見出し画像

家を解体し続けて見えてきた木造住宅の現実

お世話になっております
株式会社コシイプレザービングの池本です。

noteでは「暮らしを守る」をテーマに発信していきます。

今回は家を解体し続けて収集したデータをまとめたものを紹介します。
新築時に結露、シロアリ、木材腐朽等の対策の重要性が理解できると思います。

実際にこちらの記事では解体調査の様子と被害例を確認できます。是非こちらの記事からどうぞ。

シロアリ被害データ

まずはシロアリの被害データです。64棟の解体調査からシロアリの被害の場所と、横軸に築年数を置いたグラフです。

画像5

参考文献:「解体調査による木造住宅の生物劣化被害と保存処理の検討」
木材保存 2018 年 44 巻 2 号 p. 81-89
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwpa/44/2/44_81/_pdf/-char/ja

簡単な侵入経路図を載せておきます。
シロアリは基本的に床下、家の下から侵入してきます。

画像3

あれ??と思いませんでしたか??
シロアリは基本は床下から群をなして侵入してきます。
それにも関わらず、1階、2階部分、さらには屋根に相当する場所も被害を受けていますよね。

これはシロアリが床下のシロアリ予防を突破し1階、2階へと侵食した訳です。

シロアリ予防を突破したケースは、予防が施されていない、定期メンテナンスが出来ていない。

シロアリ予防の薬剤について

画像7

シロアリ予防の薬剤の効果がある築年数の若いうちは被害が少ないですが、築年数が経ち、薬剤の効果が無くなったタイミング、特に10年目以降に被害数がグッと多くなっています。

図にあるように一般的に言われている薬剤の効果は5年。それ以降は再度予防処置をしないと、「防蟻効果無し」となります。
新築から5年以降はお施主様の意識の差でシロアリ被害から免れるか否かが左右されると考えます。

腐朽被害データ

次に腐朽被害のデータです。

画像5

参考文献:「解体調査による木造住宅の生物劣化被害と保存処理の検討」
木材保存 2018 年 44 巻 2 号 p. 81-89
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwpa/44/2/44_81/_pdf/-char/ja

腐朽カビ被害も家全体に及んでいます。
ちなみに、ここで示す腐朽は主に木材のことを指します。
木造住宅には土台も、柱にも屋根にも木材が使用されています。

腐朽やカビの原因として、雨漏りや、漏水が原因です。
新築時は建材が新しいので施工ミスが無い限り心配はないでしょう。
しかし、築年数と共に防水効果を持つ各建材が劣化していきます。

各建材について
例えば屋根のルーフィングや、壁と壁の隙間を埋めるシーリング、透湿防水シート等。
劣化することで防水機能が失われ、雨漏れ、漏水の原因になります。
結果、家に入り込んだ水分により木材の腐朽を招くわけです。

それぞれ家に使用される建材にも寿命があります。それを知っておくことはメンテナンスをいつ行えばいいかの目安になります。

建材も結局は「物」です。いつか劣化し能力を失います。

ルーフィング
・・・屋根材の下に敷く防水シート。劣化により雨漏りや漏水の原因になる。耐用年数は一般的には20年程度。

シーリング
・・・
外壁ボードのつなぎ目を埋める。主に防水性能と、気密性能を高める。劣化により割れ、漏水の原因になる。耐用年数は一般的に10年程度。

透湿防水シート
・外壁の外側に施工される。湿気は通すが、水分は通さない。結露、漏水防止。耐用年数は一般的に10年程度。

漏水防止となる建材を3つ記載しました。耐用年数はあくまで一般的なもので、メーカーや価格によってその耐用年数は前後します。
安い物を使えばイニシャルコストは抑えることができますが、その分耐用年数が短く、メンテナンス頻度も上がってきます。その分お金が重なってきます。

最初に良い物を長く使うことが最終のトータルコストは安く済ませることが出来ます。

話を戻すと、腐朽やカビは温度/水分/空気/栄養の4条件が揃うと発生します。
水分を防止していた建材が劣化すると即座にこの4条件が揃うことになるでしょう。

画像4

建築基準法

次に建築基準法に触れていきます。シロアリ対策、腐朽対策についてこのように記載されています。

「柱、筋かい及び土台のうち、地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、シロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。」:建築基準法49条参照

この1mというのがポイントです。

画像9


では、シロアリ、腐朽被害のデータと見比べてみましょう。
1m以上の高さ、むしろ家全体の範囲で被害に起こっています。
つまり、建築基準法に従って1m以内だけの措置では不十分ということです。

 実は、建築基準法49条は防腐防蟻措置の「最低ライン」を記しているだけです。
せめてこのラインまではやってね後は工務店やハウスメーカーにお任せ!といった感じです。(ここまで雑ではないですが、ニュアンス的にはこんな感じ。)

解体調査を10年以上続けているからこそ見えてきた事実です。
2階にまで及ぶシロアリ被害(*必ずではありません)、そして漏水、雨漏れ、結露のリスクを考えると、建築基準法の「1m」までの措置では不十分と考えています。

結論

私たちの結論として家の床下を含む、外周の構造に防腐、防蟻措置を施す必要があるということです。

それはやり過ぎという意見は勿論あるとは思います。お金も措置領域が広がるにつれて掛かってきます。
そういった方でもせめて床下一階部分の構造には予防を施していただきたいです。

被害をなくすことは、家の価値を下げにくくし、寿命も伸ばします。
リフォームの際には価格を抑えることが出来、中古物件として売りに出すときも有利に働いてきます。

何より住む人の安全と快適性を損なわないのも大きな理由のひとつです。

今回は解体調査の結果から、如何に新築時に予防措置が重要か、メンテナンスが大事かを説明させて頂きました。

解体調査の結果が全てとは思いません。しかし、こういった現実があるということは頭の片隅にあると家づくり、家を守るヒントになると信じています。

今回は以上になります。失礼します。お疲れ様でした

余談

私も何度か解体調査に参加させて頂いていますが、普段見えない構造のところが見えてくるので興味深いものです。

興味のある方は、解体現場は無理と思いますが、構造見学会等参加してみるのは良いかもしれません。

工務店や、ハウスメーカーの見えない拘りが知れたりするのでオススメですよぉ。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?