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旅路と読書

 処暑を過ぎようやく秋の気配が、と言いたいところですが依然死にそうな暑さが続きますねこんにちは。猛暑の京都を離れ旅先からお送りしています、木曜会会員の前川といいます。去年から在籍はしているのですが、今回初めてnoteを書くことになりました。

 まずは木曜会の活動を少し。木曜会は2023年度新人号が無事に完成し、現在夏休み中です。この新人号は芥火27号とともに、9/11の文学フリマ大阪で頒布予定ですので、ぜひぜひ木曜会のブースに足を運んでいただければと思います。今頃部員の皆は秋号の執筆に勤しんでいることでしょう。私もいい加減書き始めないとなあと思いつつ今に至ります。

 さて、長い夏休みですから執筆ももちろん読書もしたいところです。皆さんはいつもどこで読書に勤しんでいらっしゃるでしょうか。読書はいつでもどこでも良いものですが、ここでは読書に最適な場所の一つに旅の道中を挙げたいと思います。列車に揺られてのんびりと読むのも良いですし、バスのちょっとした時間でも驚くほど読書が捗る気がします(それで降り損なうこともしばしば)。冒頭で旅先からお送りしていると言いましたが、私はついさっき2時間ほどの空の旅を終えたところです。飛行機も電車やバスに負けないどころか、個人的には陸路以上に読書が進む空間だなと思います。周りに雑念が少ないので集中できること間違いなしです。じっくり小説を読むのも良いものですが、今回の旅路では歌集をめくってみることにしました。

 今回読んだ歌集、東直子さんの「青卵」を紹介したいと思います。「青卵」は「春原さんのリコーダー」に続く、東さんの第2歌集で491首もの歌が掲載されています。491首と聞くと膨大な量な気がしますし実際かなりの量ではあるのですが、不思議とするする読めてしまいます。東直子さんの歌は柔らかくて不思議な感じのするものが多く、青卵はそうした東さんの感覚が特に出ている歌集だと思います。東さんの代表作の一つ、「好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃える湖」もこの歌集に収録されています。著作権の関係上あまり歌を挙げて書いていくのはよろしくないような気がするので、個人的東直子さんの推しポイントを挙げていこうかと思います。
 指のあいだがとけそう、だったり、ひまわりに擬態してみたり。東さんの詠む歌は良い意味で現実みがないというか、夢の世界を描いているような感じがします。具体的な情景は思い浮かべられないのに、なぜか感覚は伝わるというか。そんな歌が多くて、歌集を読んでいる間は現実とは違うところに行ける。この独特の世界観は東さんの最大の魅力じゃないかと思います。
それからひらがなの使い方。通常なら漢字表記にするようなところをあえてひらがなにするというのは、よく見られる手法なのですが、東さんはその使い方がずば抜けて上手な気がします。東さんの柔らかな世界観とひらがなの相性が良いと言うのもあるのかもしれません。「わたしたちのやさしいくるおしい会話体」だったり、「てのひらのなかのしずかな死」だったり。
青卵には夏の歌もいくつも収められていますが、そういう歌を読むと死にそうな夏も悪くないなと思います。東さんの歌に限らずですが、短歌を読むと日常の見方に少し角度がつくような感じがあって、そこが短歌の魅力の一つかもしれません。皆さんも次の旅のお伴に歌集を持って行ってはいかがでしょうか。長々とお付き合いありがとうございました。

冒頭の写真は飛行機の離陸を一時間遅らせた綺麗な積乱雲です。

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