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トカゲ少年記 参

小学6年生の前半まで
僕は駅前のアパートに住んでいた。
1階がプラモや模型、玩具を売っている
お店で2階から上が住居になっていた。
1階から階段を上りに2階へ行くと
左右に2部屋ずつ並んでいる。
僕は階段を背にして右の2部屋の内、
202号室で暮らしていた。
隣に大きなビルが建っていたこともあり、
割と日陰でいつも部屋の中が少し暗かった。
隣の201号室には僕が引っ越してきてからの、
2〜3年は学生さんが住んでいたが、
ある時引っ越して空き家になっていた。
ドアには錠前がかけてあり、僕がここを引っ越すまで誰も入居することはなかった。

そのアパートでは不思議な体験をよくしていた。
主に僕の住んでいた202号室での出来事である。
親が出かけていて、一人留守番をしている時のこと、夕方の19時〜20時の間だと記憶している。
その時間になると決まって隣の201号室から
物音が聞こえ始めるのだった。
もちろん上記にあるように、となりは既に空き家で入居者はおろか、管理人などの出入りもない。
それなのに、決まって親が留守で
僕が一人留守番をしている日のこの時間帯になると、
物音がし始める。
かすかな物音だけなら気にならないし、
古いアパートであるから、ネズミか虫でもいるんだろうで済むが、その物音はそれらとは全く違っていた。
確実に誰かがそこで何かをしている、
そんな音だった。

最初こそ足音などで終わっていたが、
次第に音の種類が増えていった。

皿の割れる音、男か女かわからない唸り声、
向こうから壁を叩く音・・。

次第にエスカレートしていくそれらの音に
恐怖のあまり泣く日も幾度かあった。

そのことはそのアパートに住んでいる時から
親に話していた。
親もそういった現象を全く信じない方ではないので、
「おかしいねぇ、まぁこっちに何もせんのなら
 大丈夫やろ?気にしない気にしない。」
と笑っていた。
母親の言葉に僕は、
「母は強し!」
と子供ながらに思った。
その後も引っ越しするまで、それらの現象は
起こっていたが、割と気にせず過ごしていた。
「おぉ?今日はそんな音ですか♪」
「なんでそんなに唸っての?」
「歩き回ってるなぁ。」
といった感じで少し楽しんでいた。

噂ではとなりのビルが設計上、
あまり良くないらしかった。
ロの字型のビルだったのだ。
欠陥があるとかそういうことではなく、
この形自体が霊的なものが集まりやすい場所に
なるらしく、近所でも結構話題に出ていた。

そのビルの話で一番驚いたのが

何年か目に起きた・・飛び降りだった。

聞けば大人たちの間では周知の事実だった。
僕はその話を聞いてから、ビルを登って行っちゃダメと言われていた本当の意味を理解した。
きっと上まで行ったら何かあるからだ。
下は通り抜けられるようになっていて、
中を腕止まり上を見上げると、
遠くに四角い吹き抜けが見えていた。
たまにそこから誰か覗き込むんんじゃないかと
思っていたこともあった。
結局そのビルのことと、隣の201号室の現象が
直接的に関わっているかどうかは、
わからないままだった。
2011年、世の中が地デジ化で沸いていた頃
僕はそのアパートを引っ越した。
理由としては、
十数年前からの都市開発にそのアパートも
入っており、道を広げたり色々行うために、
そのアパートは取り壊しになるので立ち退きを
余儀なくされたのだった。

今はもうそのアパートはないが、
隣のロの字型のビルはまだそこにあるらしい。

今日はここまで✋!

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