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『全自慰文掲載 又は、個人情報の向こう側 又は、故意ではなく本当に失敗し、この世の全ての人間から失望されるために作られた唯一の小説』その11

              Ⅰ-3-1
 
三回目の、体外離脱。
「血圧が急激に下がってきています」
と先生。
「はじめ、しっかり!」
と自分の耳元で、母が、必死の形相で、叫んでいる。
次いで、普段、ろくすっぽ会話を交わさない父に向かって、母が、「――あなたも、言ってやって下さい。耳は最後まで生きてる、って言いますし、むしろ、嫌な相手から声かけされた方が、はじめも、死ねない、って思うでしょうから」
――分かってんねぇ、さすが、母。
それを受けて、
「はじめ、信者(「死んじゃ」の誤変換)ダメだぞ!」
と、耳元で、父のしゃがれた、気持ち悪いトーンの、大声が。
何も声かけはしないが、その背後で、姉夫婦の姿も。――まぁ、自分の死に立ち会うことで、良くも悪くも、ふんぎり、つけたいだろうからなぁ。後腐れ、残したくねぇだろうから、そりゃ、居座るか。
……本当は、梨(「無し」の誤変換)なんだけどね。
………ほんとはさ、あっちゃいけないんだよ、こんな、第三章みたいな、構築性なんて。
本当は、無しなんだけどね、この、体外離脱のシーンに戻る、っていう、展開の整合性なんて。
普通は、死んじゃってたりさ、もしくは、もうこの時点で目が覚めてる、みたいな方がリアルだし、そういう、創作にもならない、物語としても中途半端、っていう罰を受けるべきだからね、本当は。
実際、前回、隣に寝てた交通事故の女の子も、立ち会ってる看護婦さんも、今回、別に何も、動き、なし。
この話に、なんら、関係なし。
……いや、当たり前なんだけどね、それが。
そんな、小説の駒みたいに、動くわけないから、実際の人間が。
 
              Ⅰ-3-2
 
三途の川のシーンも、もう、三途の川で、ゴミ拾いをしているシーンから始まっている。
川底? の冷たさ? を少しだけ感じながらも、橋の上に座っていらっしゃる、黒縁メガネにスーツ姿の、三途の川コンプライアンス委員会の、お二人、「ウメハラ」さんと「あのちゃん」さんに向かって、へへへ、とお追従笑いをしながら、三途の川? の川上、というか、右の方から、流れてくるごみ袋を、両手で受け止めては、抱えているだけ。
もう、渡れない、って分かってる感じ。
なんだろう、――そういう意味では、というか、そういう意味じゃないかもしれないが、やっぱり、気持ち的には、解放感? というのか、清々しさ? というのか、恍惚感? というのか、とにかく、心に苦しみはないんだよなぁ、終始、この臨死体験っていうのは。
自室。
永遠の日曜日。
クーラー、つけっぱなし。
部屋の中央に、寝ている自分、その上に、ゴミ袋が乗っかっており、その上に、浮浪者が乗っており、その周りには、黄色い大麻草に囲まれている。
なぜかしら、床下浸水の水位が、徐々に、徐々に、上がってきている。
喫煙所の2人が、やってきた。
『次の駅は、――「皆の空き家」、「皆の空き家」です。空き家を不法に選挙(「占拠」の誤変換)する方を、巣コッター(「スコッター」の誤変換)と呼びます。「恥ずかしいゴミ」をお持ちの方、「エントロピーとしてのストレス」をお持ちの方は、お降り下さい』
前回、喫煙所に来た二人が、また、エレベーターという態で、この自室に降りてきた。
「――なんか、この部屋のクーラー、やけに寒すぎねぇか」
「そうですね」
「止めらねぇのかな、エアコン」
「出来なくはないとは思いますど、この部屋、リモコン沢山ありすぎて、どれがどれだか、分かんないですもんね」
