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どちらがクリーンエネルギー?

2022年12月14日付け、Forbesの記事で、イギリスのエネルギー政策に関するものがありました。

この記事で取り上げられている話が、スナク政権のエネルギー政策に関するもの。
・フラッキング(水圧破砕法)を用いた天然ガス採掘を禁止
・炭鉱(石炭採掘)の新規開発は許可

という政策に対して批判しています。

記事の論点は大きく2つ。
①イギリス国内でフラッキングによる天然ガス採掘を禁止する一方で、フラッキングを用いた採掘をしているアメリカからの輸入を増やしている
②「クリーンではない」石炭の採掘を再開しようとしている

それぞれの論点を地理的な観点も踏まえて見てみましょう。

フラッキングとは?

シェールガス、シェールオイルの採掘を行う際に、超高圧の水を注入して岩盤を破砕する「水圧破砕法」のこと。

ちなみにシェールオイルやシェールガスは、地価の深部、「頁岩」と呼ばれる岩石の層に含まれる石油や天然ガスのこと。
現在まで採掘の主流だったものは「在来型」と呼ばれるのに対し、存在は知られていたものの深部にあるため採掘が困難だった(コストが高すぎて商業化できない)ものを「非在来型」といいます。
近年、この「非在来型」の資源採掘が進みつつあるのです。

シェールオイルやシェールガスを採掘する場合、水に化学物質を添加して注入しています。
大量の化学薬品が添加された水を地下に送り込んでいるため、
・地下水の化学物質による汚染
・地域内での水不足
・岩盤に入った亀裂が断層に接触し、地震を誘発する可能性

などの副作用が懸念されています。

Wikipediaより

一方で、この技術の開発によりシェールガス、シェールオイルの採掘コストが大きく低下したのも事実。
「シェール革命」と呼ばれるほどの生産量の増加をみたアメリカ合衆国では、90%のシェールオイルの油井、シェールガスのガス井がこの方法を使って採掘を行っていると言われています。

①の論点について

イギリスは、ボリス・ジョンソン政権の時期に、ロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー価格が高騰したことなどもあり、フラッキングによる採掘を許可していました。
しかし、政権が代わってこの方針が撤回されたということになります。

しかし、エネルギー資源の確保は必須であることから、アメリカ合衆国からの天然ガス輸入が増加、その採掘にはフラッキングが用いられていることから、「二重基準」ではないかと批判されているのです。

②の論点について

ヨーロッパでは、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰していることもあり、石炭火力発電所の(一時的な)再開の動きがあります。

しかし本来はヨーロッパの先進国において「クリーンではない」石炭火力発電は目の敵にされており、日本も石炭火力発電の割合が比較的高いことから、事あるごとに批判の対象となってきました。

日本の場合はエネルギー回収率の高い石炭火力発電技術の開発を行っており、必ずしも環境負荷が高いとも言えないのですが…。

ただ、この記事を見る限り、ヨーロッパで石炭の利用が「エコではない」とされるのは、その採掘過程における健康上の影響なども要因ということになります。
それを言うなら、フラッキングにおける地下水汚染は…?という気もするのですが、この辺りは識者によって意見の分かれる所のようです。

アメリカのシェールガスの購入は日本もすでに行っており、その環境負荷に関する話とは無縁ではありません。

イギリスのこと、と対岸の火事のように見るのではなく、日本のエネルギー問題についても考える一つのきっかけにしたいものです。


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