仕事、家族、私生活。シングルマザーがMOM FoR STARに参加して変わったこと
「学ぶ」「働く」「つながる」の3つの活動からなる、沖縄のシングルマザーのための就業・協働プロジェクト MOM FoR STAR。このプロジェクトは、シングルマザーが未経験から就労し、学びながら実践経験を積み、デジタルデザイン業界で活躍できるまでをサポートすることです。
今回インタビューしたのは、2022年4月に参加した2期生のメンバー2名と、コミュニティ支援やメンバーの生活のサポートを行うしんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄の秋吉さん。MOM FoR STARに参加して感じる変化や仕事のやりがいについて、話を聞きました。
子どもの行事に参加しやすくなった
ーMOM FoR STAR に参加したきっかけを教えてください。
Tさん:
私は元々オフィスビルの清掃業をしていました。そこでオリオンビール奨学財団さんの決起会が行われており、シングルマザー支援のサイネージがあったんです。そのとき初めてMOM FoR STARというプロジェクトがあることを知りました。仕事後にネットで調べてシングルマザーの就業支援をしていることを知り、応募したいと思いました。で、すぐ問い合わせたんですけどまだ応募期間が始まっていなくって(笑)。ただ「その年も募集するのでまたご連絡します。」とのことだったので心待ちにして、応募しました。
Kさん:
私はずっと正社員で販売の仕事をしていて転職する気は全くなかったんですけど、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄のメルマガでMOM FoR STAR2期生募集のメルマガが流れてきたんです。最初はスルーしたんですけど、翌月ふと思い出して。何から連絡がきたかも忘れてしまったので、「エントリー説明会が1月って書いてあったな?」とか、記憶を遡りながらめっちゃ探しました。
ーちょうど募集のタイミングで思い出すってすごいですね!
Kさん:
当時はコロナが流行っていて、在宅勤務という働き方が広まっていった時期でした。その前の年に子どもが大病して1年間休業してたこともあり、「働き方にもう少し自由がある環境で働いていたら、病院でも仕事できたのでは?...あれ?なんか求人応募の案内あったよな?」というのが始まりです。
ーエントリー説明会はどうでしたか?
Tさん:
子どもと過ごす時間が増えるっていうイメージがすごく膨らみました。前職は仕事中に中抜けするのが難しい環境だったので、有給を使って子どもの学校行事に参加していました。でも子どもが2人いると行事がそれぞれであったりして、有給日数も限られているので「ごめん今回お母さん行けない」と言ってしまうことも。なので、子どもとの時間も増えそうな環境は良いなって思いました。
Kさん:
私は、前職の時は子どもたちを朝6時半に実家に預けていました。子どもたちはおばあちゃん家で朝ご飯、学校で給食、おばあちゃん家で夕飯。夜やっと家に帰ってお風呂という生活でした。でも私がMOM FoR STARに参加してからは、朝「行ってらっしゃい」と送り出してあげられるんです。あと、私のご飯をこの子達は今まで食べてなかったんだなって気づいて。「こんなにも変わるんだ」って思いました。この環境の変化はすごく必要だったし、もっと早く出会えたら良かったです。子どもの部活の試合にもたくさん観にいけるようになりました。
Tさん:
沖縄では、小学校1年生から部活動に入れるんです。ただ、コーチや運営に携わってる人はみんな保護者なんですよね。送迎や準備、遠征なども保護者がやります。コーチが付いてるクラブチームもありますが、費用が高くて。本人がやりたいことがあるなら、せめて部活動に入れてあげたいですが、保護者の当番も何もできないので、肩身狭い思いをさせてしまうんじゃないかと思ったりして。
秋吉さん:
子どもの体験保障は社会的にも課題になっているんです。子どもがやりたいことを我慢したり、所得によって子どもの体験に差があるというデータもあります。自分の体験したことが将来の仕事と繋がったりすることもありますよね。でもひとり親世帯では、仕事の調整がきかなかったり金銭面の問題が足かせになってしまうんですよね。
誰かに認めてもらえたり、自分でやりきれることがやりがい
ーおふたりがMOM FoR STARに参加して2年が経ちますが、実際に学び、仕事をする中でやりがいを感じるのはどのような時ですか?
Tさん:
1年目は、本当に何も知らない状態で案件に携わらさせていただいたので、対応するよう指示があったものを、自分で理解してできたときはすごい嬉しかったです。
2年目になってからは関わる案件も人も増えてきて、自分がやったものに「修正なしです」「良い感じです!」「助かります、ありがとうございます!」とか、こういった言葉をかけてもらえるとすごく嬉しいです。特にフォーデジットの人に言われると、認めてもらえたような気持ちになってすごく嬉しいです。
Kさん:
元々昭和の根性論で生きてきたので、急ぎの案件のチェックとかは、すごいやり甲斐を感じています(笑)。今までだと、そういった案件は期限あるし任せてもらえないこともあったんですけど、自分でやりきれると嬉しいですね。
Tさん:
「退勤までにあとどのくらい出来そう?」「あと何件?」「そっちどんな感じ?」とかね、Kさんが取りまとめてくれるタスクは割とそうですね。
Kさん:
「次のところ私いきまーす!」みたいに声をかけあってやってます。忙しければ忙しいほど楽しくなってくるんですよ。
Tさん:
それにつられて周りも盛り上がってますよね。
Kさん:
仕事は楽しくやりたい。ひとりで塞ぎ込んでいくとモヤモヤしちゃうじゃないですか。私はどっちかって言うと、チームでみんなと協力してやっていく方がすきですね。コロナがあけて、顔合わせて仕事するのが楽しいです。もちろん在宅勤務で子どもが帰ってきたときに「おかえり」って言えるのは良いなと思うけど。やっぱり顔を見た方が通じることが多いし、出勤したいなって私は思います。
ーお子さんが体調が悪くなった時に働く場所を「選べる」のは良いですよね。そういう意味でも柔軟な働き方ができるのは良いですね。
心に余裕ができた。日々の生活や心境の変化
ーMOM FoR STARに参加する前後で、日々の生活や心境に変化はありますか?