そう言って、後輩と思しきBが、袋十(「中」の誤字)の中から一台のリモコンを作為的に取り出し、どうせつかないだろう、ぐらいのテンションで、エアコンに向かって、温度を下げるボタンを押してみたら、――なんと、もっとクーラー(「エアコン」か、「クーラー」か、どっちか分からない馬鹿さ)の温度が、下がってしまった。
本来、20度だった部屋の気温が、マイナス10度まで、なぜか、下がってしまった。
「おいおい、より、冷たくなってねぇか?」とA。
「すみません。電池も入ってない、ガラクタだと思っていたので。まさか、こうなるとは」とB。
あまりにクーラーが効きすぎているからか、二人とも、うたたねを始めやがった。もしや、と思ったら、案の定、「雪山のコント」が始まりやがった。
――そりゃ、分かってる。だってほら、……これ、自分の夢だから。
自分の経験から見る、夢だから。
自殺未遂した日の、ちょっと前、詳しくは覚えてないけど、東京03の雪山のコント、YouTubeで見てたからなぁ。
「おい、おい! ――絶対、寝るなよ? 寝たら、終わりだからな」とA。
「分かってます」とB。「眠らないように、喋り続けましょう、先輩。でも、あれですね、実際、俺たち、プロゲーマーの他にも、ゲーム実況とか、ゲーム紹介とか、ストリーマーとして、もう4年ですけど、なかなか、これ、っていうコンテンツ、以外(「意外」の誤変換)と、伸びなかったりしますよねぇ」
Bの喋る声が、イケボすぎて、Aは眠くなる。
Aは、ウトウトし出す。
「寝たら死ぬでしょ!!」と大声で知った(「叱咤」の誤変換)されながら、先輩らしきAは、後輩らしきBに、ぼっこぼこに、殴られる。
――やっぱ、じゃん。
やっぱ、「雪山コント」じゃん。
「す、すまん」とA。
「しっかりしてくださいよ、先輩。寝たら、終わりですからね」とB。
Aはしばらく、目をぱちくりさせながら、
「――そんな、殴らないと、目、覚めなさそうだった、俺?」
とBに、問う。
Bは、ええ、と頷き、
「危険でしたよ」
と、真面目な顔で言う。
その延長で、Bが、また、その自慢のイケボで、語り出す。
「眠る、といえばね、先輩、僕、ほんと、ここんとこ、ストレスで不眠症なんですよ。もっと、もっとコラボ動画出せ、っていう視聴者が、結構いて、いや、凄く有難いんですけどね、そうじゃないですよねぇ。やっぱ、人柄がどう、とかっていうよりは、プレイで評価してもらいたいって思うじゃないですか。うーん、そこらへん、わかってくれないっていうか――」
再び、そのイケボのBの声に、A、ウトウト。
「寝たら死ぬ、って言ってるでしょ!!」
そう言って、Bは、Aをまた、ぼっこぼっこに殴る。
「ご、ごめん! また、寝そうになってたか、俺」とA。
「はい! 危険でしたよ!」とB。
――はい、そうです。
皆さんの想像通り、Bが、殴り疲れてきたせいで、逆に、Bが、ウトウトし出します。
これ幸い、とばかりにAは、にやにやしながら、
「おい、B! 絶対に眠るなよ! おい、ウトウトすんな、目、覚ませ!」
と、正論を振りかざしているが、これを機に、後輩のBを殴る気満々なのが、分かる。
Aが、ウトウトしたBを、思いっきり殴ろうとした時、――例の大麻畑の男が、
「さぁ、いい感じに仕上がってるかなぁ、俺の大麻草ドリングは」
と言いながら、上機嫌そうに、がちゃっと、この部屋に入ってきた。
その男の登場で、Aは、Bを殴るのに、精子(「制止」の誤変換)がかかってしまった。
そんなことをよそに、大麻男は、「次回の楽しみ」として取っておいた、部屋の奥のクローゼットの中の超小型冷蔵庫に保存しておいた、例の大麻草ドリンクを取り出そうとした。
開けてみたら、例の大麻草ドリングは、エアコンのせいか、凍りすぎて、カチコチになっている。
とても、飲めた代物ではない。
大麻男はふつふつと怒りだし、
「おい、君たちか。俺の、とっておきの、大麻ドリンクを、こんな風にしたのは――」
