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4月読んだ本


だんだん本当に読んだ本が少なくなってしまって、このコーナーは果たして続けられるのか不安になってきた感じですが、、、
先月はなんと2冊しか読めず、、、、
もう少し読書時間、増やしたいなぁ。

1冊目はこちら
『エンジェルフライト』佐々涼子 集英社


先月の読書会で読んだ佐々涼子さんの『夜明けを待つ』から、佐々さんの他の著作も読みたくなり、まずこちらを手に取りました。
国際霊柩送還という仕事があるのは、なんとなく知ってはいましたが、具体的にどんなことをするものなのかは全く知らず、海外で亡くなったかたを日本へ、また日本で亡くなった外国人を国に返すというのが主な仕事ですが、そこにこんなにさまざまなトラブルや苦労があることをこの本を読んで初めて知りました。
まず海外で亡くなる場合、それは不慮の死であることが多く、遺族にとって受け入れがたいものであることが多いこと、それをどう伝え、その悲しみや、怒りや、恐れと寄り添っていくことも大切なひとつの仕事になるそうです。非常に難しい仕事だと思います。取り乱して怒りをぶつけてくる人も多いようで、そこを丁寧に話を聞いたり説明したりすることはとても重要なんだそうです。
それから遺体がどういう状態で帰ってくるかはその国の処理の仕方がまったく違うので、あけてみるまでわからないということ。腐乱していた、虫がわいていたなんてことも。でもその遺体がどんな状態であっても、生前のその人に近い表情に戻して遺族にお返しすることに全力をかけるということ。
その辺も本当にまったく知らない世界でした。というかこの本まるまる本当にまったく知らない世界だったといってもいいくらいで、どのページをとっても自分の中に知っていることがあまりなく、そのぶんぐいぐいと読んでしまいました。また佐々さんの文章は淀みなく、必要な部分だけを丁寧にしっかりと伝えてくれるので非常に読みやすくて感情が入って行きやすかったのもよかった。これだけ、誰かのためにつくす仕事でも、わたしたちは遺族にとっては忘れられるべき存在ときっぱりいう社長の姿が印象的でした。なぜなのかはぜひ実際に読んでみてほしいなと思います。


2冊目は『ここはすべての夜明けまえ』間宮改衣 早川書房


こちらはハヤカワのSFマガジンのコンテストでグランプリを取り、書籍化された作品。強烈なデビュー作です。
読み始めるとその文体の異様さとほとんどひらがなで書かれた文字に、まずは『アルジャーノンに花束を』を思い出すでしょう。ただ読んでいるうちにもっとカズオ・イシグロの世界を彷彿とさせるAIが感情を置き去りにして書いた文章のような感覚を覚えます。というのも主人公は体をサイボーグ化されて永遠に若いまま生き続けることになった女の子だから。ときは2123年。彼女は父親にきっとこれから先長い時間ひまになるから家族史を書きなさいと言われ、本当はしゃべる方が好きだけどその相手もいなくなったので書くことにしたといいながら、その文章を書いています。その家族史はたんたんと無邪気に書かれるものの波乱に満ちていてとても幸せだったとはいえない。そしてひとりになった彼女はどこか何かが圧倒的に欠落したまま、思考し、行動し、新しいコニュニティに飛び込んだりします。いや、今までにない作風で十分面白いんだけど、この長さ(56ページ)だとこの作品の真髄が見えてこないような感じがして、もっと読みたかった!!というのが正直な感想です。でもこの独特な感情の欠落した文章とひらがなばかりの文体には本当に引き込まれましたし、書いていくのが家族史でそれも決して愛のある一般的な家族ではなく、かなりアイデンティティを削られるような家族との人生だったことがうかがえて、人間の真髄……というところがこの文体の中で浮き上がってくるので、そこも非常に新しく感じました。ぜひ次も読んでみたい作家だなと思います。

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