Tさん:
先ほども言いましたが、契約でしか働けてなかったので更新がすごく怖かったんです。切られたら次を探さなきゃいけない恐怖から解放されて、心が楽になりました。
Kさん:
今まで、仕事後も休日も疲れて動けなかったんですけど、MOM FoR STARに参加してからは、勉強したり忙しいはずなのに、他のこともやれる気持ちになったんです。例えば仕事終わりに子どもと部活で必要なものを買いに行ったり。子どもたちに対する心の余裕も増えたと思います。
パワーの原動力は「子ども」「挑戦したい気持ち」
ー秋吉さんからみた、MOM FoR STARに参加するメンバーの強さとは?
秋吉さん:
一言でいうと、みんなのママとしての強さだと思います。すでにシングルマザーとしての人生を自分で選択し、ここまできている。その覚悟であったり、自分がこの子どもたちを育て上げるんだという責任感が、社会に対する姿勢にも出ていると感じます。シングルマザーだからこそ、自分が矢面に立っていかなきゃいけなくて、強くならざるを得ない。そうやって変わっていくんでしょうね。
私自身もシングルマザーなんですけど、私、「シングルマザー」がすごく好きなんです。女性としての強さをすごく感じるんですよね。それがなぜか私自身を勇気づけるんです。私はまさに雇用機会均等法の始まった時に働き始めた世代で、当時の女性の扱われ方みたいなものを目の当たりにしてきました。だからこそ、今のシングルマザーの活躍が私にとって励みになりますし、パワーをもらってますね。
ーみなさんのパワーの原動力は何ですか?
Tさん:
子どもが原動力です。子どもがいない人生はどうでもいいくらい。子どもを育てるために頑張れるし、子どもに笑顔でいてほしいから自分も笑えるし、ちゃんと育ってるのを見ると幸せになります。
Kさん:
私も子どもですね。子どもがいなかったらもっとちゃらんぽらんだったと思います。
秋吉さん:
私は、自分の力を社会でどのくらい発揮できるのか、通用するのかを確認したくてこれまで仕事に打ち込んできました。自己実現というか、この仕事をどこまでクオリティ高く短時間でできるか、チャレンジしてみたいというのが原動力だったと思います。もちろんお金を稼ぐことで子どもに体験や喜びを与えてあげられるので、その二軸だったと思います。
これからできるようになりたいこと、やってみたいこと
ー今後チャレンジしたいことはありますか?
Tさん:
仕事面では、人がスムーズに進められるように、ちょっとでもリードできるようになりたいなって思っています。例えば、私が新しく参加したメンバーに教えたりする立場になるとしたら、分かりやすいようにマニュアルを作るとか。
個人としては、今年やりたいことのやり残しがないようにしたいです。私は趣味が全くないんですけど、メンバーのみんなは趣味がある人がとても多くて。ベリーダンスやドラム、あとトランペットとか!実際バンド活動してる人もいるんです。そういうキラキラしてるメンバーを見てるから、自分の楽しみを今年は見つけたいなと思っています。
Kさん:
フォーデジットからMOM FoR STARメンバーに任された仕事の取りまとめを、もっとスムーズにできるようになりたいです。例えば私が仕事を受け取って、どれぐらいで終わって、どうやって、どこをゴールにするか、みたいとか。あと、本当にいろんな案件をやってきていますが、まだまだはじめてがいっぱいなので、なんでもやりたい!「これ関連なら何でもできます」と自信を持って言えるものが欲しいです。
秋吉さん:
「秋吉さん進化してますね」と、このプロジェクトを一緒にやっている山川さん(うむさんラボ)にさっき言われたんです(笑)。私だけじゃなく、メンバーがまさに進化しているところに、私も一緒にいれることがすごく喜びです。でもメンバーが仕事やプライベートで困ってることやモヤモヤしているときも、その人と一緒に同じ方向から見て考えていきたい。課題とか悩みって絶対に解決すべきものではないものもあるんですよね。お話する中で一緒に悩んだり、一緒に苦しんだり。そういうのをこれからも続けていきたいです。定期的にお話する時間も設けていますが、実際その辺の世間話も多かったりするんですけど(笑)。
あと一部のメンバーには提供してるんですけど、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄ではしんどかった出来事から、からだが楽になっていくセッションをを用意していて、そういうことを提供して気持ち良く仕事ができるようこれからもサポートしたいと思います。
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