と、AとBに向かって、単価(「啖呵」の誤字)を切り出す。
「は? 知らねぇよ。俺は、コイツを殴りたいだけだから。邪魔しないでくれ!」とA。
そんな争いをしていると、Bの目が覚めた。
「あ、あれ? どういうことですか?」とB。
「うるせぇ! お前、俺を罠にハメて、イケボで、俺の眠気を誘った隙に、俺をボコボコに殴って、すっきりしよう、としてたよな? 許さねぇ、絶対、一発は殴らせてもらう!」とA。
「そんなこと、どうでもいいんだよ‼」大麻男は、カチコチになった、大麻草ドリンクを、床の浸水した水の床に(さまぁ~ずの三村さんの『キノコの話』という漫才中の「山の枝に!」的な文法的ミス)、投げ捨てた。「おい、オナニー野郎。おまえが、この部屋のクーラー、イジりやがったのか?」
とガチギレ状態で、Aに詰め寄る、大麻草男。
「違ぇよ‼ あんた、邪魔すんな‼ 俺は、こいつを、殴ろうとしている最中なんだよ‼」とA。
「それこそ、そんなこと、俺にとっては、どうでもいいんだよ‼」と大麻男。「俺はな、お前ら二人は知らねぇかもしれないが、この部屋自体を、作り出した張本人なんだ。んで、今日も色々仕事があって、この、一杯の、大麻草ドリンクを飲むために、生きてきたんだよ‼ それを、お前たちのせいで――」
「お前だって、オナニー野郎じゃねぇか‼」とA。「もう、いいや。こいつじゃなくて、お前も、いいわ。とりあえず、殴らせろ。そうじゃないと、この後、プロゲーマーとしての仕事に、支障をきたす!」
「プロゲーマー⁉ へぇ。おまえら、二人とも、ただの、社会不適合者の、食えている引きこもりの不労所得野郎共か」と大麻男。「一つ、言っておくぞ。まず、創作物を作っている奴が、一番、偉いからな?」
……あーあ、一番言っちゃいけないこと、言いやがったよ。
……現実だったら、『まぁ勿論、視聴者がいて、創作物は成り立つわけだから、一概には言えないんだけどね』とか、『勿論、批評家の人の指摘があるからこそ、それが次の作品の改善点に繋がるわけだから、一概には言えないんだけどね』とか、そういう、バランスを取るような発言、絶対、するよ? そりゃ。
……でもまぁ、これ、夢だからねぇ。実際自分が本当に思っている本音しか、出ない場だもんなぁ。
「プロゲーマーに限らず、何かの創作物に対して、『〇〇の感想をぶちまける!』系や『〇〇を語る!』系の動画出してるヤツ、全員、創作している芸術家にモノ言えるレベルの人間じゃないからな? 1から創作してない時点で、圧倒的、格下だから。事実、そうだから。それと、YouTubeの動画は、創作物には入らないから。情報を整理して、まとめて、紹介することは、創作じゃないから。どんな理屈つけようと、創作ではないから。――いっちょまえに、広告、つけんな! 後な、プロゲーマーに限らず、youtuberだとか、ストリーマーだとか、は、本当の意味で、社会的に成長しない、ただの食えてる引きこもりだからな⁉ 一生広告収入得て楽に暮らしたい、っていう姿勢は、一生オナニーして暮らせればいいなぁ、って言ってんのと、同じだからな⁉ 恥ずかしいオナニー野郎共だね、まったく! ――ああ、すっきりした!」
そう、自分の感情を、AとBにぶつけることによって、その大麻男は、すっきり、してしまった。
すっかり賢者タイムになった大麻男は、
「……っていうことで、殴っちゃダメだ、と思うよ、君」と、Aに諭す。
「は?」とA。
「俺はもう、うん、すっきり、したから。とにかく、人を殴っちゃダメ。それは、やり過ぎ」と大麻男。
「はぁ⁉ なに、勝手なことを言ってるんだよ⁉ 俺は、まだ、こいつを、殴ってねぇんだよ!」とA。
「…そうです。その人の言う通りです」と言い出すB。「僕なんか、殴ったら、所属会社、クビになりますよ⁉」
「なに、調子いいこと、一点だ(「言ってんだ」の誤変換)、お前‼」と、激高寸前のA。
ドンドンドン!
