見出し画像

三位一体査読

この記事はOpen and Reproducible Science Advent Calendar 2021の20日目用です。

今回のお話は「何をファンタジー語ってんだコイツ」「現実見ろや!」「これだから素人は」などと言われるのを想定済みのものです・・・。そうした声によりもっと精緻化できればいいなあと思っています。ちなみに9月の中旬くらいにラボ内で夏休みになんかやろうぜという声が出たところ,院生等の有志が迅速に集って迅速に書きました。

前々から,通常のレジレポ第1段階原稿,倫理審査申請書,研究費審査申請書で同じような内容のものを各様式で別々に重複させて書くのが無駄だなあと思っていました。全部同じ一つの研究計画なんですよね。強調するところと粒度と様式が違うだけです。じゃあ最初から全部1つの文書としていっしょに書いてしまって,同じところで全部審査できるようにすればいいじゃんと考えました。例えばOSFにプレレジしたやつを倫理審査すればと以前言ってましたが(いろんなところで言われてると思いますが)それの拡張版です。

調べたら篠崎さんもおっしゃってましたね。モロに。

まあこうした流れの話を一旦まとめようぜってことです。具体的には,まず第1段階のプロトコル原稿が投稿されたら通常の査読者2名程度,倫理査読者2名程度を査読者プールから呼んできて,それぞれの観点について専門的に査読し,リバイズもさせます。その後,原稿が原則的採択 (IPA) となったら,グラント待ちリストみたいなのに載せられ,資金提供機関とのマッチングが始まります。提供側的には対象がIPAされているので助成した研究はほぼ確実にパブリッシュされ成果は安心ですし,既に査読もされまくってますのでよくあるヤバげな研究計画へうっかり出資してしまうことを避けることができますから,有効かつ適正な配分ができます。一応,クラウドファンディング的に個人から援助が受けられるようにも考えています。査読者は内容の学術的・倫理的側面それぞれの吟味に集中でき,さらによくある倫理審査で学術査読みたいなことをされることも避けられます(というか分担します)。何より著者は重複書類を無駄にいっぱい書かなくて良くなります。必然的に,レジレポももっと普及するでしょう。QRPsを防ぐプロセスがもはや当然の前提になっています。もちろん問題点もいろいろあります。例えば,著者の人気・威光や内容のポップさをベースとして自然発生してしまうタイプの選択と集中を避けるために,研究あるいは研究者ごとに上限額を設ける必要があるでしょう。所属機関でも絶対に審査を受けないといけない場合のルートも用意すべきなので入れています。まあ他にもこまごまとあるでしょう。

想定されるエディトリアルプロセスは以下のような感じ。細かくてすいません。

まあすぐに実現はキビシイとは思いますが,そうした方向で制度設計していく発想を持とうぜ!と提案する意味では意義があると思っています。あえて今これを導入するジャーナルが出たら絶対目立ちますよ。どっかぜひ!

ちなみにOpinion論文なので短いですけど,詳しいことは以下のプレプリントに書いていますので興味をお持ちになったらぜひ。まだリバイズ返したくらいのところなので今回出すの躊躇いましたが,まあパブリシオされたとしても同じ内容でしょう。

Mori, Y., Takashima, K., Ueda, K., Sasaki, K., & Yamada, Y. (2021). Trinity Review: Integrating Registered Reports with research ethics and funding reviews. https://doi.org/10.31234/osf.io/tx5v6

ところでこの手のOpinion的な論文は出し先に非常に困ります。ほとんどの雑誌がセクション自体を持っていないかあるいは招待制だったりします。数少ない出し先として彼オピとかよさげなんですが完全招待制なんで,私みたいな心理学最末端糞弱小構成員の意見なんか出す機会はおそらく死ぬまで存在しません(いや,これ絶対おかしいよね?コネがないと意見すら出せんのか?)。そんな折に綺羅星の如く現れたオピニオン専門誌(というわけでもないらしいが)であるAcademia Lettersは非常に興味深いのですが,これはこれでいろいろありまして・・・このオピニオン誌についてのオピニオン論文を現在執筆中です。どっかに出たらまたご報告します。まあそれを出す場所がないというループ話なんですが。

2022年5月19日更新
いろいろと裏でなんやかやありましたが,やっとパブリッシュされました。彼オピと悩みましたが,こちらの雑誌で再現性と研究公正のコレクションをやっていたためです(なぜか我々のがリストされてませんが・・・交渉中)。とりあえず夏休みの自由研究は完結です。なかなかのキツみだったぜ・・・


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?