたも、はじめましてのかたも、お読みいただきありがとうございます。 数多の情報の中で、大切な時間を割いて読んでくださったこと、とてもとても嬉しいです。 あなたの今日が良い日でありますように!!