ウィーン・モダン展に行ってみた
先週末、東京に行く用事があったので、再びの国立新美術館。行ってきました。
今回は時間の関係もあり、回ったイベントは1つだけ。
こちら
です。
前回行ってみた「クリムト展」
に続いて、世紀末ウィーンに関する展覧会でした。
クリムト展は、グスタフ・クリムト
の生涯を、世紀末という時間軸、そしてウィーンという空間軸を通して描き出していました。
一方、ウィーンモダン展は、18世紀の啓蒙専制君主、マリア・テレジア
やその息子、ヨーゼフ2世
の時代から、19世紀末の「世紀末ウィーン」にどのようにつながっていくのか…という時代の流れを、美術、思想、音楽、建築など多面的な観点から追っています。
①啓蒙専制君主時代
マリア・テレジアとヨーゼフ2世の時代は、いわゆる「啓蒙主義」に基づいた改革(近代化)が行われました。
啓蒙主義とは?
カントによれば…
「それは人間が、自ら招いた未成年の状態から抜け出ることだ。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことが出来ないということである。人間が未成年の状態にあるのは、理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気も持てないからだ。だから人間は自らの責任において、未成年の状態にとどまっていることになる。啓蒙の標語とでもいうものがあるとすれば、それは「知る勇気をもて」だ。すなわち「自分の理性を使う勇気をもて」ということだ。」
…難しい(笑)
もう少しざっくりとした表現をすると、
「既成の概念に束縛されず、理性に従い、合理的に考えること」ですね。
もう少し具体的に言うと、
「中世にあった信仰等に囚われず、自然科学などを根拠にした論理的な思考を持とう」
ということです。
マリア・テレジアやヨーゼフ2世は、この思想に基づいて改革を行います。
18世紀後半といえば、フランス革命
で絶対的権力を誇ったフランス・ブルボン朝が崩壊。
この動きに危機感を持った東欧の君主たちは、自ら大胆な改革に打って出ます。
そういった改革派の君主たちを「啓蒙専制君主」といい、彼らの改革を「上からの改革」といいます。
日本の明治維新も、似たような性格を持つ出来事でした。
例えばヨーゼフ2世は、多様な宗教を公認、死刑や農奴制の廃止、病院や孤児院の建設など、多くのな改革を実行しました。
革命後動乱が続くフランスとは異なり、平和と自由な精神を謳歌するウィーンは、知識人や芸術家を惹きつけます。
こうして、ウィーンはヨーロッパ文化の中心地へと変貌を遂げていったのです。
②ビーダーマイヤーの時代
ビーダーマイヤーとは、ドイツの判事ルートヴィヒ・アイヒロットによって書かれた、1850年のドイツの風刺週刊誌『フリーゲンデ・ブレッター』 (Fliegende Blätter) の中に登場する、架空の小学校教員ゴットリープ・ビーダーマイヤーに由来する言葉です。
小説中のビーダーマイヤーは政治や国際情勢などには関心がないく、家庭の団欒や身の回りの食器や家具などに関心を向けました。
また、簡素で心地よいものを好んだ人物でした。
ナポレオン戦争
終結後、ヨーロッパは王政復古の道を歩み始めます。
理想に燃えて市民革命を実行した人々には、諦めと反発の念が渦巻きます。
そして、そんな社会情勢への揶揄として、人々の関心はビーダーマイヤーのような「私的な領域」「シンプルなもの」に向かっていきます。
それが、驚くほどシンプルで実用美を突き詰めたビーダーマイヤー時代を生み出しました。
そして、これが「モダニズム」の源流となったとも言えます。
③リンクシュトラーセの建設と世紀末ウィーン
「最後の皇帝」フランツ・ヨーゼフ1世
の治世下、ウィーンは大規模な都市改造に着手しました。
かつてオスマン帝国との戦いでウィーンを守った城壁を撤去、巨大な「リンク通り(リンクシュトラーセ)」を建設したのです。
※旧市街を囲む白い部分にリンクシュトラーセはつくられました
沿道には国会議事堂、劇場、博物館、大学などが建設され、クリムト率いるウィーン分離派の分離派会館もその並びに建設されました。
この通りはその後、ウィーンの大動脈として機能します。
また、城壁を取り払ったウィーン市街は急速に拡大、人口は50万人から220万人へと急増します。
1879年には、画家ハンス・マカルト演出による皇帝夫妻の銀婚式を記念する盛大な祝賀パレードが開催されるなど、この通りは世紀末ウィーンの文化の爛熟を象徴する場所となりました。
ちなみに、フランツ・ヨーゼフ1世の皇后は、美女の誉れ高いエリーザベト
ですね。
ちなみに展示会では、フランツ・ヨーゼフ1世とエリーザベトの若かりし頃の巨大な肖像画も見ることができます。
これらの歴史の流れを、展示物を通してリアルに感じることができるウィーン・モダン展。
どんな展示物があるかは言ってからのお楽しみ、ということで。
しかも、今回は何と、一部の展示物の写真撮影OKです!これは驚きました。
開催は8月5日(月)まで。
今週末、世紀末ウィーンの風に触れてみませんか?
すみません、最初の投稿で「新東京美術館」としていたのですが、「国立新美術館」の間違いです<m(__)m>
クリムト展と混ざった…。大変失礼しました💦
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