『近所の方から通報があったので、我々、警察が参りました。それだけではありません。近隣住民、そして、市政全体として、政府と競技(「協議」の誤字)した結果、この部屋を、「処理水」の貯水タンクとして利用できるとの総合的判断となりました』
近所の者も草葉の陰から、
『仕方なかったのよ! 目次さんが、話を、聞かないから!』
「うるせぇんだよ! 黙ってろ!」と、Aがその近所の者に叫ぶ。「近所の者だから、なんなんだよ⁉ なーんにもすることがない日々の鬱憤を、クレームに変えたたりして、ヒマ、潰しているだけだろ⁉ おめーたちも、オナニーしてるだけなんだよ⁉ とっとと、sね(「死ね」の誤変換ミス)‼」
そんな暴言を履いている(「吐いている」の誤字)うちに、一階の階段から、海上自衛隊らしき、防護服を着た連中が、ホース状のモノを持ち、数人で、この二階の自室に駆け込んできた。
『放出、開始します!』
当初から穴が幾多も開きまくっている部屋の壁の穴を通じて、「処理水」とやらを、ホース状のなにやらを使って、部屋中に、放出しだした。
すると、――色のついた小麦粉をぶん投げたように、部屋のどこらへんが、というより、部屋の至る所に、これまでは自分にしか見えていなかったと思しき、自分が思考している文字そのものや言葉そのものが、おそらく、他の人にも見える形で、くっきりと浮かび上がってきた。
それを、AもBも大麻男も、目にした。
「酷いな。――ここの家主は、こんなこと、考えていたんですねぇ」と大麻男。「これはもう、元の、この部屋の持ち主のせい、そう思いませんか?」
「そうですね。これは、酷過ぎますね、ちょっと」とB。
「……」さすがに、冷静になるA。
「片付けてもらいましょうよ、この際。自衛隊の方々に」と提案し出す大麻男。「どうです? 大体、この男の金玉が、この部屋の想像力だ、とすると、この男の金玉を潰してやる方がいいでしょ? ほら、文字たちの中に、『ゴミ箱そのものになることが、今の俺に出来る罪滅ぼしことだから。』って、見えますでしょ? でも、この家主に与えるべき本当の罰は、『そもそも自主的な罪滅ぼしの権利を剥奪する』ってことじゃなか、と思うんですよ」
――ああ、核心をつかれた。
……そうだよなぁ。
……自分の思う通りの罪滅ぼし程、自分勝手なことって、ねーもん、実際。
「俺以前から、この家主の男の金玉に、電源、刺して充電してましたけど、何も問題ありませんでしたから、全然、軽い気持ちでいけますよ? この金玉、潰せば、Aさんも、すっきり、すると思いますよ? いわば、この男の金玉の卒業式ですよ。断髪式みたいに、一人一回づつ、ここにある包丁で刺していきましょうよ」と大麻男。
「――なるほどね」とA。「ま、それで、俺が、すっきり、出来るんだったら、なんでもいいけどな!」
合意したようである。
そうして、代わる代わる、A、大麻男、Bの順で、自分の金玉に、どっから出てきたのか、包丁が刺されていく。
痛ぇ!!
すっげえ、痛ぇ!!
……でも、まぁ、しょうがないよなぁ。
………色々、しょうもねぇんだからね、うふふ。

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