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『全自慰文掲載 又は、個人情報の向こう側 又は、故意ではなく本当に失敗し、この世の全ての人間から失望されるために作られた唯一の小説』その3

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自分の意識、というか、自分の視点、というのか、それは、部屋の中央の布団で寝ている自分自身の体に宿った。
微動だに、できない。
さっきの三途の川のキャストは、もういない。
これはもう、臨死体験じゃなく、夢の世界だな、と気づく。
永遠の日曜日、といっていいぐらい、自分の部屋には、まばゆい日差しが差し込んでいる。それなのに、クーラーが、つけっぱなし。
――頼む、誰か、止めてくれ。
もったいないから、電気代が、ほんとに。
包丁で喉を刺した時、もし仮に、それが失敗しても、凍死できるように、クーラーをキンキンに冷やした状態にしてたから、付けっぱなしだったんだって。
そう思っていると、がちゃ、っと部屋に入ってくる人が。
……浮浪者のおじさんだ。
真夏? の、この季節、浮浪者のおじさんにとっては、クーラーがガンガン利いた自分の部屋は、避難場所として、最適だったのか。
この尾辺や(「汚部屋」の誤変換)には、自分の寝床に活用できるゴミが沢山あるし、食いかけのポテチとか栄養ドリンクとか、まぁ、食いもんもあるしな。
浮浪者のおじさんは、無言のまま、おもむろに、自分が持ってきたごみ袋を複数、寝ている自分の身体の上に置いた。
それから、部屋にちらばっている、エロ本や写真集を、一つの袋に入れ出し、それを寝袋と枕代わりにして、寝ている自分の体の上で寝だした。
『二階の自室に起こし(「お越し」の誤変換)のお客様。人垣津波警報です。その部屋にいる人は、人垣津波に巻き込まれる恐れがあります。一刻も早く、命を守る坑道(「行動」の誤変換)をしてください』
急に、そんな女性の声のアナウンスが。
……なんということだ。
……これではまるで、自分は、これまでの創作において、一つとして独創性がなく、実は、夢からしかインスピレーションを得られてこなかったのです、と暴露しているようなもんじゃないか。
『迷子のご案内を、申し上げます。プレイリスト「エロasmr」、①[RJ325879] 【KU100使用】ASMRオナサポふたなりセックス!チンポ脳催眠風紀委員パコパコどびゅどびゅパイズリ中出し種付けしますぅっ!パックB - Hentai ASMR (1)、②[RJ281210] Kozue One 翔太 & Real Masturbation Recording Set - Hentai ASMR、③[RJ310962] 女に勝てない男たち〜男対抗戦前夜の色仕掛け編~ - Hentai ASMR、④3.パイズリで精液枯渇処置、⑤精天使☆イクミさんの包茎オナニーおてつだい。あなたのおチ○ポ…看護しちゃいます♪、⑥02.SSTメスガキVer.①5年生ボディじっくり見抜き、⑦01.真夏日の汗だく だらハメ夏休みH、⑧おまけ パラレル「意地悪な女医さん」オナ禁妨害嫌がらせ編、⑨Tr3 坊ちゃまの大好きな、おっぱい種付けのお時間です。⑩02_爆乳逆レイプおむつ編_off、⑪、03_にゅっとり抱っこ紐赤ちゃん編_offの方~』
やめろ、やめろ、やめろ!!
羅列すんな‼
自分の、恥ずかしい、凡俗極まる、エロ方面の、個人情報を言わないでくれ、逐一‼
……ん?
もしかして、……そういうことか?
お前の、一番知られたくない、エロ方面の、個人情報を皆に暴露されることによって、自殺未遂と、姉夫婦の間に出来た子供を殺した罪と罰を償え、ってことか?
――なるほどな。
だとしたら、計算はあうよ。
罪と罰の計算が合う。
いや、合わないけどね、ほんとは。全然、別問題だけど。
また、ドアが開き、人が入ってきた。
今度は、若者の男だ。
その男もやっぱ、両手に大量のごみ袋を、持っている。
その中身は、ザーメンが沁みついたティッシュの塊と、多くの使えなくなったリモコンたち。それらが入った、両手に持っていた袋たちを、どさっと、浮浪者の周りに、無造作に捨てやがる。
それから、一仕事終わった、という感じで、ため息をつき、スマホで、誰かに電話をかけ出した。
「――あ、もしもし、『恥ずかしいゴミ』回収業者です。はい、捨て終わりました。思ったよりも、良い空き家、発見しましたよ。『恥ずかしいゴミ』は、大抵、ここに捨てられると思います。はい。ただ、一つ問題がありまして。匂いがね、酷いんですよ、はい。そこでね、僕、この空き家を大麻畑にしよう、と思っているんです。毒消しにもなるし、――そうです、副業にもなりますし。ええ、勿論、分配させて頂きますよ。はい、とりあえず、ご連絡まで。それじゃ」
誰かとそんな会話をした後、
「お、ここ、コンセントあんじゃん。こっちのスマホ、充電しておこう。朝になったら、取りにくりゃいいしな」
とか言って、何がどう見えているのか、――自分の金玉の片方に、スマホに繋がった充電コードを、突き刺した。
痛ぇ!!
そりゃそうさ、夢の世界の方が痛みや恐怖って、リアルだからね‼
いや、実際に、刺されたことねぇよ? 金玉に充電コードは!
ドンドンドン!!
今度は、なんだよ⁉ うるせーな!
この夢の自室において、一階という空間が存在するかどうかも分からないのに、玄関から、ノックの音が聞こえてくる。
「すみません! お隣の、目次さんですよね? 外の室外機から、液体が漏れ出ていて、近所中、水浸しになってるんですよ! 水位がどんどん上がっていってるんです、ここらへん一帯の!
聞こえてます⁉
それに加えて、――あなたのお家、洗濯物、干しっぱなしだから、その液体で濡れちゃいそうだから、見てられないんですよ‼
聞こえてます⁉」
――ああ、なるほど。
喉元を刺して、大量出血して、意識不明になってから、病院に搬送されて、輸血を施された、一連の自殺未遂の体の記憶が、もう既にこうして夢になっているわけか。
……馬鹿みてぇ。

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