見出し画像

生きる力が沸いてくる本のご紹介~遠距離介護の傍らに~

遠距離介護が始まり、間もなく3ヶ月。
父が余命宣告を受けた当時はいつ何どき別れがやって来るかもしれないという恐怖で、ただただ必死に会いに行っていた。

母を2年前に突然死で亡くしている。
あの時とは違う別れの提示。そしてそれが近づく悲しみを隠し、父に笑顔で会う。
切ないけれど、神様がくれた最期のひとときだと腹をくくろう。

ここ20年は子育てに明け暮れ、両親のことは田舎の妹に任せっきりだった。頑張り屋の妹の足元にも及ばないけれど、お姉ちゃんにできることは話し相手、と妹が言ってくれたので、娘として全力で話し相手になるつもり。

幸い病状が落ち着き、穏やかな日々を送る最近では、私もリフレッシュしながら過ごしている。 
父の昼寝やお風呂の最中に病院の外を散歩して東京より遅い季節感を味わったり、ご当地のお総菜をみつけて懐かしくいただいたりする。早朝の魚市場も魅力的。

そんな中、久しぶりに大好きな読書を再開。
移動のお供に、病院の空き時間に、春から何冊も読んでいる。心に沁みた数冊をこちらに。

「BLANK PAGE 空っぽを満たす旅」
               内田也哉子

両親を亡くした也哉子さんが、15人と対談する形式。遅かれ早かれ同じ状況になる未来が待っているのと、也哉子さんの喪主挨拶に衝撃を受けてからとても気になる存在だったので手にした。

「うわのそら」という言葉から始まり、お母様との思い出、ロックンロール葬、そうそうたる方々との対談、あとがきと構成されている。
私にとって心の準備になり、道標の本に出会ったような、静かな心強さをいただいた。

いつの日かすべてをくぐり抜けたのち、私はどのような心境になるのだろうか。きっとまた歩き出せる、と心のどこかに覚えておきたい。
以下、本からの抜粋。

「誰かの不在に傷を負った私は、いつしか誰かの存在に癒され、また歩きだしている。」

「空っぽは…(中略)ずっと彼らの存在で埋まっていた自分が、ようやくひとりで再出発するための身軽さだった。」

「板上に咲く」     
               原田マハ

棟方志功の妻の目線で描かれたアート小説。
ゴッホに憧れた青森の青年と、その妻の激動の人生をパワフルにかつ瑞々しく描く。2人が主役の映画を観ているような錯覚に陥るほどの文章力は圧巻。

ちょうど父の入院先の青森で、スタッフさんの津軽弁を聞きながら読み進めていたので、臨場感抜群。
臨場感ついでに、介護の合間に2人が挙式した善知鳥(うとう)神社を訪れる。静かで温かい場所。ちょうど桜の季節。エレカシの歌を脳内再生しながら歩く。

善知鳥神社

原田マハさんの次なる作品に選んだのは、生きる活力が沸いてくるという見出しに惹かれたこちら。

「ハグとナガラ」    
                原田マハ

大学時代からの親友である50代の女性2人が仕事も母の介護も抱えながら、旅を重ねて、旅を通して、旅に救われる。
日常から解き放たれることの意味を感じさせてくれ、少し先を歩む先輩の背中を見せてもらった感があり、心細さが半減し、じわじわと力をいただけた。

介護中の親への心情に痛いくらい共感し、泣けて来た。親を目前にし、葛藤と愛情は紙一重で訪れる。だからこそ疲弊しないよう、リフレッシュが必要なのだと。

「生きるぼくら」    
                原田マハ

いじめからひきこもりになった青年が、祖母の暮らす蓼科で農薬を使わない自然農法の米づくりを通して再生していく物語。

離婚、ひきこもり、認知症、スマホという現代の課題を織り交ぜ、見事に展開していく内容。途中、マハさんらしく、東山魁夷の作品もさりげなく登場し、色彩豊かな風景が目に浮かぶよう。映画化して欲しいくらい美しい描写。

生きることに疲れた若者が田舎で自然に囲まれ、温かいひとと接し、必要とされていると感じて逞しくなっていく姿に、我が家の繊細な長男と重ねて涙。長男に読むことを薦める。(きちんと大学に行って頑張っているが、心配。)

「モノが減ると運が増える 1日5分からの断捨離」           やましたひでこ

家族6人、マンションにひしめき合って暮らしている。その上、男性陣は皆180センチ越えと圧迫感しかない我が家。
モノが増え、ひとはでかい。
断捨離のBSの番組を観ては共感。

片付けの本を買っては挫折を繰り返して来た過去に別れを告げるべく、またも同じように本棚の飾りになるのでは、と恐る恐る購入。
結果は、すっかりはまり、次々モノを手放すように。家族からは勝手に捨てないでよ、と牽制される。
父の病院で読み込み、自宅に帰っては捨てるを繰り返している。

そう言えば、エレカシの宮本さんのライブ直前はいつも験担ぎに大掃除をして、抽選に不思議と当たる。アリーナ率も8割は越える。
やましたひでこさんの、「空間と時間にゆとりが生まれ、前向きなエネルギーが沸いてきて、運が増える」は本当だ。

ライブ詣でを再開するまで、地道に片付けに努めよう。そして、来週からも父へ笑顔を届けよう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?