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ポスト

昔住んでいた団地の
すぐ近くにポストが立っていた。
よく見る四角いやつではなく、
円柱型の昔ながらのポストだった。
立っている場所が道に面しておらず、
普段人かが使っている気配もなくて子供ながらに私は不思議に思っていた。
ある時、そのポストに一通の手紙を
入れてみたことがあった。
きっと当時の私は団地の傍で
使われていないポストに対して
少し可哀想だと思ったのだろう。
手紙を入れてから数日のうちに
家の郵便受けに差出人不明の手紙が届いた。
親に隠れて封筒を開けると
1枚の便箋に「使うな」の3文字が書かれていた。
最初はなんのことかもわからず、
誰かのイタズラかと持っていたが、
そこからまた数日して手紙が届いた。
今度は2枚の便箋にそれぞれ
「使うな」と「読んだら入れろ」
と書かれていた。
ここでようやく私はあのポストのことかと
気づいた。
誰かが私の手紙をあのポストからとって
読んだのだと思った。
私はその便箋の裏に
「あなたは誰ですか?」
と一言書いて封をするとあのポストに
手紙を入れた。
それからは特に返事はなかった。
それから月日は経ち私は高校生となっていた。
通学の関係で団地からは離れ、
学校近くのアパートに部屋を借りた。
一人暮らしも丁度落ち着いてきた頃。
放課後の掃除を終えて、ごみ捨て場に来た
私は校舎裏であるものを見つける。
それは古びた円柱状の赤いポストだった。
きっと昔学校で使っていたのかと
何気なく近づき様子を伺う。
するとポストの差込口から何かが落ちた。
拾って見ると古びた便箋だった。
開いてみるとそこには、
「出して出して出して出して出して出して出して
 出して出して出して出して出して出して出して
 出して出して出して出して出して出して出して」
と子供の書いたような字が並んでいた。
私は一気に怖くなって、その場を後にした。
その後、そのごみ捨て場でポストを見た人は
いないと言う。
教師や近所の人も見覚えはなく、
不法投棄かなんかだと言っていた。
いったいあのポストはなんだったのか
未だに答えは出ないままである。

最近、何通か差出人不明の封筒が届いた。
私はそれを開くことなく捨てるようにしている。

だって怖いじゃないですか、
あの便箋にそれの正体が書かれてたら。

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