見出し画像

[report]『石川九楊大全【古典篇】遠くまで行くんだ』(上野の森美術館)


開催情報

※ 前期は6月30日に終了。後期は7月28日まで。

『石川九楊大全 前期【古典篇】遠くまで行くんだ』
場所:上野の森美術館(東京都台東区)
開催日:2024.6.8.sat-30.sun
入館料:2000円(一般)

内容:書家・石川九楊きゅうようの書作品から厳選した300点余を、前期・後期ひと月ごとに全て掛け替える大規模連続展覧会。


『石川九楊大全 後期【状況篇】言葉は雨のように降りそそいだ』
開催日:2024.7.3.wed-28.sun
入館料:2000円(一般)

※ 展示室内撮影不可
※ コインロッカー無し

主な登場人物

  • 李賀(791-817)中国
    唐代の詩人。27歳で夭折。「鬼才」と呼ばれた。

  • 石川九楊きゅうよう(1945-)
    書家。

関連図書

  • 『図録 石川九楊大全』石川九楊 左右社
    ISBN : 9784865284171
    …作品の元のテキストも収録

  • 『石川九楊全作品集』石川九楊 思文閣出版(2024年夏発売予定)
    ISBN : 9784784220595

関連ページ

↓ TOKYO ART BEAT レビュー(文:Naomi)

↓ pen レビュー(文&写真:はろるど)

↓ ARTnews JAPAN 石川九楊インタビュー

↓ 展覧会開始直前、次の大河ドラマの題字が発表された。(揮毫きごうは石川九楊氏)

↓ ほぼ日の石川九楊氏関連ページ

章構成覚書

<第一室>天は暗黒。地は黄色。宇宙は広く茫漠である(千字文)

<第二室>長安に男児あり。二十はたちにして心すでに朽ちたり(李賀)
 贈陳商、将進酒

<第三室>たとえば人を千人殺してんや、しからば往生は一定すべし(親鸞)
 歎異抄たんにしょう

<第四室>世の末なれど、仮名のいなん今の世はいと際なくなりたる(源氏物語)

<第五室>そこはかとなく書きつくればあやしうこそものくるほしけれ(徒然草)
 徒然草、方丈記、伊勢物語、葉隠、盃千字文

感想

展示室内撮影禁止なので、美術館前の看板(前期)をご紹介。
正直に言うと、よく知らずポスター等を見た時は、ほつれた繊維だと思った。

石川九楊《源氏物語書巻五十五帖「若菜 上」》(前期の看板より)

反復する声を幾重にも微分する
筆画に重ね合わせる
横線を紙幅いっぱいまで引きのばした

展示室内キャプションより

つまり…この細い横線一本一本は一画。

石川九楊氏によると、書は彫刻と音楽との掛け合わせ、文学も同じ。書とは言葉の表現であり、ゆえに書は文学である。
筆は彫刻のノミ。墨の色は「黒」ではなく「影」。

書の始まりは石に彫っていたから彫刻、というのは分かりやすい。
音楽というのは…文字としての情報以外に、呼吸や力加減、ニュアンスが入るからだろうか。詩を歌うように、言葉を書く。
…自分が思っていた「書」というものが、二次元から三次元に(あるいはそれ以上に)急激に拡張されていくようで目が眩みそうになった。

第二室の李賀の詩の書は、大半が墨のにじみで、わずかに残る白い部分も今にも墨に侵食されそうだ。
墨が影なら、光も届かない深い淵、闇が広がっていくように思えた。

源氏物語シリーズは第四室に54帖+「雲隠」の全55点が展示されている。
一点一点違う書き方で書かれていて、何を表現しようとしたのか、それぞれ丁寧に解説がついている。

作品を文章で伝えるのは非常に難しいので、公式 X のポストを拝借。

左は《徒然草 No.22》。
「白い歎異抄たんにしょう」と「黒い歎異抄たんにしょう」が混在している…そうです…言われても、読めはしないけど…
「なんと書いてあるか」ではなく「どのように書かれたか」を見る…そうです…
右は《『ヨーロッパ』の戦争のさなかに》「なぜ戦争はなくならないのか」と問いかけた最新作。後期展示予定。

実はこの美術展はノーマークだった。
偶然、後期のポスターを見かけて目が釘付けになった。なんだこれは、と。
すでに前期が始まっていた。会期は約2ヶ月、前期後期総掛け替えで、実質一ヶ月もない。慌てて駆け込んだ。
7月3日からは後期【状況篇】が始まる。
「エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ」や現代の危機をテーマとした作品など、こちらも楽しみ。
7月28日までなので、観に行く方はお早めに!


不忍池に蓮が咲いていた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?